第180回国会(常会)
答弁書第九一号 内閣参質一八〇第九一号 平成二十四年四月二十七日 内閣総理大臣 野田 佳彦
参議院議長 平田 健二 殿 参議院議員福島みずほ君提出関西電力大飯原発三・四号機の再稼働に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島みずほ君提出関西電力大飯原発三・四号機の再稼働に関する質問に対する答弁書 一について 原子力発電所に関する四大臣会合(以下「四大臣会合」という。)には、これまで全ての会合において、野田内閣総理大臣、枝野経済産業大臣、細野内閣府特命担当大臣、藤村内閣官房長官が出席し、また、「原子力発電所に関する四大臣会合運営要領」(平成二十四年四月三日原子力発電所に関する四大臣会合決定。以下「四大臣会合運営要領」という。)に基づき、枝野経済産業大臣の求めにより、これまで全ての会合において、齋藤内閣官房副長官、仙谷民主党政策調査会長代行、深野経済産業省原子力安全・保安院長、今井経済産業省資源エネルギー庁次長が出席している。なお、政府以外の参加者は、仙谷民主党政策調査会長代行がオブザーバーとして出席している。 二の1について 四大臣会合における配布資料については、四大臣会合運営要領に基づき、経済産業大臣が、その一部又は全部を非公表とする必要があると認めた場合を除き、これまで、第一回会合から第五回会合までの全ての配布資料を公表している。 二の2について 四大臣会合においては、これまで全ての会合において、議事概要を作成するために経済産業省職員が個人的記録として録音した部分がある。 二の3から5までについて 四大臣会合においては、四大臣会合運営要領に基づいて、議事概要を作成しており、また当該議事概要については、会合終了後、原則として公表することとしている。これまで、第一回会合から第五回会合までの議事概要を作成後速やかに公表している。なお、公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)において、議事録又は議事概要の作成が一律に求められているものではないが、行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程及び実績が把握できる文書の作成が求められている。 三の1及び十一の4について 四大臣会合が平成二十四年四月六日に取りまとめた「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(以下「判断基準」という。)において示された基準(一)及び基準(二)を満たすことが確認できた原子炉については、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「福島原発事故」という。)を引き起こしたものと同程度の地震や津波が来襲しても、炉心を管理された状態で維持し冷温停止の状態につなげることができる対策がとられていることとなる。また、基準(三)においては、フィルター付ベント管の設置や防潮堤の設置等、更なる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること、今後新たに設置することを目指している原子力規制庁が打ち出す規制への迅速な対応に加え、事業者自らが安全確保のために必要な措置を見いだし、これを不断に実施していくという事業姿勢が明確化されていることについて確認することとしている。このようなことから、判断基準は、原子力発電所の安全性について判断する上で適切な基準であると認識している。 三の2について お尋ねの「責任」の意味するところが必ずしも明らかではないが、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)においては、原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものである場合を除き、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めを負うこととされている。また、原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)においては、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償支援機構を通じて、原子力損害の賠償が適切かつ迅速に実施されるよう、万全の措置を講ずるものとされている。 四の1、6及び7、九の2及び5並びに十一の1から3までについて 定期検査で停止中の原子力発電所の安全性については、平成二十三年七月十一日に内閣官房長官、経済産業大臣及び内閣府特命担当大臣において取りまとめた「我が国原子力発電所の安全性の確認について(ストレステストを参考にした安全評価の導入等)」(以下「三大臣取りまとめ」という。)