質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第二五四号

香港民間団体による尖閣諸島上陸事件に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年九月六日

佐藤 正久   


       参議院議長 平田 健二 殿



   香港民間団体による尖閣諸島上陸事件に関する再質問主意書

 平成二十四年八月十五日、香港の民間団体である「保釣行動委員会」の船が我が国領海に侵入し、乗組員の一部が、尖閣諸島の魚釣島に上陸した。沖縄県警等がこれら上陸者等を出入国管理及び難民認定法第三条等の違反容疑で現行犯逮捕したが、同法第六十五条の適用により、これら被疑者に対して強制送還の措置がとられた。
 同法第六十五条では、他に罪を犯した嫌疑のないときに限り、刑事訴訟法の規定にかかわらず、当該被疑者を入国警備官に引き渡すことができるとされているが、一部公開された海上保安庁撮影・編集の録画映像によれば、当該船舶及び乗組員による出入国管理及び難民認定法第三条等の違反容疑以外に、我が国法令に違反する複数の事案が発生していたと認識せざるを得ない。
 右の点を踏まえ、以下質問する。

一 海上保安庁が公開した映像には、当該船舶に対する放水、接舷規制、挟撃等を実施していたものの、当該船舶は航行を続け、停船しない映像が映し出されていた。
 海上保安庁の巡視船は、当該船舶に対する領海等における外国船舶の航行に関する法律第六条に基づく立入検査実施を通告したのか。また、立入検査実施を通告していた場合、前記映像では、当該船舶が停船せず、立入り若しくは検査を妨げている行為が明らかにされており、同法第十二条に規定される立入検査忌避に該当すると認識しているが、今回、何故、同法第十二条が適用されなかったのか、明らかにされたい。

二 仮に同海域の波が高く、海上保安庁の巡視船の接舷による移乗が困難であった場合、海上保安庁のヘリからのリペリング降下等によって、当該船舶への移乗は可能であったと考えているが、何故、実施されなかったのか、明らかにされたい。

三 前記映像には、当該船舶の乗組員が、海上保安庁の巡視船上の海上保安官へ向けて、れんがのようなものを投擲する映像が映し出されていたが、この行為は、刑法第二百八条に規定される暴行罪に該当するものであると認識している。
 暴行罪は、人の身体に向けられた有形力(物理力)の行使であり、必ずしも人の身体に接触することを要しないとされているが、今回、何故、暴行罪が適用されなかったのか、判例等に照らして論理的に明らかにされたい。

四 当該船舶が、魚釣島に乗り上げ、不開港場である同島に乗組員を上陸させたことは、船舶法第三条に抵触するものであると認識している。これに対して、平成二十四年九月三日に開かれた参議院決算委員会において、吉田国土交通副大臣は「今回の場合は一時的に海岸に乗り上げたものということで、不開港場への寄港に当たらないと判断をしたというふうに報告を受けております」と答弁した。
 しかしながら、同法は、日本船舶に非ざれば不開港場に寄港し又は日本各港の間に於いて物品又は旅客の運送を為すことを得ずと規定している。今回の不法上陸は、荒天や海難からの避難や海難事故による一時的乗り上げではなく、外国の船舶が不開港場である同島に上陸させる目的をもって旅客を降ろしたものであり、そのことが同法に抵触するものであると認識しているが、何故、同法第三条が適用されなかったのか、論理的に明らかにされたい。

五 今回の不法上陸事案に関して、政府が、出入国管理及び難民認定法第六十五条の適用により、これら被疑者の強制送還措置を優先すべく、前述の領海等における外国船舶の航行に関する法律、船舶法等の法令をあえて適用しなかったと認識せざるを得ない。今回の対応が、同海域における外国船舶及び同乗組員による不法行為への抑止力低下につながることを懸念しているが、政府の見解如何。

  右質問する。