質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第二五七号

内閣参質一八〇第二五七号
  平成二十四年九月十四日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員福島みずほ君提出今般東京電力が許可された電気料金に係る査定方針に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出今般東京電力が許可された電気料金に係る査定方針に関する質問に対する答弁書

一の1から12までについて

 一般の需要に応ずる電気の供給に係る料金(以下「電気料金」という。)の原価のうち、事業報酬の額については、一般電気事業供給約款料金算定規則(平成十一年通商産業省令第百五号)第四条第二項に基づき、特定固定資産、建設中の資産、核燃料資産、特定投資、運転資本及び繰延償却資産(以下「事業資産」という。)の額の合計額に報酬率を乗じる、いわゆるレートベース方式により算定される。
 このうち、報酬率については、同条第四項において、自己資本報酬率及び他人資本報酬率を三十対七十で加重平均した率とすると規定されているが、ここでいう三十対七十の割合については、類似の公益事業の自己資本比率を参考として規定されており、また、自己資本報酬率については、全ての一般電気事業者を除く全産業の自己資本利益率の実績率(以下「自己資本利益率」という。)を上限とし、国債、地方債等公社債の利回りの実績率(以下「公社債利回り」という。)を下限として、自己資本利益率、公社債利回り及び市場全体の株価が一パーセント上昇したときの一般電気事業者の株価の平均上昇率を指すいわゆるベータ値を用いて算定される。
 このように、レートベース方式においては、事業報酬の額については、個別の一般電気事業者の利益水準にかかわらず、事業資産の額の合計額及び自己資本報酬率等により客観的に決まることから、一般電気事業者において、レートベース方式により決まる事業報酬の額の枠内で利息及び配当金の支払を行うこととなるため、支払利息の軽減等に努め、自己資本を増加させるインセンティブが働くものであり、レートベース方式は妥当であると考えている。なお、電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議が平成二十四年三月十五日に取りまとめた報告書においても、「積み上げ方式では各社ごとの資本構成の差異等によって原価水準に差が出たり、また電力会社の企業努力を促進する余地に乏しい等の欠点があった。このため、昭和三十五年に、独占事業である電気事業に規制の枠をはめながらも資金調達上に創意工夫の余地を与えることによって、経営に対する刺激を与える点に長所があるという理由から、現在のレートベース方式が採用された。」とされている。
 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が平成二十四年五月十一日に行った電気料金の値上げに係る認可申請(以下「今般の申請」という。)に係る査定(以下「今般の査定」という。)においては、「東京電力株式会社の供給約款変更認可申請に係る査定方針」(平成二十四年七月二十日物価問題に関する関係閣僚会議了承。以下「査定方針」という。)において、「レートベース方式に基づく現在の事業報酬制度が導入された(中略)趣旨から、東京電力の事業報酬についても、原子力損害賠償支援機構法に基づく資金援助等による東京電力独自の資金調達コストの変化を勘案するのではなく、各電力会社一律に適用される報酬率を算定すべき」としていることを踏まえ、原価の査定を行っている。
 また、今般の査定において、ベータ値については、平成二十三年三月十一日から平成二十四年五月十日までの間(以下「ベータ値採録期間」という。)における東証株価指数の日々の変動率及び沖縄電力株式会社を除く一般電気事業者九社の東京証券取引所における株価の日々の変動率に基づき、〇・八二と算定され、その上で、自己資本報酬率については、五・八九パーセントと算定されていることについて、確認している。ベータ値採録期間については、査定方針において、「電気事業を専門分野とする複数の金融アナリストにヒアリングを行ったところ、震災以降、電気事業の経営リスクは格段に高まったと考えられ・・・大震災以降の経営リスクを採用すべきとの声が大勢であった・・・点を踏まえ・・・また・・・震災前後で経営リスクに断絶があると考えられ、震災以前の期間を採る合理性はないと考えられることから、震災後可能な限り長期の期間をとるため、平成二十三年三月十一日から申請日前日の平成二十四年五月十日までの期間を採用すべきである」としていることを踏まえ、設定したものであり、他の一般電気事業者から電気料金の値上げに係る認可申請があった場合には、査定方針で示した考え方を踏まえ、当該申請がなされた時点においてベータ値が改めて算定されることとなり、東京電力に有利な例外を認めることにはならないと考えている。
 なお、査定方針については、経済産業省が総合資源エネルギー調査会総合部会電気料金審査専門委員会(以下「電気料金審査専門委員会」という。)における議論等を踏まえて策定し、同年七月二十日に物価問題に関する関係閣僚会議において了承されたものである。

