質問主意書

第181回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二五号

内閣参質一八一第二五号
  平成二十四年十一月十六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員佐藤正久君提出日米安全保障協議委員会共同発表に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員佐藤正久君提出日米安全保障協議委員会共同発表に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、本年四月二十七日付けの日米安全保障協議委員会の共同発表(以下単に「共同発表」という。)において、日米両政府は、第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(平成二十一年条約第三号。以下「グアム移転協定」という。)に鑑みて採るべき更なる措置についても協議することで一致しており、日米両政府間で必要な検討を行っているところである。

二について

 共同発表において、在沖縄米海兵隊のグアムへの移転(以下「グアム移転」という。)に係る日本側負担の費用の見積額については、グアム移転協定第一条に規定された直接的な資金の提供となることを再確認し、日米両政府は、二国間で費用内訳を完成させることとしているが、その内訳については現時点では決まっていない。なお、在沖縄米海兵隊の日本国外への移転に要する費用については、グアムへの移転費用の一部のみを我が国が負担することとしている。

三について

 グアム移転協定に従い、我が国政府は、平成二十一年度に三億三千六百万米ドルの資金を、平成二十二年度に四億九千七百八十万米ドルの資金を、米国政府に対し、それぞれ提供しているところであり、これらの資金については、同国政府がグアム移転協定に従って使用することとなっているが、お尋ねについて、事業の種類ごとにお答えすると以下のとおりである。
 基地内の基盤整備事業については、平成二十一年度に、フィネガヤン地区におけるもの(第一段階)に一億二千四百八十万米ドルを提供しているが、契約は締結されていないものと承知しており、また、アンダーセン空軍基地の北部地区におけるものに二千七百万米ドル、アプラ地区におけるものに一億六千九百十万米ドルをそれぞれ提供し、これらの事業について契約が締結されたものと承知している。また、平成二十二年度にフィネガヤン地区におけるもの(第二段階)に三億九百万米ドルを提供しているが、契約は締結されていないものと承知している。
 建設事業については、平成二十二年度に、フィネガヤン地区における消防署の建設に二千五百十万米ドル、アプラ地区における港湾運用部隊の司令部庁舎の建設に二千四百八十万米ドル、同地区における診療所の建設に九千六百万米ドルをそれぞれ提供しているが、契約は締結されていないものと承知している。
 設計事業については、平成二十一年度にフィネガヤン地区における消防署及び単身の下士官用の隊舎並びにアプラ地区における港湾運用部隊の司令部庁舎及び診療所の設計に千五百十万米ドルを提供し、これらの事業について契約が締結されたが、フィネガヤン地区における消防署及び単身の下士官用の隊舎については事業執行が中断されているものと承知している。また、平成二十二年度に同地区における基地管理庁舎、海兵後方群の司令部庁舎、警察署、複合体育施設、下士官用の食堂及び単身の下士官用の隊舎の設計に四千二百九十万米ドルを提供しているが、契約は締結されていないものと承知している。
 米国政府は、グアム移転建設経費として、二千十会計年度予算にアンダーセン空軍基地の北部における駐機場及びユーティリティ整備事業(第一段階)、アプラ地区における埠頭改修事業(第一段階)及び軍用作業犬施設の移転事業並びにアクセス道路改修事業に約三億米ドルを計上し、二千十一会計年度予算に同地区における埠頭改修事業(第二段階)及びアクセス道路改修事業に約一億七百万米ドルを計上しているが、これらの事業のうち一部について契約が締結された旨米側から聞いている。
 また、グアム移転協定に従って我が国政府が米国政府に提供した資金の取扱いについては、グアム移転をめぐる進捗状況を注視しつつ、引き続き必要な検討を行っていく考えである。

四について

 グアム移転協定に従い我が国政府が平成二十三年度に計上した約百四十九億円及び平成二十四年度に計上した約七億円については、米国政府へ提供していないが、お尋ねについて、事業の種類ごとにお答えすると以下のとおりである。
 建設事業については、平成二十三年度に、フィネガヤン地区における基地本部庁舎に約六十二億円及び海兵後方群司令部庁舎に約五十二億円を計上している。
 設計事業については、平成二十三年度に同地区における第三海兵機動展開部隊司令部庁舎、第七通信大隊庁舎、将校用隊舎、第三情報大隊庁舎、診療所及び憲兵支援中隊・第三海兵機動展開部隊司令部群庁舎に約三十四億円を計上し、平成二十四年度に同地区における下士官用隊舎実施設計に約七億円を計上している。
 これらの資金の取扱いについては、グアム移転をめぐる進捗状況を注視しつつ、引き続き必要な検討を行っていく考えである。

