質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一六号

内閣参質一八〇第二一六号
  平成二十四年八月十七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員谷岡郁子君提出東京電力福島第一原子力発電所の作業員の労働条件に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷岡郁子君提出東京電力福島第一原子力発電所の作業員の労働条件に関する質問に対する答弁書

一について

 原子力発電所の作業員の安全管理や労働環境については、労働条件や労働衛生に関することを所掌する厚生労働省労働基準局等が、放射線業務を行う事業の事業者等に対し、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)等の規定に基づき、必要な調査、指導等を行っている。また、労働基準監督官が、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第百一条等の規定に基づき、原子力発電所を含む事業場に臨検、帳簿及び書類の提出要求等(以下「臨検等」という。)を実施し、労働基準関係法令上の問題が確認された場合には、当該問題を的確に是正させるため、指導を行っている。所轄の労働基準監督署に所属する労働基準監督官が、全国の原子力発電所に、平成二十一年四月一日から平成二十三年三月十一日の東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)までの間に実施した臨検等は、十八の原子力発電所について六十六件である。また、原子力その他のエネルギーに係る安全の確保を図るための機関である経済産業省原子力安全・保安院(以下「原子力安全・保安院」という。)等が、原子炉設置者に対し、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)等の規定に基づき、毎年度、放射線業務従事者の被ばく線量について報告を求めるとともに、毎年四回保安規定の遵守状況の検査を行うなど、必要な調査、指導等を行っている。
 厚生労働省労働基準局等及び原子力安全・保安院等が実施した指導等の内容については、担当者間で必要に応じ、電子メール等により情報共有を行ってきた。

二について

 原子力発電所を含め、事業場で労働基準関係法令上の問題が疑われる事案を把握した場合には、労働基準監督官が臨検等を実施し、当該問題が確認された場合には、当該問題を的確に是正させるため、指導を行っている。臨検等で確認した労働基準関係法令違反が重大又は悪質なものである場合については、刑事事件として取り扱うことにしているが、これらの事件のうち同種の犯罪の防止を図るという公益性を確保する観点から必要なものについては、公表することにしている。また、刑事事件として取り扱わない事案については、原則として公表することにしていないが、事業場の周辺住民の生命・健康に関わる事情が認められ、その不安を解消するという公益性を確保する観点から指導結果を明らかにすることが適当なものについては、公表することにしている。
 また、東京電力の福島第一原子力発電所の作業員の作業安全確保や労働環境改善に係る東京電力の取組については、政府・東京電力中長期対策会議に設けられた運営会議で定期的に確認し、同会議の資料を公表している。

三について

 厚生労働省及び経済産業省では、原子力発電所の作業員の安全管理や労働条件に関する一般的な指針やガイドラインは策定していないが、一般に、使用者は、労働基準法に基づき、労働条件の最低基準の遵守が義務付けられている。また、放射線業務を行う事業の事業者は、電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号)等の規定に基づき、放射線業務に従事する労働者の被ばく線量の測定等が義務付けられている。さらに、原子炉設置者は、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年通商産業省令第七十七号)等の規定に基づき、放射線業務従事者の被ばく線量の管理が義務付けられている。

四について

 東京電力の福島第一原子力発電所の第一号機から第四号機までの廃止措置等に係る人材確保については、政府・東京電力中長期対策会議が平成二十三年十二月に取りまとめ、平成二十四年七月に改訂した「東京電力(株)福島第一原子力発電所一~四号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」の要員計画に基づき、東京電力が要員確保等の取組を実施し、同会議がその進捗管理を行っている。また、要員計画の精度を向上させるために、同会議が毎年度要員計画の見直しを行うことにしている。

五について

 東京電力の福島第一原子力発電所の作業員の安全衛生管理対策については、厚生労働省は、東京電力に対し、「福島第一原子力発電所における緊急作業に係る安全衛生管理対策の強化について」(平成二十三年五月二十三日付け基安発〇五二三第一号厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)により、安全衛生管理体制の確立等の措置の適切な実施を指導し、原子力安全・保安院は、東京電力に対し、平成二十三年四月二十七日等に、適切な放射線管理を指示した。
 熱中症予防対策については、同省は、東京電力に対し、「東電福島第一原子力発電所の緊急作業に従事する労働者の熱中症予防対策の徹底について」(平成二十三年六月十日付け基安発〇六一〇第一号厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)等により、作業環境管理等の措置の適切な実施を重ねて指導した。
 健康管理については、同省は、同年三月十六日等に、東京電力及び元方事業者(労働安全衛生法第十五条第一項に規定する元方事業者をいう。以下同じ。)に対し、同法第六十六条第四項の規定に基づき、同月十一日以降に同発電所内で緊急作業に従事し、又は従事したことのある労働者(以下「指定緊急作業従事者等」という。)に対する臨時の健康診断の実施を重ねて指示した。また、同省は、同年十月十一日に、同法第七十条の二第一項の規定に基づき、指定緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針を定め、指定緊急作業従事者等を使用する事業者に対し、がん検診等の実施等を求めるとともに、電離放射線障害防止規則の一部を改正し、指定緊急作業従事者等を使用する事業者に対し、指定緊急作業従事者等の被ばく線量等の記録の同省への提出を義務付けた。
 お尋ねの防護用具等の維持管理体制等については、同省は、東京電力に対し、「福島第一原子力発電所における内部被ばく管理の強化について」(平成二十三年五月三十日付け基安発〇五三〇第一号厚生労働省労働基準局安全衛生部長通知)により、呼吸用保護具等の適切な使用の徹底を指導し、また、同発電所等で呼吸用保護具等の面体、フィルターの清掃、交換等の状況を確認した。
 お尋ねの監督状況については、労働基準監督官が、同発電所に、本件事故から平成二十四年七月三十一日までの間に、労働基準法第百一条の規定に基づく臨検又は労働安全衛生法第九十一条等の規定に基づく立入検査を十三件実施し、元方事業者や関係請負人(同法第十五条第一項に規定する関係請負人をいう。以下同じ。)も含めて、労働基準関係法令上の問題が確認された場合には、当該問題を的確に是正させるため、指導を行った。
 東京電力、元方事業者及び関係請負人の労働者の安全・健康・衛生管理の状況については、労働基準監督官が臨検等を実施し、労働基準関係法令上の問題が確認された場合には、当該問題を的確に是正させるため、指導を行っているが、お尋ねの格差の有無等については、把握していない。