一の13及び14について

 原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)第五十二条に基づき認定事業者が納付すべき特別負担金の額については、毎年度、認定事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、認定事業者に対しできるだけ高額の負担を求めるものとして主務省令で定める基準に従い、認定事業者に負担させることが相当な額として、原子力損害賠償支援機構が事業年度ごとに運営委員会の議決を経て定め、主務大臣の認可を受けることとされている。

二について

 今般の査定においては、査定方針において、「今後契約を締結するもの、契約交渉を行うもののうち、随意契約を行う取引に係る費用については、「東京電力に関する経営・財務調査委員会」において、発注方法の工夫による競争の導入により九・六パーセントの単価低減を図ることが可能であると推定していることを勘案し、各費用項目の性格に応じ、コスト削減を求めることが困難である費用を除き、コスト削減額が原則十パーセントに満たない場合には、未達分を減額する。・・・更に、子会社・関係会社に対しても東電並の経営合理化を求めるため、今後の随意契約取引に係る費用のうち一般管理費等のコスト削減可能な部分について、出資比率に応じ十パーセントの追加的コスト削減を行うことを前提に原価を査定する。」としていることを踏まえ、原価の査定を行っており、妥当であると考えている。

三の1から3までについて

 今般の申請においては、東京電力が日本原子力発電株式会社及び東北電力株式会社(以下「日本原電等」という。)から購入する原子力発電による電気の料金として、約千三億円が原価に計上されている。当該原子力発電に係る原子力発電所については、今般の申請における原価算定期間である平成二十四年四月一日から平成二十七年三月三十一日までの間に運転が見込まれているわけではないが、今般の査定においては、査定方針において、「①当該原子力発電所は契約の相手方との共同開発であると認められる。②このため、人件費、修繕費や減価償却費等の原子力発電所を安全に維持管理する費用や、将来の稼働に向けた投資に要する費用についても、自社電源同様、負担する義務があると考えられる。(中略)他方で、東京電力は契約の相手方に対して効率化努力を求めていくべきであり、既設分の減価償却費や固定資産税等といった効率化努力が見込めない費用を除く人件費や修繕費等について、東京電力自身による効率化努力分と比較し、既に織り込まれている効率化努力分では足らざる部分については、原価から削減すべきである。」としていることを踏まえ、当該約千三億円の原価から約三十七億円を減額している。また、非公開を前提として結ばれた民間企業間の契約書を全面的に公開することは困難であると考えているが、東京電力と日本原電等との間の契約については、電気料金審査専門委員会の委員が契約書の確認を行った上で、その概要を電気料金審査専門委員会の資料に掲載する等、可能な範囲で情報開示に努めている。

三の4について

 お尋ねについては、平成二十四年七月二十日に改定された「消費者基本計画」(平成二十二年三月三十日閣議決定)において、消費者庁、消費者委員会及び各公共料金等所管省庁は、公共料金等の決定過程の透明性、消費者参画の機会及び料金の適正性の確保を保つ観点から、所管省庁における公共料金等に係る情報公開の実施状況についてフォローアップすること等について検討し、取り組むこととしており、このことを通じて、公共料金の算定に際して情報開示が適切に実施されるよう努めてまいりたい。