第180回国会(常会)
答弁書第一〇九号 内閣参質一八〇第一〇九号 平成二十四年五月二十二日 内閣総理大臣 野田 佳彦
参議院議長 平田 健二 殿 参議院議員山谷えり子君提出欧州評議会議員会議の決議一八一五に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員山谷えり子君提出欧州評議会議員会議の決議一八一五に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の携帯電話用基地局等から発射される電磁波については、我が国においては、電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)等で、国際非電離放射線防護委員会(以下「ICNIRP」という。)により平成十年四月に発表され、世界保健機関(以下「WHO」という。)が遵守することを推奨している「時間変化する電界、磁界及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(三百ギガヘルツまで)」に定められている基準と同等の基準を定めるとともに、携帯電話用基地局等の開設に当たっては、電波の強さが当該基準を超える場所に人が立ち入らないよう、安全施設の設置を義務付けており、政府としては、これらにより当該電波による人体への危害の防止が図られているものと考えている。 二について 御指摘の公的なしきい値以下で非電離放射線に被ばくした場合における生物学的な影響や非熱効果及び潜在的な有害性については、その科学的根拠は承知していない。また、WHOが「超低周波電磁界へのばく露」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百二十二においては、高レベルの電磁界への短期的ばく露については、健康への有害な影響が科学的に確立されており、ICNIRP等が作成している国際的なばく露ガイドラインを採用するべき旨の見解が示されているが、ICNIRP等は超低周波電磁界への長期的な低レベルのばく露による健康への影響に関する科学的証拠はばく露制限値の引下げを正当化するには不十分とみなしている旨や、恣意的に低いばく露制限値を採用する政策は是認されない旨の見解も示されている。政府としては、電磁波の健康への影響について、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集を行うとともに、実験動物等を用いた調査等の研究を実施しているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。 三及び四について 予防的な取組方法については、平成四年の国連環境開発会議(地球サミット)で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」の第十五原則において、各国により、その能力に応じて広く予防的な取組方法を適用することが求められていることを踏まえ、我が国においては、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第四条に、「環境の保全は、(中略)科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行わなければならない。」と規定し、また、同法第十五条に基づく「環境基本計画」(平成二十四年四月二十七日閣議決定)にも、環境影響が懸念される問題については、科学的証拠が欠如していることをもって対策を遅らせる理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じるという予防的な取組方法の考え方に基づいて対策を講じていくべきであることを環境政策における原則等の一つとして位置付けている。 政府としては、予防的な取組方法の考え方を具体的な場面でどのように当てはめていくかということについては、国際的な議論の動向も踏まえつつ、検討していくこととしており、電磁波の健康への影響についても、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集や、実験動物等を用いた調査等の研究の実施により、科学的知見の充実に努めつつ、必要な施策を講じてまいりたい。 五について 御指摘の電磁場、特に、携帯電話からの無線周波数については、WHOが「携帯電話」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー百九十三においては、携帯電話の使用による脳腫瘍のリスクの上昇は立証されなかったものの、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクの更なる研究が必要である旨の見解が示されている。政府としては、電磁波の健康への影響について、子供の携帯電話の使用による影響調査、携帯電話からの電磁波による発がんリスク等の情報提供の在り方等の研究を実施しているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。 六について 御指摘の子供をターゲットにした電磁波の健康への影響に関する普及啓発については、政府としては、電磁波の健康への影響について、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集を行うとともに、実験動物等を用いた調査等の研究を実施し、これらにより得られた情報や研究成果について、関係各省による説明会やホームページ等を通じた情報提供を行っているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。 七について 御指摘の電磁波過敏症については、WHOが「電磁過敏症」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー二百九十六においては、電磁過敏症の症状を電磁界へのばく露と結び付ける科学的根拠はなく、また、電磁過敏症は医学的診断でもなければ、単一の医学的問題を表しているかどうかも不明である旨の見解が示されている。政府としては、現時点では、御指摘の電磁波過敏症についての医学的な疾病概念は確立していないものと考えているが、電磁波の健康への影響に関する知見等について、引き続き、情報収集を行ってまいりたい。 八について 御指摘の屋内環境でのマイクロ波への長期的な被ばくのレベルのための予防的しきい値については、WHOが「基地局及び無線技術」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百四においては、家庭、オフィス及び多くの公共エリアに設置された無線ネットワークからのRF(無線周波)へのばく露のレベルは非常に低く、無線ネットワークからの弱いRF信号による健康への影響について説得力のある科学的証拠はない旨の見解が示されている。政府としては、電磁波の健康への影響について、WHOやICNIRP等の国際機関から示される見解等の情報収集を行うとともに、実験動物等を用いた調査等の研究を実施しているところであり、引き続き、これらの取組を進めてまいりたい。 九について 御指摘の「新しい無線施設アンテナ」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、携帯電話用基地局の開設に当たっては、これまでのところ、携帯電話事業者は、総務省の要請に基づき、携帯電話用基地局の周辺地域の住民への説明を十分に果たしているものと考えており、現時点で新たな対応が必要とは考えていない。 |