質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三七号

低周波音による健康被害の防止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月十二日

加藤 修一   


       参議院議長 平田 健二 殿



   低周波音による健康被害の防止に関する質問主意書

 ヒートポンプ電気給湯器、業務用の冷蔵庫、電力供給システムなどから出る低周波音によって頭痛や不眠などの健康被害を訴える声が年々全国で広がっている。そのことは、消費者センターの相談件数にも明確に現れている。また、環境省が受けた低周波音に係る苦情件数は平成二十二年度には年間二百四十六件であり、平成二年度の約十倍、十年前の十二年度に比べても二倍以上に急増している。
 地方自治体の公害苦情相談窓口には、平成十九年度からの四年間に低周波音関連の苦情七百十四件が寄せられたが、都道府県の公害審査会の審査に付されたのは十五件、調停成立は二件にとどまっている。
 国民の苦しみの一方で、ある県の公害審査会では紙をゆらゆらと揺らしながら「これも低周波だが?」と訴えを揶揄するなど、被害の深刻さに寄り添うべき行政の対応は極めて緩慢と言わざるを得ない。環境省は、この問題を看過できないという視点から、各種の資料を発行しており、公害審査会は、より被害者の側に立った対応が期待されているものと認識し、被害の状況を真摯に聞くべきである。環境省の対策は、パンフレット「よくわかる低周波音」(平成十八年度)の発行や、自治体担当者向け苦情対応用の解説書「低周波音問題対応の手引書」(平成十六年度)、自治体担当者向けの対応事例集(平成二十年度)の作成などにより、国民を説得する方向に精力が注がれているように見受けられる。
 政府は、発生源対策の技術開発の推進や、被害防止のための規制強化など、被害者と同じ目線に立った本質的な改善に真摯に取り組むべきであり、生命・生活・生存を最大限に尊重する社会を目指し、かつ消費者を守る立場から、低周波音の健康被害問題の解決は喫緊の課題であると考え、以下質問する。

一 国の公害等調整委員会においては平成二十二年度以降、低周波音関連事件が二十一件係属した。このうち健康被害との因果関係の判断(原因裁定)や損害賠償責任の有無の判断(責任裁定)を求めた九件が棄却される結果となっている。準司法的な権限を有する公害等調整委員会の審査にあっては、「低周波音公害」の定義が求められるところだが、これまでの裁定において因果関係や損害賠償を問う基準となる明確な定義が示されたことがあったか明らかにされたい。示されたことがある場合、その定義を明らかにされたい。仮に定義が確定していない場合であっても、審査に当たって準拠している見解を示されたい。

二 平成元年度から同二十三年度までの都道府県公害審査会等における低周波音関連事件の受付件数及び終結件数を年度毎に明らかにされたい。また、右記二十三年間の終結事件について、調停が成立した件数、調停を打ち切った件数、申請を取り下げた件数、公害等調整委員会へ裁定を申請した件数を年度毎にそれぞれ明らかにされたい。また、調停が成立した事件のうち発生源対策を行うことで合意した件数、終結した全事件の一事件当たりの平均処理期間、打ち切りとなった事件の申請受付から終結までの間の審査会開催の平均回数についても明らかにされたい。

三 環境省の自治体担当者向け「低周波音問題対応の手引書」(平成十六年度)では、被害を訴えてきた人の「心身にかかる苦情」を評価する際に、「参照値」を用いるよう推奨している。「参照値」は、騒音の基準値でもなく製品の規制値でもなく、極めてあいまいな数値である。しかし、現状では、公害等調整委員会の裁定で、低周波音測定値が「参照値」を下回っているため、「苦情が低周波によるものである可能性は低い」などと棄却理由として利用されるなど、結果的に被害者切り捨てにつながっているのではないか。そもそも「参照値」なるものは、いかに綿密な実態調査等を踏まえた科学的普遍性等に基づいてつくられたものなのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 消費者庁の事故情報データバンクによれば、平成二十二年四月一日の運用開始から平成二十四年十月二十三日までの間に低周波音に関する苦情が四十件寄せられ、内訳では電気温水器二十一件、風力発電設備四件等となっている。電気温水器などによる健康被害は消費生活用製品安全法における重大製品事故に該当すると思われるが、政府の見解を明らかにされたい。該当しないとすれば、その理由は何か、明らかにされたい。

五 PL法(製造物責任法)等に基づく低周波音の健康被害に関する訴訟の、事件名、事件の概要(原告の主張)、提訴日、請求額、判決内容について、政府が把握しているところを明らかにされたい。

六 エコキュート(家庭用ヒートポンプ給湯器)などの出荷台数に正比例して低周波音被害の訴えが急増するという対応関係にあることは客観性が担保されている。そうであるならば、騒音規制法や自動車の排出ガス規制のように、生活環境での規制基準の設定や製品の出荷規制など被害防止のための抜本対策を実施し、被害が拡大しないようにすべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。