質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第二四九号

内閣参質一八〇第二四九号
  平成二十四年九月十四日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員紙智子君提出幌延における高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発の中止に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出幌延における高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発の中止に関する質問に対する答弁書

一の1について

 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号。以下「法」という。)においては、法第六条から第八条までに規定する文献調査、概要調査、精密調査という多段階の調査を通じて、調査対象となる地区の地質環境が、当該地区の岩盤等の天然の地質環境による防護である天然バリア及びガラス固化体、金属製容器等による工学的な防護である人工バリアの組合せである多重バリアにより、放射性物質を長期にわたり人間環境から隔離し得る適切なものであると評価した上で、法第二条第十二項に規定する最終処分施設建設地を選定することとしている。御指摘の「第四紀」の地層については、第四紀の未固結堆積物から成る地層は、その地質環境が最終処分に適さないことから、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律施行規則(平成十二年通商産業省令第百五十一号)第六条第二項第一号において、概要調査の対象となる地区の選定要件として、文献調査の結果、当該調査地区内の最終処分を行おうとする地層に関して「第四紀の未固結堆積物であるとの記録がないこと」を規定しているところである。このほかの地層については、多段階の調査を通じた評価の過程で総合的に判断されるものである。

一の2について

 法第八条第二項第三号においては、最終処分施設建設地の選定要件の一つとして、精密調査の結果、当該調査地区内の最終処分を行おうとする地層に関して「地下水又はその水流が地下施設の機能に障害を及ぼすおそれがないと見込まれること」を規定している。幌延深地層研究センターでは、当該要件を満たすか否かの評価手法や基準の確立に必要な堆積岩から成る地質環境における地下水の移動特性等に関する調査研究を実施している。堆積岩から成る地質環境は、日本の代表的な地質環境の一つであることから同センターにおける調査研究の結果得られるデータは有益なものである。

一の3について

 お尋ねの場所について、政府として承知していない。

二の1及び2について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会が平成十九年十一月に公表した「サロベツ断層帯の長期評価について」において、サロベツ断層帯では、マグニチュード七・六程度の地震が今後三十年以内に四パーセント以下という高い確率で発生すると評価しているところである。
 沿岸海域の活断層については、地震による被害の軽減に資する観点から、「新たな活断層調査について」(平成二十一年四月二十一日地震調査研究推進本部政策委員会調査観測計画部会決定)に基づき、同本部において、サロベツ断層帯の海域延長部を含め、全国の沿岸海域の活断層の調査を行っているところである。

二の3について

 法第六条第二項において、概要調査の対象となる地区の選定要件として、文献調査の結果、当該調査地区内の最終処分を行おうとする地層に関して「地震等の自然現象による地層の著しい変動の記録がないこと」、「将来にわたって、地震等の自然現象による地層の著しい変動が生ずるおそれが少ないと見込まれること」等を規定していることから、これらの要件を満たさない地点が最終処分施設建設地として選定されることはない。

二の4について

 文献調査の実施の申入れに当たっては、「放射性廃棄物小委員会報告書中間とりまとめ」(平成十九年十一月一日総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会放射性廃棄物小委員会決定)において、「地域の意向を十分に尊重しつつ、場合によっては、市町村に対し、国が文献調査の実施の申入れを行うことも可能」との考え方が示されており、これを踏まえて対応することとしている。
 また、概要調査の対象となる地区、精密調査の対象となる地区及び最終処分施設建設地の選定については、法第四条第五項において、その選定に当たり、「当該概要調査地区等の所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を聴き、これを十分に尊重」しなければならないことを規定している。

三の1について

 御指摘の「当初予算見込み二百億円」は、幌延における深地層研究の計画として平成十年に核燃料サイクル開発機構(当時。以下同じ。)が取りまとめた「深地層研究所(仮称)計画」(以下「深地研計画」という。)において、当時の検討を踏まえて示した試算額であり、現在は、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)は、平成二十二年度から平成二十六年度までを期間とする原子力機構の今期中期計画(以下単に「今期中期計画」という。)に基づき幌延における深地層研究を実施している。
 幌延における深地層研究に係る地下施設建設費については、平成十二年度から平成二十四年度までの予算総額が、当該試算額の約八十九パーセントであることに対して、同期間における地下施設建設の進捗状況が約四十パーセントであることから、御指摘のとおり、当該試算を「超過している」と言える。これは、幌延の地質環境に起因する湧水抑制対策や工事排水処理設備等に要した費用が当該試算を示した際の見込みを上回ったためである。
 今期中期計画においては、原子力機構は深度三百五十メートル程度まで坑道を掘削することとしており、五百メートルまでの掘削については、原子力機構の次期以降の中期計画においてその取扱いを定めることとしていることから、現時点においては、お尋ねにお答えすることは困難である。

