質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第五九号

内閣参質一八〇第五九号
  平成二十四年三月十六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員水野賢一君提出炉心損傷等の定義に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員水野賢一君提出炉心損傷等の定義に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについて、平成二十三年四月十八日に経済産業省原子力安全・保安院が内閣府原子力安全委員会に提出した「福島第一原子力発電所一号炉、二号炉、三号炉の炉内状況について」においては、その記述内容の理解に正確を期すため、「炉心損傷」、「燃料ペレットの溶融」及び「メルトダウン」の概念について、それぞれ次のとおり整理している。
 「炉心損傷」については、「原子炉炉心の冷却が不十分な状態の継続や、炉心の異常な出力上昇により、炉心温度(燃料温度)が上昇することによって、相当量の燃料被覆管が損傷する状態。このとき、燃料被覆管に封じ込められていた、希ガス、ヨウ素が放出される。この場合は燃料ペレットが溶融しているわけではない。」としている。
 「燃料ペレットの溶融」については、「燃料集合体で構成される原子炉の炉心の冷却が不十分な状態が続き、あるいは炉心の異常な出力上昇により、炉心温度(燃料温度)が上昇し、燃料が溶融する状態に至ることをいう。この場合は燃料集合体及び燃料ペレットが溶融し、燃料集合体の形状は維持されない。」としている。
 「メルトダウン」については、「燃料集合体が溶融した場合、燃料集合体の形状が維持できなくなり、溶融物が重力で原子炉の炉心下部へ落ちていく状態をいう。メルトダウンの規模については少量の場合から多量の場合によって原子炉圧力容器や格納容器との反応が異なる。多量の場合は原子炉圧力容器等を貫通することもあり得る。」としている。

二について

 「炉心溶融」及び「メルトダウン」について、確立された定義が存在するものではないが、一般に、「炉心溶融」については、原子炉圧力容器内の炉心にある燃料が高温となり溶融することを指し、また、「メルトダウン」については、「炉心溶融」が生じた後、更に溶融した燃料が原子炉圧力容器下部に落ちていく現象を指すと認識している。

三について

 平成二十三年六月七日に政府が公表した「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について―」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)においては、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の第一号機から第三号機までの各号機における炉心の状態の解析結果について、第一号機においては、同年三月十一日午後六時頃に炉心損傷が始まり、その後、燃料が溶融し、溶けた燃料が原子炉圧力容器下部に移行していたものと推定されるとしており、第二号機においては、同月十四日午後八時頃に炉心損傷が始まり、その後、燃料が溶融し、溶けた燃料が原子炉圧力容器下部に移行していたものと推定されるとしており、第三号機においては、同月十三日午前十時頃に炉心損傷が始まり、その後、燃料が溶融し、溶けた燃料が原子炉圧力容器下部に移行していたものと推定されるとしている。これは、第一号機から第三号機までの各号機において一についてでお示しした「メルトダウン」が生じたことを意味している。また、第四号機については、燃料が装荷されておらず、第五号機及び第六号機については、非常用電源により原子炉の冷却を行ったため、これらの号機については、いずれも一についてでお示しした「炉心損傷」に至っていない。