質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇〇号

オスプレイの訓練、米軍航法ルート等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年七月二十日

井上 哲士   


       参議院議長 平田 健二 殿



   オスプレイの訓練、米軍航法ルート等に関する質問主意書

 これまで数々の事故を起こし安全性に重大な問題を抱えたオスプレイの配備について、これを拒否している沖縄県はもとより、全国で配備への反対が広がっている。国会質疑においては、オートローテーション機能の不全等の危険性や、意図的というほかない日米両政府による事故率の過小評価の欺瞞性が明らかになった。米国においても、元米軍の専門家からも危険性が指摘され、日本政府が国会で繰り返し説明した「人為的ミスによる」との米国政府の事故調査結果までもが、軍の圧力により歪められたものではないかという疑惑が指摘されている。配備への反対が広がり、問題点が次々と浮上する状況にありながら、それでもなお、配備を諦めずどこまでも強行しようとする日米両政府に対する国民の不信は、日を追って急速に高まっている。
 他方、米軍機の訓練飛行ルートについて、国会内外で米軍の資料等に基づき、その存在が指摘されながらも、日本政府はその存在を一貫して正面から認めず、国民に説明しようとしてこなかったが、今回オスプレイの配備を迫る米側から公表されるという事態が生じた。米軍機の訓練飛行による爆音等の被害に苦しむ地域住民及び主権者たる国民に対して、従前から日米両政府がとってきた不誠実極まりない態度とともに、今なお爆音被害を許している日本政府の無責任が改めて厳しく問われている。
 以下、具体的に質問する。

一 米国による環境レビュー公表の経緯について

 防衛省は米国が作成した「MV22の普天間飛行場配備及び日本での運用に関する環境レビュー最終版」(以下「環境レビュー」という。)の原文を沖縄防衛局ウェブサイトで公表するとともに、その仮訳の作成・配布を行ってきている。環境レビューの原文は、いつ、米側の誰から、防衛省の誰に対して提供され、説明されたのか。提供から、仮訳の作成、公表までの経緯を詳細に示されたい。

二 米軍航法ルートについて

1 環境レビューは、オスプレイが航法訓練を行う経路として、「ピンク」、「パープル」、「ブルー」、「グリーン」、「イエロー」及び「オレンジ」の六つのルートを図説している。これらは米軍の「既存のルート」であると説明されているが、米軍が公表したのは今回が初めてではないか。日本政府は米軍の航法ルートがいつから存在し、いかなる目的で設定されたものであると承知しているか。また、米軍のいかなる機関がいかなる規定に基づいて、これらのルートを定めたのか。それぞれについて、政府の承知するところを具体的に明らかにされたい。
2 上空に前記1の各ルートが設定されている全国の市町村名をすべて示されたい。
3 防衛省は上空に各ルートが設定されている各市町村に対して、環境レビューを提供して説明を行う考えはないか。そのような予定がないとすれば、その理由を示されたい。
4 前記1の各ルートの下に、航空法令上の人口密集地(人又は家屋の密集している地域)はあるか。人口密集地があれば、具体的に示されたい。
5 前記1の各ルートはそれぞれ米軍のどの組織に所属する航空機の使用のために設定されたものであるか。各ルートを使用する各航空機の軍種及び在日米軍基地所属機・外来機の別について、政府の承知するところを具体的に明らかにされたい。
6 米軍機が前記1の各ルートを使用した実績について、政府の把握するところを具体的に明らかにされたい。
7 前記1の六つのルートと並んで中国地方上空の「ブラウン・ルート」の存在は、過去に米軍資料に基づいて明らかにされているところであるが、環境レビューには図説されていない。「ブラウン・ルート」が図説されなかった理由について、日本政府はどのように承知しているか。
8 一九九八年二月二十五日の衆議院予算委員会において、高野紀元外務省北米局長(当時)は、米軍の飛行訓練ルートについて「明らかにできない」と述べ、公開しないのが米側の方針であるかとの問いに対して、「そのとおりでございます」と説明した。ところが、今回、米国政府はこの従来の日本政府の説明に反して、環境レビューを通じて前記1のルートの存在を明らかにした。これらの公表は米側の方針の変更によるものか。いかなる理由から公表が行われたものであるか、政府の承知するところを説明されたい。また、日本政府は、従前から前記1のルートの存在を知っていたが、米軍が同意しない限り、明らかにできないという立場であったのか。改めて政府の見解を示されたい。
9 前記8の北米局長答弁では、「飛行訓練を行う際のルートにつきましては、米軍は、その地形、飛行の安全の確認等を考えながら随時決定しているというふうに承知しております」としている。米軍が航法ルートを修正した場合、日本政府に通知はあるのか。通知があるとすれば、米側のどの機関から日本政府のどの機関に対して通知されるのか。さらに、過去に何度通知されたことがあったか、事実関係を示されたい。

