質問主意書

第181回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三一号

刑事裁判手続に係る日米地位協定及び日米合同委員会等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年十一月八日

佐藤 正久   


       参議院議長 平田 健二 殿



   刑事裁判手続に係る日米地位協定及び日米合同委員会等に関する質問主意書

 本年十月十六日、米海軍兵士二名が集団強姦致傷容疑で沖縄県警に逮捕される事件(以下「事件」という。)が発生した。これを受け、米軍による自主規制措置として夜間外出禁止令が発動されている中、十一月二日未明、嘉手納基地所属の米空軍兵士が民家に侵入し、就寝中の男子中学生に対して暴行するという事件が発生した。
 右の点を踏まえ、以下質問する。

一 野田総理大臣は、十一月二日に首相官邸にて開催された全国知事会議にて、日米地位協定の見直しについて「検討すべき課題だ」と述べたが、米軍兵士の犯罪に伴う刑事裁判手続について、日米地位協定や日米合同委員会合意の内容を見直す考えはあるか、政府の見解如何。

二 平成七年十月の日米合同委員会は、「合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う」と合意した。これは日米地位協定の改定ではなく、同協定の運用を一部改善するというものであり、また対象については、殺人あるいは強姦という凶悪な犯罪に限定したものである。さらに、同合意は十七年前に結ばれており、サイバー犯罪等、犯罪の多様化に対応していないとの指摘もある。米兵被疑者の起訴前の拘禁の移転について、その対象となる犯罪を見直すべきと考えるが、政府の見解如何。また、米兵被疑者が犯行後、日本国外に滞在中の場合の対処が不明確であると考える。これについて、速やかな拘禁の移転が可能となるよう、日米合同委員会で合意し、明文化すべきと考えるが、政府の見解如何。さらに、起訴前の拘禁の移転は「好意的な考慮(sympatheticconsideration)」に基づくと表現されているが、主権国家たる我が国の司法当局が行うのは至極当然であり、これは米軍が占領軍であるかのような印象を与え、我が国を見下す表現であると考える。この表現を早急に見直すべきと考えるが、政府の見解如何。

三 事件は、米国本土から出張中の米軍兵士らによる犯行であった。在日米軍兵士については、在日米軍司令官等から規律維持と綱紀粛正を求めている一方、出張中の米軍兵士の規律維持策については、外務省審議官が認めているとおり「盲点」と言える。これらの規律維持及び再発防止策の具体案について、政府の見解如何。

四 平成二十三年十二月十六日に改正された「公務」の範囲に係る日米合同委員会合意によれば、「その認められた宿舎又は住居から、直接、勤務の場所に至り、また、勤務の場所から、直接、その認められた宿舎又は住居に至る往復の行為を含むものと解釈される」とある。しかしながら、この合意の適用の対象は在日米軍兵士を想定しており、出張中の米軍兵士については当てはまらない部分もあるのではないかと考える。仮に、米国本土で勤務又は居住する米軍兵士が、公の会議や調整のため、日本に出張した際に、土日等を利用し休養する場合、休養のための沖縄滞在間も含む米本土出発から帰国までの全期間、米国の規定では「公務期間中」あるいは「任務期間中」となるのではないのか、日本政府の承知するところを明らかにされたい。また、日本以外に駐留している米軍兵士の出張者を対象とした「公務」あるいは「任務期間中」の定義について、日米合同委員会において議論し明確にすべきと考えるが、政府の見解如何。

五 事件を受け、在日米軍は夜間外出禁止令を出したとされるが、その全容について、政府の承知するところを明らかにされたい。また、例外規定(例えば、特定の兵士には夜間外出禁止令が適用されない旨の規定など)の有無及びその内容について、政府の把握しているところを明らかにされたい。米軍基地外に在住する米軍兵士やその家族は、この「夜間外出禁止」の対象となっているのか、政府の承知するところを明らかにされたい。もしこれらの事実関係が不明であれば、日米合同委員会を速やかに開催し、協議の上、合意内容を国民に周知すべきと考えるが、政府の見解如何。

六 米海兵隊所属MV22オスプレイ(以下「オスプレイ」という。)の運用課題や住民理解は、米軍兵士の犯罪防止や綱紀粛正とは別の課題であり、我が国や東アジアの安全保障のため、任務や訓練に励んでいる米軍兵士には敬意を表する。一方、夜間外出禁止令が出ている中、米軍兵士による犯罪が再発したことは、再発防止策が機能していない証左であり、米軍兵士に対する国民不信の増加につながりかねない。政府による単なる抗議や申入れだけでは、再発防止を図ることは難しいと考えざるを得ない中、いかなる再発防止策を求めるのか、政府の見解如何。さらに、米国がオスプレイ運用に関わる日米合意を守っていないという指摘がある。日本国民の間で米軍に対する不信感が高まることは、日米同盟の信頼低下にもつながりかねないと考える。オスプレイ運用や飛行に関する日米合意の遵守の状況及び遵守させるための方策について、政府の見解如何。

  右質問する。