質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六六号

被後見人の親族への情報提供による成年後見制度の更なる利用促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月十六日

浜田 昌良   


       参議院議長 平田 健二 殿



   被後見人の親族への情報提供による成年後見制度の更なる利用促進に関する質問主意書

 成年後見制度における被後見人を日常的に援護してきた被後見人の親族の方から、成年後見制度の信頼性に関わるご意見を頂戴した。その趣旨は、後見人が被後見人の親族に対して十分な情報提供を行わないため、後見人に対する信頼感が損なわれ、意思疎通を十分に図ることが困難となる事態に陥り、家庭裁判所にも相談したが改善が見られない、というものである。現行制度において、成年後見人等は後見の事務などについて被後見人の親族に対する報告の義務を負っておらず、そのため、後見人による被後見人の財産管理について、被後見人の親族は不安や不信を抱かざるを得ないこともあるようである。成年後見制度の利用を促進するためには、不正行為の防止対策を講ずることはもとより、成年後見制度を利用しようとする被後見人の親族の信頼感の醸成が不可欠と考えられる。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 最高裁判所事務総局家庭局の実情調査(以下「最高裁調査」という。)によれば、平成十二年から平成二十三年までの法定後見開始の認容件数は二十一万八千九百四十五件であり、その内訳は、後見開始の審判の認容件数が十八万八千八百九十四件、保佐開始の審判の認容件数が二万千三十一件、補助開始の審判の認容件数が九千二十件となっている。
 厚生労働省のデータによれば、認知症高齢者や知的・精神障害者は国内に約六百八十三万人程度いると推定できる。成年後見制度は平成十二年四月より、介護保険制度導入と同時に開始されたが、法定後見開始の認容件数を見ると、成年後見制度の利用状況は未だに低調であると言わざるを得ない。成年後見制度の利用状況が低調である理由については、成年後見制度を利用しようとしている被後見人の親族が、後見人からの情報提供が十分でないことから、この制度への信頼感を十分持てないことも一因であると考えるが、野田内閣はどのような見解であるか示されたい。

二 最高裁調査によれば、平成二十二年六月から平成二十四年三月までの二十二か月間で報告された後見人等による不正事例件数は五百五十件であり、被害総額は被害額が特定できない十件を除く五百四十件の合計で約五十四億六千万円にも上っている。
 三井辨雄厚生労働大臣は平成二十四年十月十二日の閣議後の記者会見において、成年後見制度に係る不正事件の防止対策に関する質問を受け、「事務方ともよく連絡を取りながら、きちっと対応していきたいと思います。」と答えた。野田内閣として不正事件の防止対策について、現在の検討状況を示されたい。また、いつまでにどのような対策を講ずるのか明らかにされたい。

三 東京家裁後見問題研究会編著による「東京家裁後見センターにおける成年後見制度運用の状況と課題」においては、後見監督における今後の課題として、「高齢化社会の進行や成年後見制度の浸透に伴い、申立件数自体も増加することが見込まれ、そうすると、後見監督事件も必然的に増加することから、限られた労力で、いかに後見監督の実(後見等事務の適正の維持)を落とさずに、迅速に後見監督事務を処理できるか、その方策を考えることが火急の課題である。適切な後見人等の選任に始まり、後見人等の職務に対する理解・自覚の徹底、初回報告用財産目録・後見計画の作成・提出・点検の徹底、後見監督の合理化等に関する方策が検討されなければならない。」(同書五十二頁)と具体的に記述している。成年後見人等の監督体制をより適切に構築することが求められていると考えられるが、野田内閣はこのような指摘に対してどのような見解であるのか明らかにされたい。また、成年後見人等の監督体制について検討を行っているのであれば、その内容を明らかにされたい。

四 高齢化や核家族化の急激な進展に伴い、成年後見制度の果たすべき役割は一段と重要になっている。一方、成年後見人等の担い手の確保が課題となっており、特に親族間における関係の希薄化や親族自身の高齢化等により、親族において成年後見人等として選任すべき適任者が見当たらない事案も増加している。最高裁調査によれば、親族以外の後見人等選任率は平成十八年では十七・二パーセントであったが、平成二十三年では四十四・四パーセントとなり、平成十八年と比較すると二・五倍以上増加している。そのため、専門職後見人、市民後見人、法人後見人等の親族以外の第三者による成年後見人等について多面的に検討することが求められている。そこで、今後、成年後見制度をより多くの国民が安心して利用することができるよう、法令等による規定内容とは別に、後見人による被後見人の親族に対する情報提供の在り方などを含め成年後見人等の行動指針又はガイドラインを策定すべきであると考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。

  右質問する。