質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七五号

内閣参質一八〇第一七五号
  平成二十四年七月十三日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員川田龍平君提出放射性物質の拡散防止対策及び原発の安全設備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出放射性物質の拡散防止対策及び原発の安全設備に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「希釈」については、国際原子力機関(IAEA)が平成十六年八月に出版した「規制除外、規制免除及びクリアランスの概念の適用」(以下「IAEA指針」という。)において、「放射能濃度値を満足させるための物質の意図的な希釈は、放射能が考慮されていない、通常の操作で起こる希釈は別として、規制当局の事前の承諾がなしに許可されるべきでない。」とされているところである。
 一方、東日本大震災に係る災害廃棄物(以下「災害廃棄物」という。)であって、現在、広域処理が行われているものについては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づく一般廃棄物の一般的な処理方法により、安全に処分することが可能な一般廃棄物としているところ、地方公共団体において発生した一般廃棄物と他の地方公共団体から受け入れた一般廃棄物を混合して焼却処理することは、廃棄物処理法に基づく一般廃棄物の一般的な処理方法であると考えており、災害廃棄物を受け入れた地方公共団体(以下「受入団体」という。)において、当該受入団体において発生した一般廃棄物と災害廃棄物とを混合して焼却処理することは、一般的に行われている処理方法であり、IAEA指針にいう「意図的な希釈」には当たらないと考えている。

二について

 薪は、一般的に、複数のロットを作業場等にまとめて集積し、その中から無作為に取り出して結束又はこん包して流通させているものと承知しているところ、放射性セシウム濃度が「調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値の設定について」(平成二十三年十一月二日付け二三林政経第二三一号林野庁林政部経営課長及び同部木材産業課長連名通知)に定める当面の指標値を超える薪及び超えない薪について、作業場等にまとめて集積されたものを無作為に取り出して結束又はこん包することは、一般的に行われている薪の取扱いに係る方法であることから、IAEA指針にいう「意図的な希釈」には当たらないものと考えている。
 また、御指摘の「組み合わせた薪」については、放射性セシウム濃度の検査結果を薪が生産された都道府県に報告することを生産者等に求めるとともに、その流通を当該都道府県内に限定することにより、放射性セシウムを含む薪の適切な管理が可能となるものと考えている。

三について

 政府としては、フィルター付きのベント設備の設置を含むシビアアクシデント対策の全般において、当時、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故のような短時間で事態が進展するシビアアクシデントが起き得ることの認識や国際的な動向を迅速に取り入れる姿勢が欠けていたことなどの問題があったと考えている。こうした点を十分に反省し、いわゆる安全神話に陥らず、国際的な原子力規制の動向にも注意を払っていくことが必要と認識しており、これまで、経済産業省原子力安全・保安院において今後の規制に反映すべきと考えられる三十項目の安全対策を取りまとめるなど、様々な取組を進めてきたが、今後は、新たに設置される原子力規制委員会において、適切な規制を検討し、実施していくこととしている。

四について

 東京電力の福島第一原子力発電所において、事故時に設置されていたベント設備に、仮にフィルターが追加されていたとしても、電源喪失により照明が無くなったことや現場の線量が上昇したこと等、作業環境が悪化し、また、ベント弁の開閉に用いる圧縮空気の系統で漏えいしたこと等に伴い、ベント弁の操作そのものが円滑に行われなかったと推定されること及びベント弁の操作を行う前に格納容器から放射性物質の漏えいが生じた可能性が高いことを踏まえれば、フィルターにより、放射性物質の大気中への放出が一部低減された可能性はあるが、どの程度低減されたかについて確定的に述べることはできないと考えている。

五について

 フィルター付きのベント設備の設置等に係る費用については、当該設備の仕様や具体的な設置場所等により異なるため、一概にお答えすることは困難である。