質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四〇号

福島県民の甲状腺がん発症への不安に対する国の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月十三日

岩城 光英   


       参議院議長 平田 健二 殿



   福島県民の甲状腺がん発症への不安に対する国の対応に関する質問主意書

 平成二十三年三月十一日の東日本大震災と同時に発生した原発事故から一年八か月が経過する今日、福島県民は、飛散した放射性物質により、子どもたちの将来の健康不安に脅かされている。
 本年六月二十一日、議員立法による「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下「原発事故子ども・被災者支援法」という。)が成立したところである。
 この法律に基づく具体的な施策については、現在、政府内で検討されていると承知しているが、放射性物質という「見えない不安」に包まれている県民が、少しでも早く平穏かつ安全な生活を取り戻せるよう、国は、地元の実情を迅速かつ的確に把握し、一日も早く具体的な施策を講ずる責務がある。
 他方、福島県の「県民健康管理調査」検討委員会で、公開される検討委員会の前に、その日の検討内容・方針について見解をすり合わせる秘密会の開催や検討委員会の進行につき、あらかじめ進行表が作成され予定調和的に進められていたことが報じられている。そのような行為は、常に「見えない不安」を抱く県民の信頼を裏切るものと言わざるを得ない。
 以下、福島県民の健康不安とその課題について質問する。

一 福島県の「県民健康管理調査」検討委員会には、専門家、県の関係者のほか、政府職員も委員・オブザーバーとして参加している。そのため検討委員会について昨今報じられている問題は、福島県だけの責任に止まらず国にも責任があると言わざるを得ない。そのような一種の情報操作は、福島県民の信頼を失墜させるだけでなく、国内外で問題となっている「風評被害」を拡大させ、問題をより深刻なものにしているのではないか。現在最も必要なことは、現状をありのまま公表し、甲状腺がんを始め、発症する可能性のある病気に対する県民の知識を高め、発症する可能性を抑えることはもちろん、早期発見、早期治療につなげていくことであり、検討委員会の役割もそこにあるのではないのか。県の事務とはいっても、それが適正に行われていなければ、国が助言・勧告するのは当然である。ましてや政府職員も検討委員会に参加している以上、検討委員会が本来の役割を果たし県民の信頼回復につながるよう福島県に積極的に働きかけるべきと考えるが、見解を示されたい。

二 原発事故子ども・被災者支援法第十三条は、放射線による健康への影響に関する調査、医療の提供等について、国が具体的な施策を講ずるべきことを規定している。本法成立後間もなく五か月を迎えるが、具体的な施策が展開される時期を明らかにするとともに、施策の具体的な検討内容を明らかにされたい。

三 福島県では現在、県民健康管理調査のうち「甲状腺検査」について、大震災発生時点で十八歳までの県民を対象に第一回目の検査を行った後、二十歳までは二年に一度、それ以降は五年ごとに継続して検査を実施するとしているが、この間隔に対し保護者は不安を抱いており、検査期間の短縮を求める声もある。一方、検査対象者が三十六万人と多数に上るにもかかわらず、本年八月末時点で第一回目の検査終了者は八万三千人に過ぎないのが現状である。保護者の不安解消を図るとともに、平成二十五年度中に対象者全員の第一回目の検査を終了させるという福島県の目標を実現するには、検査医療機関の拡大や専門家の養成を進めるなど、政府が率先して検査体制の充実を図るべきと考えるが、今後の対応について明らかにされたい。

四 現在、福島県で実施中の医療費無料化は十八歳までの県民が対象となっている。チェルノブイリ原発事故から数年経過して甲状腺がんが発症した事例が見られたが、今回も同様の傾向を示すとした場合、十八歳以降に甲状腺がんが発症することも十分に考えられる。しかしながら、現状では十八歳以上の者について、手術を含む医療費の自己負担が生じる可能性がぬぐえず、将来、甲状腺がんが発症した際に、県民は病気そのものに加えて医療費負担という二重の不安を抱え込むこととなる。被災者たる子どもが十八歳以降に甲状腺がんを始めとする病気にかかった場合の医療費負担について、国の責任において自己負担の免除措置が受けられるような制度を構築すべきと考えるが、見解を示されたい。

  右質問する。