において、定期検査中の原子力発電所については、現行法令にのっとり安全性の確認が行われているが、国民・住民の方々に十分な理解が得られているとは言い難い状況を踏まえ、安全上重要な施設・機器等が設計上の想定を超える事象に対し、どの程度の安全裕度を有するのかという点について、欧州諸国で導入されたストレステストを参考に、新たな手続やルールに基づく安全評価(以下「一次評価」という。)を原子力事業者が行い、その評価結果について、経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)が確認し、更に内閣府原子力安全委員会(以下「原子力安全委員会」という。)がその確認の妥当性を確認することとなっている。これらの確認を行った上で、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開については、内閣総理大臣、内閣官房長官、経済産業大臣及び内閣府特命担当大臣(以下「四大臣」という。)が、住民の理解や国民の信頼が得られているかという点も踏まえ、その可否を総合的に判断していくこととしている。 関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)の大飯発電所の第三号機及び第四号機(以下「大飯三・四号機」という。)については、保安院において、国際原子力機関(IAEA)のレビューも受けた上で、関西電力が行った一次評価の結果について、発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に係る意見聴取会を公開で開催し、外部の専門家の意見を聴きつつ、そこで提起された各論点に対して、保安院の考え方を示すことにより、透明性を確保しつつ審査を行い、その上で、保安院において審査結果を取りまとめており、また、原子力安全委員会が当該審査結果の確認を行い、見解をまとめるなど、適切な検討過程を経たものと考えている。 また、四大臣会合において、大飯三・四号機の安全性については、一次評価の結果に係る確認に加えて、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(以下「事故調査・検証委員会」という。)や保安院による各種の意見聴取会等における有識者や専門家等の第三者による調査・検討の結果、福島原発事故の原因について、津波により、非常用ディーゼル発電機等の設備が使用不可能になり全交流電源喪失の状況となったことが、その後の事象進展の直接的な原因であり、地震の影響については、安全上重要な設備・機器がその安全機能を保持できる状態にあったと推定されるとの基本的理解が得られていることを踏まえ、同年三月に原子力事業者に指示した緊急安全対策、同年十月から検討を開始し平成二十四年三月に取りまとめた今後の規制に反映すべきと考えられる三十項目の安全対策等、この一年間に政府として積み重ねてきた対策や知見を判断基準として取りまとめ、大飯三・四号機が判断基準に適合しているとの確認を行っている。これに加えて、四大臣会合においては、今夏の関西電力管内における電力需給の見通しについて、仮に全ての原子力発電所が運転再開されないまま夏を迎えることとなれば、平成二十二年並みの猛暑を想定した最大需要の下では、これまでの供給力積増しの努力を勘案してもなお約二割程度の電力不足となる可能性や燃料費の増加の影響も勘案しつつ、大飯三・四号機の運転再開の必要があると判断している。今後、四大臣において、住民の理解や国民の信頼が得られているかという点も踏まえ、大飯三・四号機の運転再開の可否を総合的に判断していくこととしている。 他方、三大臣取りまとめにおいて実施することとしている総合的な安全評価(以下「二次評価」という。)については、運転再開の可否とは別に、各原子力発電所の安全性・信頼性の継続的な向上を図るために行われるものである。関西電力から、現時点で二次評価の結果は受領していないが、これは、関西電力において評価が終了していないため、報告がなされていないものと承知している。 四の2について 関西電力は、大飯三・四号機の一次評価において、制御棒挿入性について、過去に独立行政法人原子力安全基盤機構が実機試験体を用いて実施した耐震機能限界試験の結果から、基準地震動の二倍を超える地震動に対しても制御棒が全挿入されること等を確認しており、その結果については、大飯三・四号機の安全裕度が基準地震動の一・八倍であることに鑑みれば、一次評価の結果に影響を及ぼさないものとして扱っており、保安院はこれを妥当と評価している。 四の3について 関西電力は、大飯三・四号機の一次評価において、基礎ボルトについて、複数本により機器等を固定しており、一本に発生する荷重が許容値に達するかどうかではなく、全体として機能が維持されるかどうかに着目して評価しており、その結果については、大飯三・四号機の安全裕度が基準地震動の一・八倍であることに鑑みれば、一次評価の結果に影響を及ぼさないものとして扱っており、保安院はこれを妥当と評価している。 