質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一八六号

障害基礎年金及び障害厚生年金の周知広報の在り方及び実態に即した弾力的な認定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年七月十日

浜田 昌良   


       参議院議長 平田 健二 殿



   障害基礎年金及び障害厚生年金の周知広報の在り方及び実態に即した弾力的な認定に関する質問主意書

 我が国における公的年金制度においては、国民の安心を支えるために、老齢年金制度、遺族年金制度の他に障害年金制度が用意されている。障害年金制度は、予見できない疾病やけがにより障害を負ったことで、それまでと同様の生活が送れなくなった者に対し、一定の年金を支給し生活を支えるセーフティネット機能を有する制度である。
 しかしながら、政府が本年六月八日に閣議決定し国会に提出した「平成二十三年度障害者施策の概況」によれば、年金等の受給状況について、「在宅の身体障害者(十八歳以上)では、公的年金の受給者が六十七・七パーセント、公的手当の受給者が十六・六パーセントとなっている。在宅の知的障害者(二十歳以上)では、年金又は手当の受給者が七十四・九パーセントを占めている。外来の精神障害者では、障害年金の受給者二十五・七パーセント、障害年金以外の年金の受給者十一・二パーセント、公的手当の受給者二・一パーセントとなっているが、統合失調症では四割の者が障害年金を受給している」と記述されている(同書三十九頁)。このことから身体障害者及び知的障害者と精神障害者の間では、障害年金の受給状況に格差が生じていることが窺われる。また、このような障害年金の受給率の背景には、制度の存在や手続を知らない等の事情により、あるいは、受給要件を満たすための書類が揃わないために、申請が適切になされず、結果として本来受給できるはずの年金を受給できない事例が多数存在していると指摘されている。
 私宛てにも、うつ病のために家に引きこもった際に、障害基礎年金及び障害厚生年金の制度を知らなかったことにより申請の機会を逸してしまったことに関する相談や、二十歳前障害による障害基礎年金の請求において、初診から長期間経過しているために初診日が確認できる書類を添付することができないとの相談など、切実な生活の窮状を訴える声が寄せられている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 障害基礎年金及び障害厚生年金は、国民年金法及び厚生年金保険法において、障害の原因となる疾病等の初診日から起算して一年六か月を経過した日(以下「障害認定日」という。)において、障害等級に該当する程度の障害の状態にある時に、支給することとされている。さらに、障害当事者は、申請に当たり、障害認定日から三か月以内に障害の状態にあることが確認できる診断書を取得しなければならない。
 しかしながら、心の病で引きこもった場合、障害認定日の段階で制度の存在や手続を知らない障害当事者が現実には多く存在しており、申請の道が途絶え、保険料を納めていたにもかかわらず制度を利用することができないといった結果も生じている。
 障害基礎年金及び障害厚生年金の制度を知らない障害当事者が現実には多く存在する実態を踏まえ、政府として制度の周知徹底に努めるべきであることは言うまでもないが、野田内閣はこれまでどのような取組を行ってきているのか具体的に示されたい。

二 初診日から一年六か月後に障害の程度を認定するという初診日要件などを含めた障害基礎年金及び障害厚生年金の制度の周知広報に当たっては、医療関連団体や各医療機関と連携して制度自体の認知度を高めるための取組を促進させることに加え、受給要件を満たす可能性の高い者に対して周知を図ることにより申請漏れが生じないようにするための取組なども必要であると考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。

三 平成二十三年十二月十六日付けの厚生労働省年金局事業管理課長通知(年管管発一二一六第三号)により、平成二十四年一月四日から、二十歳前障害による障害基礎年金の請求において、初診日が確認できる書類が添付できない場合について弾力的な運用が図られたところである。明らかに二十歳以前に発病し、医療機関で診療を受けていたことを複数の第三者が証明したものを添付できる時は、初診日を明らかにする書類として取り扱うこととされている。
 二十歳前障害における初診日の確認の困難性に鑑みれば、第三者の証言についてできるだけ幅広く証明力を認めることや、診察券や薬局で発行される薬袋、日記や家計簿、その他の医証によらない資料等についても初診日を明らかにするための証明資料として、請求者の実態に即して取り扱うべきであると考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。

  右質問する。