質問主意書

第180回国会(常会)

答弁書


答弁書第三四号

内閣参質一八〇第三四号
  平成二十四年二月二十八日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員浜田昌良君提出拙速な野田総理の原子力発電所事故収束宣言に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出拙速な野田総理の原子力発電所事故収束宣言に関する質問に対する答弁書

一について

 原子力災害対策本部が平成二十三年十二月十六日に取りまとめた「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋 ステップ二完了報告書」(以下「完了報告書」という。)において、冷温停止状態の定義については、「圧力容器底部の温度が概ね百度以下になっていること」、「格納容器からの放射性物質の放出を管理し、追加的放出による公衆の被ばく線量を大幅に抑制していること」、「上記二条件を維持するために、循環注水冷却システムの中期的安全を確保していること」のいずれも満たしている状態であるとしている。また、冷温停止状態かどうかを判断するに際しては、複数の指標を基に総合的に判断することとしており、例えば圧力容器底部の温度については、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)において、複数個の温度計により測定し、各温度計の状態や位置も考慮しつつ測定結果を相互に比較参照して計測しているところ、東京電力によると、福島第一原子力発電所の第一号機から第三号機までの各号機における圧力容器底部代表部位の温度については、平成二十四年二月二十四日十一時時点で、それぞれ第一号機で約二十四度、第二号機で約四十七度、第三号機で約五十一度である。

二について

 東京電力によると、平成二十四年一月二十三日時点において、福島第一原子力発電所の第一号機から第三号機までにおける原子炉格納容器からの放射性セシウムの追加的放出量の合計は、毎時約〇・七億ベクレルと推定されている。なお、平成二十三年三月十一日以前の状況については、経済産業省において、東京電力が定める「福島第一原子力発電所原子炉施設保安規定」に定める年間の管理目標値を下回っているかを確認するため、東京電力から、同発電所における放射性ヨウ素等の年間総放出量について報告を受けており、その内容については同省のホームページに掲載しているが、放射性物質の核種が異なり、また、放射性物質の放出量は原子力発電所の運転状態により変動することから、単純に比較することは困難である。

三について

 東京電力からの平成二十三年十二月六日の報告によれば、福島第一原子力発電所において、タービン建屋等の水位の測定記録から推定される雨水や地下水の流入量は、一日当たり合計で二百立方メートルから五百立方メートルである。また、東京電力からの平成二十四年二月二十二日の報告によれば、同発電所において、同月二十一日時点で、原子炉建屋、タービン建屋及び集中廃棄物処理建屋内における汚染水の滞留量は、合計で約九万立方メートルであり、濃縮塩水受けタンク及び濃縮廃液貯槽の残容量は合計で約三万立方メートルである。御指摘の「水は冷温停止状態の定義と無関係」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、完了報告書において、冷温停止状態の条件の一つについて、「格納容器からの放射性物質の放出を管理し、追加的放出による公衆の被ばく線量を大幅に抑制していること」としており、そのためには、滞留水が適切に管理された状態にあり外部への放出が抑制されていることが必要であると考えている。

四について

 福島第一原子力発電所に係る責任保険契約(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第八条に規定する責任保険契約をいう。以下同じ。)について、日本原子力保険プールによれば、同発電所において既に事故が発生していることや核燃料物質等が事故発生前と同等の状態で管理されていないこと等を理由として、責任保険契約を更新しなかったものと聞いている。また、御指摘の「海外大手保険会社との契約」について、文部科学省としては、東京電力に対し、同法第六条に規定する損害賠償措置として同法第七条第一項の規定による承認を受けるためには、当該契約の付保の範囲について、従前より東京電力と日本原子力保険プールとの間で締結されていた責任保険契約の付保の範囲と同様のものである必要がある旨を指摘してきたところである。

五について

 一についてで述べたとおり、冷温停止状態かどうかを判断するに際しては、複数の指標を基に総合的に判断することとしており、例えば圧力容器底部の温度については、複数個の温度計により測定し、各温度計の状態や位置も考慮しつつ測定結果を相互に比較参照している。経済産業省においては、今般の温度計の故障を受けて、平成二十四年二月十三日に、東京電力に対し、現在使用されている温度計以外に原子炉内の温度を監視する代替手段があるかどうか等について報告を求めており、現在、東京電力からの報告内容について、専門家の意見も聴きつつ評価しているところである。