三 米軍機が尊重する飛行高度制限の妥当性について

 民間の取材用ヘリコプター等の飛行を想定して設定された航空法令上の最低安全高度の制限があるが、米軍の戦闘機等の軍用固定翼機の訓練飛行によって生じる爆音被害を防止する観点からは、この制限では不十分ではないか。より実効性のある規制が求められると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 米軍機による自衛隊訓練空域の使用について

1 全国に設定されている自衛隊の訓練空域のうち、群馬県、広島県、山口県、島根県等の上空に設定されている訓練空域では、使用統制機関たる自衛隊基地が調整を行った上で、米軍機が空域を使用し訓練が行われている。日本政府は、今後、オスプレイについても他の米軍機の場合と同様に自衛隊の訓練空域を使用した訓練を認める方針であるか。政府の見解を示されたい。
2 二〇一〇年四月八日及び五月二十日の参議院外交防衛委員会における長島昭久防衛大臣政務官(当時)及び前田隆平国土交通省航空局長(当時)の答弁を踏まえれば、米軍機が自衛隊の訓練空域を使用する場合、空域の使用統制機関である自衛隊基地が事前の調整を行うことから、防衛省は米軍機が空域の使用を希望する日時の予定を予め把握できる立場にある。群馬県では公立高校入学試験の日に訓練が行われ爆音被害が発生するなど、地域住民の生活に看過できない多大な被害を及ぼしてきているが、自治体からの要請があった場合などに、日本政府が特定の日時における米軍機の空域使用を調整の段階で認めないことは十分可能ではないのか。政府の見解を示されたい。
3 少なくとも、予め把握した日時の情報に基づいて、日本政府は当該空域が設定されている関係地方自治体に対して訓練前の事前通報を行う考えはないか。

五 オスプレイの防御戦闘演習及び低空戦術について

1 環境レビューは、オスプレイが行う訓練活動の一つに「防御戦闘演習」(DCM)を挙げている。二〇一〇年三月十日付の米海兵隊文書「MV22B訓練及び即応マニュアル」(NAVMC3500.11B)によれば、当該戦闘演習は固定翼機を相手とした戦闘を想定して行う演習であり、大変危険なものではないかと危惧されるが、日本のどこで行う予定であるのか。とりわけ米軍の基地及び訓練場の上空以外の場所でも行う可能性を含めて、政府の承知するところを具体的に示されたい。また、政府はその危険性についてどのように認識しているか。
2 同様に環境レビューにおいて訓練項目に挙げられる「低空戦術」(LAT)は、日本のどこで行う予定であるのか。とりわけ本土の航法ルートにおける実施の可能性を含めて、政府の承知するところを具体的に示されたい。
3 前記1の米海兵隊文書によれば、防御戦闘演習時の最低高度は、オスプレイが地上二百フィート(約六十メートル)、固定翼機が五百フィート(約百五十二メートル)と定められている。約六十メートルといえば、日本の航空法令上において人口密集地域以外の地域の上空の制限高度である百五十メートルを大きく下回る高度である。
 さらに、「低空戦術」(LAT)とは、二〇一一年八月二十三日付の米海兵隊文書「航法訓練及び即応プログラムマニュアル」(NAVMC3500.14C)によれば「地形回避の技能の向上を目的として、地上五百フィート(約百五十二メートル)を下回る高度で飛行することを意図するもの」とされており、初めからほとんど日本における制限高度を下回る低高度での飛行を行うものである。
 一九九九年一月の日米合同委員会合意では、米軍機は日本の航空法令の制限高度と同一の基準を適用するとしている。実際に高度に違反した個別の飛行事案が確認されたかどうかにかかわらず、米軍が前記のような低高度の飛行を行うことを規定する内規に基づいて日本において訓練を行うことは、それ自体が当該合意の趣旨に反する行為ではないか。政府の見解とその理由も併せて示されたい。

六 日米合同委員会で協議するとの防衛相の意向について

 七月十九日の時事通信の報道によれば、森本防衛大臣は同日のテレビ番組で、オスプレイの運用に関し、「どういう飛行の安全管理をするかを改めて日米合同委員会で協議し、確認したい」と述べたとされる。これまで特定の米軍機の飛行の安全管理のあり方について、合同委員会で協議・確認を行ったことはあったのか。あるいは、オスプレイが初めてか。

七 オスプレイの広報用パンフレットの作成について

 防衛省はオスプレイの配備と「安全性」を広報するパンフレット「MV22オスプレイ-米海兵隊の最新鋭の航空機-」を作成し配布しているが、その発行部数及び作成に要した経費の総額を明らかにされたい。

  右質問する。