質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八二号

内閣参質一八〇第一八二号
  平成二十四年七月十七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員山谷えり子君提出北京常設展示館事業に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山谷えり子君提出北京常設展示館事業に関する質問に対する答弁書

一について

 農林水産省は、本年六月二十九日に、「機密保持に関する調査結果(中間報告)」(以下「機密保持調査結果」という。)及び「北京常設展示館事業に係る論点の調査結果(中間報告)」(以下「論点調査結果」という。)を公表したところであり、今後、機密保持調査結果及び論点調査結果について、検察官であった者を含む弁護士三名程度による法律的見地からの評価及び助言(以下「第三者評価」という。)を実施することとしている。

二について

 お尋ねの「手紙」の意味するところが必ずしも明らかではなく、また調査に膨大な時間を要するため、お答えすることは困難である。なお、御指摘の「正式のプロトコール」の意味するところが必ずしも明らかではないが、外交使節団と接受国の外交機関との間で用いられる連絡手段としては、口上書が一般的であると承知している。

三及び四について

 機密保持調査結果においては、「今後の米の需給見通しについて」と題する資料は、作成した時点には国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項に規定する「秘密」に該当していた可能性があり、農林水産省の一般職の職員が当該資料を外部へ提供したことが明らかとなった場合、同項に規定する守秘義務の違反を理由として告発することも含め、関係当局と相談することとしたところである。
 今後、同省は、一についてでお答えしたとおり、機密保持調査結果について、確認した事実関係が犯罪に該当するか否かも含め、第三者評価を実施し、この中で、告発についても意見を聴くとともに、関係当局とも相談し、告発について判断することとしている。
 なお、同省の外部に提供されたことが確認された資料については、当該提供を行った者の特定について必要な情報等の提供を引き続き関係者に求めているところであり、今後とも、その特定に努める考えである。

五について

 農林水産省が機密保持調査結果を取りまとめるために設置した「機密保持に関する調査チーム」においては、御指摘の「本年三月二日に千代田区内のホテルで鹿野前大臣と会食」したとの報道については承知していないが、鹿野農林水産大臣(当時)が昨年三月二日に在日本国中国大使との東京都千代田区における夕食会において李元書記官と同席したこと及び筒井農林水産副大臣(当時)が同年一月に中国国有企業の代表者の来日を李元書記官らと空港に出迎え、新潟県における視察に同行したことについては把握しており、これらの事実を踏まえて、機密保持調査結果を公表したところである。また、御指摘の「一対一での面会」については、当事者同士で密かに相談が行われたものではないことを示すために、機密保持調査結果に記載したものである。

六について

 各府省庁の政務三役と国内外の企業が「覚書」という名称で過去五年間に作成した文書の有無について調査したところ、筒井農林水産副大臣(当時)と劉中国農業発展集団総公司董事長との間で作成した覚書(以下「本件覚書」という。)以外に該当する文書は、現時点では確認されていない。

七について

 お尋ねの「フレンドリー・アドバイス」とは、非公式な助言のことである。
 また、本件覚書は、国際約束ではなく、法的拘束力がないものとして、農林水産省と中国農業発展集団総公司との間で相互に協力を行う意図を確認するために作成したものである。

八について

 昨年二月四日に作成した鹿野農林水産大臣(当時)の声明(以下「本件声明」という。)は、国際約束ではなく、法的拘束力はないものとして発出しており、北京常設展示館の賃料を含む開設のための経費については、「日本側(中国輸出促進協議会(仮称))が賃料を含め開設に伴う経費・・・を負担することを基本とする」と記述し、民間事業体である一般社団法人農林水産物等中国輸出促進協議会(以下「協議会」という。)が負担する内容としている。
 本件声明における農林水産省の役割は、あくまでも、所掌及び利用可能な予算の範囲内で協議会の設立及び活動を支援することとしており、北京常設展示館の賃料を含む開設のための経費の支払に係る債務を保証する内容は含んでいない。

九について

 筒井農林水産副大臣(当時)から野田内閣総理大臣に対し、北京常設展示館を視察してほしい旨の要請があり、北京空港到着後、空港からの移動の途中で短時間、同内閣総理大臣が立ち寄ることとしたものである。

十について

 農林水産物・食品の輸出促進は、東日本大震災後、我が国の農林水産物・食品に対する諸外国の輸入規制が続く中、我が国にとって重要な政策課題であることから、農林水産省は、北京常設展示館事業の日本側の実施主体となる民間事業体が設立されるまでの間、同事業の企画、調整等に関する業務を支援するとともに、野田内閣総理大臣の北京常設展示館への視察を提案したものである。一方、このような取組を行ってきたことと、北京常設展示館の賃料を含む開設のための経費に対する支援を行うか否かの判断を行うことは別の問題であると認識しており、「説明には矛盾がある」との御指摘は当たらないと考えている。

十一について

 昨年二月から六月頃にかけて、農林水産省の筒井農林水産副大臣(当時)及び一般職の職員が、農林水産業関係団体、食品産業関係団体及び食品企業等(以下「団体及び企業」という。)に対し、当時予定されていた鹿野農林水産大臣(当時)が参加する農林水産物・食品の輸出促進のための訪中団への参加及び協議会の設立への協力を働きかけたところである。このような働きかけは、中国への農林水産物・食品の輸出の促進が重要な政策課題であることから、北京常設展示館事業の日本側の実施主体となる民間事業体が設立されるまでの間、同事業の企画、調整等に関する業務への支援の一環として行ったものであり、このように、政策目的を円滑に達成するために関係する民間事業者等に対し説明及び協力要請を行うことは、これまでも一般的に行ってきているところである。
 働きかけを行った団体及び企業の具体的な名称については、公にすることにより当該団体及び企業の正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。

十二について

 これまで、農林水産省においては、北京常設展示館事業の日本側の実施主体となる民間事業体が設立されるまでの間、同事業の企画、調整等に関する業務への支援の一環として団体及び企業の意向確認等を行ってきたところであるが、論点調査結果における同省の「一定の役割」とは、中国農業部及び中国国家質量監督検験検疫総局との調整等の内容を踏まえながら、行政としての立場から、民間事業者が行う事業に関与していくことを想定したものである。