四の4について 関西電力は、大飯三・四号機の一次評価において、建屋の構造強度について、倒壊による他の安全上重要な設備への影響を防止できること等について確認するための基準値を用いて評価しており、その結果、大飯三・四号機の主な建屋の耐震裕度が基準地震動の一・八倍を上回っていることを確認しており、保安院は当該確認結果について評価手法の妥当性を含めて確認している。 四の5について 関西電力は、大飯三・四号機の一次評価において、電源車や消防ポンプ等の配備等の緊急安全対策が実施されていることを前提として、設計上の想定を超える地震や津波が原子力発電所に来襲した場合に、炉心損傷に至らせない最大の地震動や津波高さを評価しており、その結果、地震動については基準地震動の一・八倍、津波高さについては十一・四メートルであると確認しており、保安院は当該評価結果について評価手法の妥当性を含めて確認し、福島原発事故を引き起こしたものと同程度の地震や津波が来襲しても、福島原発事故のような状況に至らせないための対策が講じられていると評価している。 五の1及び4について 政府が大飯三・四号機の運転再開の必要性を判断する際に用いた電力需給見通しについては、経済産業省資源エネルギー庁において、御指摘のピークカットや揚水発電の活用等の需給両面での検討策が盛り込まれているか否かも含めて精査を行ったものであり、他の電力会社から見込まれる電力融通量等を勘案した平成二十四年四月十二日時点における見通しである。なお、今夏の電力需給見通しについては、エネルギー・環境会議及び電力需給に関する検討会合の下に開催の需給検証委員会(以下「需給検証委員会」という。)において、第三者の立場から客観的に検証し、透明性及び信頼性を高めることとしている。政府としては、引き続き、電力需給対策に最大限取り組むこととしているが、関西電力管内における今夏の電力需給が逼迫することが見込まれる状況について、大きく変化することはないと認識している。 五の2及び3について 宮津エネルギー研究所第一号機及び第二号機並びに多奈川第二発電所第一号機及び第二号機については、蒸気タービン等における腐食等が進み、復旧には材料手配、機械加工、組立てなど三年以上の期間を要する見込みであり、今夏の電力供給力への計上は困難であると承知している。 六及び九の7について 「原子力施設等の防災対策について」(昭和五十五年六月三十日原子力安全委員会決定)については、福島原発事故の後、改訂を行っていないが、今国会に提出した原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(以下「法律案」という。)の成立後、速やかに、原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会が平成二十四年三月二十二日に取りまとめ原子力安全委員会に報告した「「原子力施設等の防災対策について」の見直しに関する考え方について(中間とりまとめ)」を踏まえ、原子力災害対策指針を定めることとしている。その上で、御指摘の「原子力災害対策マニュアル」(以下単に「原子力災害対策マニュアル」という。)については、法律案、原子力災害対策指針、事故調査・検証委員会が平成二十三年十二月二十六日に取りまとめた「中間報告」等を踏まえ改訂を行うこととしているところ、これらの内容については現在検討中である。 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)については、現時点において、福島原発事故に関する計算結果を可能な限り早期に公開するよう努めており、今後、原子力災害対策マニュアルの改訂を行う中で、情報公開の在り方を明確にしてまいりたい。また、御指摘の「オフサイトセンター」(以下単に「オフサイトセンター」という。)については、現時点において、通信途絶に備えたモバイルネットワークを配備するとともに、放射線防護対策としての防護服やマスクの充実、飲食料の備蓄を拡充し、さらに、オフサイトセンターが使用できない場合にこれを代替することができる施設の用に供する可搬型通信資機材を整備したところである。今後は、衛星回線の拡充等の通信体制の強化、放射線量を抑制するための換気設備の整備等の措置を講じていくこととしている。 このような原子力防災対策については、ある一定の水準で十分ということはなく、原子力発電所が運転しているか否かを問わず、全ての原子力発電所について、常により高い水準を目指して取り組むべきものである。引き続き、政府として、原子力防災対策の充実に向け不断の改善に努めてまいりたい。 七について お尋ねの「防災協定」が何を指すのか必ずしも明らかでないが、電気事業者等が関係地方自治体との間で異常時の通報等を行う旨の協定は、地方自治体の個別の関心に応じて任意に締結しているものである。 関西電力によれば、関西電力と異常時の通報等を行う協定を結んでいる自治体であって、御指摘の緊急防護措置を準備する区域(UPZ)の目安とされる関西電力の原子力発電所から三十キロメートルの範囲内にある自治体は、福井県、福井県南条郡南越前町、福井県敦賀市、福井県三方郡美浜町、福井県三方上中郡若狭町、福井県小浜市、福井県大飯郡高浜町、福井県大飯郡おおい町、京都府、京都府舞鶴市及び京都府綾部市であると承知している。 