五について

 米国において国防予算の削減に関し様々な議論があることは承知しているが、日米両政府は、共同発表を踏まえ、引き続き、在日米軍の抑止力を維持しつつ、早期に沖縄の負担軽減を実現するとの考えの下、在日米軍再編を進めていく方針に変わりはない。
 グアム移転に係る米国政府予算等の使用制限を解除するための条件については、同国の二千十二会計年度の国防に関する支出を授権する法第二千二百七条において、同国海兵隊司令官が推奨するグアムにおける兵力態勢を実現するための施設及び基盤の建設に関する事業計画(建設費用及びスケジュールの詳細な説明を含む。)を同国国防長官が同国議会に対して提出すること、普天間飛行場の移設に関する具体的な進展を同長官が同議会に対して示すこと等が規定されていると承知している。同法の関連規定を踏まえた二千十三会計年度の国防に関する支出を授権する法案については、同国議会において審議中であり、今後最終的な調整が行われるものと承知しており、政府としては、グアム移転に関する同国予算に係る動向を引き続き注視しつつ、グアム移転の着実な実施のため同国と緊密に協力していく考えである。

六について

 政府としては、共同発表において、グアム移転及び嘉手納飛行場以南の施設・区域の返還の双方を、普天間飛行場の移設の進展から切り離すことを決定したことは、嘉手納飛行場以南の施設・区域の早期の返還に資するものと考えており、一日も早い返還を実現し、沖縄の負担を早期に軽減していくよう努力していく考えである。
 お尋ねの「嘉手納以南の土地返還の進捗状況」については、普天間飛行場を除く五つの施設・区域(キャンプ瑞慶覧、牧港補給地区、キャンプ桑江、那覇港湾施設及び陸軍貯油施設第一桑江タンク・ファーム)について、共同発表で示された必要な手続の完了後に速やかに返還可能となる区域、沖縄において代替施設が提供され次第、返還可能となる区域及び米海兵隊の兵力が沖縄から日本国外の場所に移転することに伴い、返還可能となる区域の三つの区分に従い、共同発表により本年末までに作成することとされている沖縄に残る施設及び区域に関する統合計画において、移設に係る措置の順序等を具体的に示せるよう、日米両政府間で精力的に協議を行っているところである。

七及び八について

 政府としては、普天間飛行場については、固定化は避けなければならないと考えており、共同発表において、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設することが計画されている同飛行場の代替施設が、引き続き、これまでに特定された唯一の有効な解決策であるとの認識を再確認したところである。沖縄において様々な意見があることは承知しているが、こうした考え方を引き続き沖縄の皆様に誠実に説明し理解を求めていくとともに、在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減を図るべく全力で取り組む考えであり、現在、防衛省において普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書の補正のための作業を行っているところである。
 同飛行場の補修事業は、同飛行場の代替施設が完全に運用可能となるまでの安全な任務能力の保持、環境の保全等の目的のために行われるものであり、また、同飛行場への垂直離着陸機MV二二オスプレイの配備については、米国政府が米軍の運用上の必要性から、老朽化した航空機を新しい機種に換装するものであると承知している。
 また、お尋ねの「滑走路の維持及び補修や米軍施設の改修等」について、我が国政府は、平成二十三年度予算及び平成二十四年度予算並びに平成二十五年度予算の概算要求において経費を計上していない。

九について

 政府としては、「中期防衛力整備計画(平成二十三年度~平成二十七年度)」(平成二十二年十二月十七日閣議決定。以下「中期防」という。)に基づき、南西地域を含め、周辺海空域の安全確保や島嶼部に対する攻撃への対応など、自衛隊による防衛態勢の充実を図っているところである。
 中期防においては、その策定三年後に、その時点における国際情勢、技術的水準の動向、財政事情等内外諸情勢を勘案し、必要に応じ見直しを行うこととしており、政府として現時点で、中期防を見直すことは考えていない。