三の2について

 御指摘の「当初見込み四百五十五億円」は、深地研計画において、当時の検討を踏まえて示した試算額であり、現在は、原子力機構は、今期中期計画に基づき、幌延における深地層研究を実施している。
 幌延における深地層研究に係る研究費について、平成十二年度から平成二十四年度までの予算総額が、当該試算額の約二十パーセントであるのは、地下深部の地質環境を把握するための地上ボーリングの調査量を縮減したこと、地下施設の建設に係る工学技術開発に要する費用を研究費としてではなく建設費として分類したこと等によるものである。瑞浪における深地層研究と幌延における深地層研究とは研究内容が異なることから、お尋ねについて両者を単純に比較することは適切ではないと考える。

三の3について

 幌延深地層研究センターは、地下深部の地質環境を把握するための調査技術及び地層処分システムの設計・施工技術の評価に必要となる、地下水やガス、地震による地層処分システムへの影響を考慮した研究開発の実施が可能な地質環境を有していることから、同センターにおける国際共同研究は、人工バリア中のガスの移行挙動に関わるデータの取得が可能であるという利点を有している。
 同センターにおいて、平成二十五年度に深度三百五十メートルに展開される試験坑道が完成した後には、人工バリアの性能試験に関する欧米の研究者との国際共同研究が計画されており、今後、海外からの研究者の招へいが進むものと期待している。

三の4について

 平成二十二年度以前の原子力機構の決算については、幌延深地層研究センターの事業に係る決算を、原子力機構が区分して整理していなかったため、当該決算をお示しすることは困難であるが、御指摘の核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会からの要請等を踏まえ、平成二十三年度以降の決算については、同センターの事業に係る決算を区分して整理した上で、原子力機構のホームページで公表していく予定である。

三の5について

 法第八条第二項第三号においては、最終処分施設建設地の選定要件の一つとして、精密調査の結果、当該調査地区内の最終処分を行おうとする地層に関して「地下水又はその水流が地下施設の機能に障害を及ぼすおそれがないと見込まれること」を規定している。幌延深地層研究センターでは、当該要件を満たすか否かの評価手法や基準の確立に向け、地下深部の地質環境を把握する調査技術及び地下水やガス、地震による地層処分システムへの影響を考慮することが可能な塩分やガスの濃度が高い地質環境を有していることから、同センターでの研究は継続すべきであると考えている。
 最終処分施設建設地は、一の1についてで述べたとおり、多段階の調査を通じて、調査対象となる地区の地質環境における多重バリアの有効性を評価した上で選定されることとなる。なお、北海道、幌延町及び核燃料サイクル開発機構の間で平成十二年十一月十六日に締結した「幌延町における深地層の研究に関する協定書」に基づき、同町における深地層の「研究実施区域」は、最終処分施設建設地とはならないこととされている。

四について

 お尋ねの「人事交流」の意味するところが必ずしも明らかではないが、原子力機構は平成十七年十月に設立されており、民間企業から原子力機構へ出向している者は、平成十七年度末時点で二百四十八名、平成十八年度末時点で二百七十七名、平成十九年度末時点で三百二十九名、平成二十年度末時点で三百十五名、平成二十一年度末時点で二百九十四名、平成二十二年度末時点で二百七十四名、平成二十三年度末時点で三百二十六名である。そのうち、幌延深地層研究センターに配属されている者は、平成十七年度末時点ではおらず、平成十八年度末時点で一名、平成十九年度末時点で三名、平成二十年度末時点で七名、平成二十一年度末時点で七名、平成二十二年度末時点で三名、平成二十三年度末時点で五名であり、東濃地科学センターに配属されている者は、平成十七年度末時点ではおらず、平成十八年度末時点で一名、平成十九年度末時点で三名、平成二十年度末時点で二名、平成二十一年度末時点で三名、平成二十二年度末時点で三名、平成二十三年度末時点で三名である。
 お尋ねの「いわゆる「天下り」」の意味するところが必ずしも明らかではないが、原子力機構を退職した者の再就職の状況については、「特殊法人等整理合理化計画」(平成十三年十二月十九日閣議決定)、「公務員制度改革大綱」(平成十三年十二月二十五日閣議決定)及び「特別の法律により設立される民間法人の運営に関する指導監督基準」(平成十四年四月二十六日閣議決定)に基づき、原子力機構において、平成十四年度から平成二十二年度までの各年度の状況を「独立行政法人から関連法人への補助・取引等及び再就職の状況等」に、平成二十三年十月一日現在における状況を「独立行政法人等の役員に就いている退職公務員等の状況等の公表について」にそれぞれ記載し、原子力機構のホームページで公表している。