八について 定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開については、四の1、6及び7、九の2及び5並びに十一の1から3までについてでお答えしたとおり、住民の理解や国民の信頼が得られているかという点も踏まえ、その可否を総合的に判断していくこととしているが、お尋ねの「原発立地自治体の同意のみで足りるのか」、「「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」に該当する自治体の同意は必要あるのか」、「「地元の一定の理解」とは、どのような自治体を対象とし、かつ、どのような状態を指すのか」について、あらかじめお示しすることは困難である。 九の1について 政府としては、東日本大震災における原子力発電所の事故による災害の結果損なわれた我が国の原子力の安全に関する行政に対する内外の信頼を回復し、その機能の強化を図るため、規制と利用の分離及び原子力の安全の確保に関する規制の一元化の観点から環境省に原子力発電所の安全の確保に関する規制等を担う原子力規制庁を設置するほか関係する組織を再編するとともに、原子力の安全の確保に関する規制その他の制度について、最新の知見を踏まえた基準を既設の原子炉施設等にも適用するものとすること、重大事故対策の強化を図ることその他の所要の措置を速やかに講ずる必要があると考えており、国民の不安を和らげるためにも、一日も早く新たな原子力安全規制制度と防災体制を整えることが急務であると考えている。他方、今回のような事故を二度と繰り返さないため、新たな安全規制が施行されるまでの間においても、原子力安全に係る信頼性向上に継続して取り組んでいくことが必要であると考えている。 九の3について お尋ねについて、例えば、今夏の電力需給の見通しについては、公開の会議である需給検証委員会において、第三者の立場から客観的に検証することにより、透明性及び信頼性の向上に努めている。また、四の1、6及び7、九の2及び5並びに十一の1から3までについてでお答えしたとおり、この一年間に政府として積み重ねてきた対策や知見を判断基準として取りまとめているが、これらの知見を整理する過程においては、保安院は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会等、四つの意見聴取会を公開で開催しており、これらの意見聴取会については、プラント挙動に関する実データや観測記録を用いた地震応答解析結果等、可能な限り詳細なデータを示しつつ、原子炉工学や原子力安全規制等の幅広い分野の専門家等の第三者から意見を聴取しながら実施するとともに資料及び議事録を公開している。 九の4について 大飯三・四号機については、四の1、6及び7、九の2及び5並びに十一の1から3までについてでお答えしたとおり、判断基準に適合しているとの確認を行っており、さらに、判断基準の基準(三)で提出を求めた実施計画の進捗状況について、少なくとも四半期に一度は報告するよう求めている。 九の6について 政府としては、原子力発電を含む今後のエネルギー政策について、中長期的に原子力への依存度を最大限に低減させるとの方向を目指すべきと考えている。今後、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成を目指し、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、今年の夏を目途に新しい戦略と計画を取りまとめることとしている。 また、使用済燃料の再処理に伴い発生する高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関しては、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)により、地層処分の制度的枠組みが整備され、処分実施主体として平成十二年に原子力発電環境整備機構(以下「NUMO」という。)が設立されている。平成十四年には、処分地選定のための最初の調査段階である文献調査について、NUMOが全国の市町村を対象に公募を開始している。政府としては、今後とも処分地選定に向けた取組を進めてまいりたい。 九の8について 政府としては、福井県を始めとしたこれまで国の原子力政策について御協力をいただいた原子力発電所の立地地域の方々の思いをしっかりと受け止めていく責任があると考えている。 十について 政府としては、中長期的に原子力への依存度を最大限に低減させるための取組を進める一方、安全の確保を前提として、電力需給の見通しや燃料費の増加の影響も勘案しつつ、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開の必要性が認められれば、我が国の経済社会の現実等を踏まえ、原子力発電を重要な電源として活用していくことが必要であると認識しており、枝野経済産業大臣の発言は、このような認識に基づいたものである。 |