第181回国会(臨時会)
質問第二七号 使用済核燃料とプルトニウムに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十四年十一月六日 福島 みずほ
参議院議長 平田 健二 殿 使用済核燃料とプルトニウムに関する質問主意書 政府は本年九月十四日に決定した「革新的エネルギー・環境戦略」(以下「新戦略」という。)において、二〇三〇年代の原発稼働ゼロを掲げる一方で、核燃料サイクル政策については「国際的責務を果たしつつ再処理事業に取り組む」としつつ、使用済核燃料の直接処分、中間貯蔵、最終処分場確保等について「結論を見出していく作業に直ちに着手する」としている。 使用済核燃料の再処理事業については、その安全性や経済性はもちろん、核不拡散と核セキュリティに関わる国際的な視点からも厳しい検証が必要である。再処理事業によって生み出されたプルトニウムは核兵器の原料ともなりうる危険な物質であり、その管理のあり方は国際的関心事であるためである。 政府は、一九九一年、原子力委員会核燃料リサイクル専門部会報告書「我が国における核燃料リサイクルについて」において、「必要な量以上のプルトニウムを持たないようにすることを原則とする」と謳って以来、一九九四年の原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画において、「計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち余剰のプルトニウムを持たないとの原則」を確認し、一九九七年には、「余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持している」ことを国際原子力機関(IAEA)に通知する形で国際的に宣言するなど、この方針を繰り返し表明している。 また、二〇〇三年八月五日の原子力委員会決定「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」において、「利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たない」という基本方針を定め、六ヶ所再処理工場でのプルトニウム分離に関し、「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとする。利用目的は、利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途を含むものとする」との方針に従い、事業者の策定したプルトニウム利用計画について原子力委員会が妥当性を判断するとしている。 ところが、一九九〇年代初頭に約二トンだった日本のプルトニウム在庫量は、一九九七年の国際宣言時には約二十四・一トン、二〇一一年末現在では約四十四・三トン(海外約三十五トン、国内約九・三トン)に達している(二〇一二年九月発表「我が国のプルトニウム管理状況」)。前記原子力委員会決定は、ヨーロッパにある日本のプルトニウムの利用計画は、MOX燃料製造段階まで示さなくてよいとしており、約三十五トンのプルトニウムについては利用目的の明確化を要求していない。 六ヶ所再処理工場で分離するプルトニウムについても、これまでの原子力委員会の判断では、将来、同工場に隣接して建設中のMOX工場が完成した段階でMOX燃料にして、いずれ原子炉で消費する予定との計画を表明すればよいことになっている。 しかし、今回の新戦略によって「原発稼働ゼロ」の目標が掲げられた以上、将来プルトニウムを利用するという前提は崩れた。さらに政府は、原子力委員会については廃止も含めた見直しを行っている。これまでは電気事業連合会が策定したプルトニウム利用計画について原子力委員会が妥当性を判断するという建前がとられてきたが、この役割を担ってきた原子力委員会が廃止となれば、日本が余剰プルトニウムを持たないという国際的責任を確保する主体がますます曖昧になる。 このような懸念を踏まえ、以下のとおり質問する。 一 核不拡散と核セキュリティに関わる国際的責任に鑑みて、「余剰プルトニウムを持たない」ということが日本政府の基本方針であることは、新戦略決定以後の今日においても変わりはないか。変わりがない場合は、これを法制化する意志はあるか。 二 ヨーロッパにある日本のプルトニウムの利用計画を信憑性のある形で具体的に明確化し、「計画遂行に必要な量」を追加する必要があることを示せるまでは、六ヶ所再処理工場でこれ以上のプルトニウムを分離しない方針を宣言することが、余剰プルトニウムは持たないと表明してきた日本の国際的責任ではないか。 三 原子力委員会について廃止を含めた見直しが進められている。同委員会が廃止された場合、日本が利用目的のないプルトニウムを持たないことを説明する責任及びそれを確保する責任を持つ主務官庁は、それぞれどこになるのか。 四 日本は現在国外に約三十五トン、国内に約九トンのプルトニウムを保有している。その多くは利用目的がなくなるものと見られる。これらのプルトニウムの安全な管理と処分についての方針を示すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、これらのプルトニウムの管理と処分を所管するのはどの府省か。 五 日本が利用目的のないプルトニウムを持たず、かつ、現在保有する安全なプルトニウムを安全に管理・処分することは核不拡散と核セキュリティに関わる重要課題である。原子力規制委員会及び原子力規制庁は、これらを所管するものと考えてよいか。その場合、同委員会及び同庁は、これらの問題について現在どのような行動計画を持っているのか明らかにされたい。 六 使用済核燃料の再処理、直接処分、中間貯蔵、最終処分場確保等に関する検討と作業を行う責任を持つ主務官庁はどこか。 七 現在政府が策定を進めているグリーン政策大綱は、使用済核燃料の再処理、直接処分、中間貯蔵、最終処分場確保等に関する政策課題や行程を対象範囲とする予定か。 八 原発稼働ゼロをめざす一方で、再処理事業を継続するのは、利用目的のないプルトニウムを増産していくことを意味し、本質的に矛盾するものである。原発稼働ゼロをめざす以上、再処理事業の中止が不可欠と考える。この点に関する政府の見解を明らかにされたい。 右質問する。 |