質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二一号

内閣参質一八〇第一二一号
  平成二十四年六月一日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員浜田昌良君提出いわゆる「脱法ハーブ」についての早急な規制強化に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出いわゆる「脱法ハーブ」についての早急な規制強化に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘のような事案があることを踏まえ、政府としては、指定薬物(薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第十四項に規定する指定薬物をいう。以下同じ。)に係る同法の規制の実効性を高める必要があると考えている。このため、指定薬物の指定をより迅速に行うよう努めるとともに、化学構造が類似している特定の物質群を包括的に指定する方法について、現在、専門家の意見を聴きながら検討している。今後、その検討結果を踏まえて、適切に対応したいと考えている。

二について

 薬事法等の見直しについては、平成二十四年一月二十四日に厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会が取りまとめた報告書である「薬事法等制度改正についてのとりまとめ」(以下「報告書」という。)で、指定薬物の取締りの強化に関する事項のほか、医薬品、医療機器等の市販後安全対策の充実強化に関する事項等についても提言された。政府としては、指定薬物の取締りの強化に関する事項を含む報告書で提言された全ての事項が喫緊の課題であると認識している。今後、報告書を踏まえ、可能な限り早期に所要の法律案を国会に提出したいと考えている。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、例えば、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)で使用規制が行われている麻薬と同種の濫用のおそれ又は有害作用がある物であることがいまだ確認されていない指定薬物について、薬事法で麻薬と同様の使用規制を行うことについては、有害性の程度に応じて行っている各種の薬物に対する規制との均衡や、製造、輸入、販売、広告等の禁止に加えて使用規制も行うことによる効果等を勘案して、慎重に検討すべきと考えている。
 なお、「いたちごっこ」との御指摘については、一についてで述べたとおり、化学構造が類似している特定の物質群を包括的に指定する方法について検討している。今後、その検討結果を踏まえ、適切に対応したいと考えている。

四について

 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百十六条及び国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第六十条では、被保険者等が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に疾病にかかったときは、当該疾病に係る療養の給付等は行わないとされており、この場合、犯罪行為とは、刑法(明治四十年法律第四十五号)により処罰される行為のほか、条例を含む同法以外の法令の規定に違反し処罰されるべき行為をいう。また、健康保険法第百十七条及び国民健康保険法第六十一条では、被保険者が、著しい不行跡により疾病にかかったときは、当該疾病に係る療養の給付等の全部又は一部を行わないことができるとされている。
 お尋ねの「脱法ドラッグ条例違反で健康を害した場合」がどのような状況を指すのか必ずしも明らかではないが、被保険者等が「脱法ハーブ」の吸引により故意に疾病にかかったときに該当する場合や、「脱法ハーブ」の吸引が条例の規定に違反し処罰されるべき自己の故意の犯罪行為に該当する場合は、療養の給付等は行われない。また、「脱法ハーブ」の吸引により健康を害した場合が、著しい不行跡により疾病にかかったときに該当する場合は、保険者は、個別具体的な事案に応じて、療養の給付等の全部又は一部を行わないことができる。
 また、お尋ねの「自己の故意の犯罪行為」や「著しい不行跡」を理由として療養の給付等が制限された件数等については、把握していない。

五について

 厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第七十三条及び国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第六十九条では、被保険者等が、故意に障害を生じさせたときは、当該障害を支給事由とする給付は行わないとされている。一方、被保険者等が、故意に死亡を生じさせたときは、当該死亡を支給事由とする給付は制限されていない。また、厚生年金保険法第七十三条の二及び国民年金法第七十条では、被保険者等が自己の故意の犯罪行為により障害又は死亡を生じさせたときは、当該障害又は死亡を支給事由とする給付の全部又は一部を行わないことができるとされている。この場合、故意の犯罪行為に該当するか否かは、当該犯罪行為に適用される罰則の程度によって決まるものではないため、お尋ねの「どの程度の罰則が必要か」について、お答えすることは困難である。
 お尋ねの被保険者等が「脱法ハーブ」の吸引により故意に障害を生じさせたときに該当する場合は、給付は行われない。また、「脱法ハーブ」の吸引が自己の故意の犯罪行為に該当する場合は、厚生労働大臣は、個別具体的な事案に応じて、給付の全部又は一部を行わないことができる。
 また、お尋ねの「刑罰が伴わなかったものに、「故意の犯罪」として支給制限が行われた例」については、把握していない。

六について

 薬物乱用の未然防止対策については、「第三次薬物乱用防止五か年戦略」(平成二十年八月二十二日薬物乱用対策推進本部決定)の目標一に「青少年による薬物乱用の根絶及び薬物乱用を拒絶する規範意識の向上」を掲げ、関係府省の連携の下、学校等における薬物乱用防止のための指導・教育の充実強化や有職・無職少年に対する啓発の強化等の対策に取り組んでいる。
 御指摘の「脱法ハーブ」についても、その有害性について広報啓発を行うなど、乱用の未然防止に向けた取組を更に進めていく必要があると認識している。