質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一八二号

北京常設展示館事業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年七月九日

山谷 えり子   


       参議院議長 平田 健二 殿



   北京常設展示館事業に関する質問主意書

 平成二十四年五月三十一日、警視庁公安部は外国人登録法違反などの容疑で在日中国大使館の李春光元書記官を書類送検した。李元書記官は、鹿野農水大臣(当時)や筒井農水副大臣(当時)らと、日本の農産物の対中輸出促進事業計画を進めていたことが明らかになっている。現在、農水省内に「展示館事業に係る論点調査チーム」と「機密保持に関する調査チーム」が発足し、調査を進めているところと承知している。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 本件に関しては、農林水産省の機密文書が外部に流出した可能性が疑われ、現在、省内に「展示館事業に係る論点調査チーム」と「機密保持に関する調査チーム」が発足し、内部調査を進めているところと承知しているが、そもそも当時の大臣や副大臣など政務三役が関与している件につき、省内だけの調査チームで真相究明ができるのか甚だ疑問である。第三者によって構成される調査チームでの真相究明が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

二 本年二月二十四日付、李元書記官名で農林水産大臣宛てに「中国農発食品有限公司は、高端農産品展示会に出品される米及び粉ミルクの受け入れについて中国農発食品有限公司が北京海関、北京検疫と協議し、了解を得ており、責任をもって受け入れますのでお送りください」という内容の確認書が発信されていたことが明らかとなっている。本来、相手国には大使名で外務省宛てに発信するのが正式のプロトコールと考えるが、過去に書記官が我が国の各省の大臣宛てに、直接、手紙を出した例はあるか。

三 「機密保持に関する調査チーム」による「機密保持に関する調査結果(中間報告)の概要」によると、外部に流出した「機密性三」の四点の資料のうち、「米の需給見通しについて」の資料は、鹿野前大臣説明用と筒井前副大臣説明用の二種類が存在し、外部に提供された資料は筒井前副大臣説明用資料だったことが明らかとなっている。そして、本資料の配布を受けた筒井前副大臣及び作成者を含む六名の職員は、外部へは提供していないと回答しているとされる。また、同様に一般社団法人農林水産物等中国輸出促進協議会(平成二十三年七月十一日設立)の代表理事は公電の写しを受け取ったことを認めているが、誰からもらったのか覚えていないとの回答をしている。
 本件の経緯に鑑みれば、流出の事実が判明している以上、警察に告発すべきと考えるが、農林水産省はなぜ告発をしないのか。
 また、情報流出は国家の威信に関わる問題である。最終的に関係者のヒアリングを終え、提供の事実が確認されなかった場合の政府の今後の対応方針を示されたい。

四 前記三における「米の需給見通しについて」の資料内容は、作成当時は国家公務員法第百条第一項の「秘密」に該当していた可能性があり、外部への提供が「国家公務員法第百条第一項に違反するかどうか検討に値する」と岩本農水副大臣は発言しているが、今後の検討について政府の見解を示されたい。

五 李元書記官との面識等につき、前記三の中間報告によると、鹿野前大臣が出席した五回の会合及び筒井前副大臣が出席した七回の会合に元書記官も出席したものの、一対一で面会したことはないとされる。他方、一部報道では、本年三月二日に千代田区内のホテルで鹿野前大臣と会食、筒井前副大臣も昨年一月には中国国有企業の代表の来日を元書記官らと空港に出迎え、一緒に新潟に視察に行ったこともあるとされる。「機密保持に関する調査チーム」は、この事実も把握しているのか。
 また、大臣や副大臣が対外的に面談するに当たり、リスクマネジメントの観点からも一対一というシチュエーションは現実離れしていることが容易に想像できるが、敢えて「一対一での面会」という限定的な項目で調査を行っている理由について、政府の見解を示されたい。

六 平成二十二年十二月九日、筒井前副大臣と中国農業発展集団総公司との間で覚書が締結された。過去に政府が一企業と覚書を締結した例はあるか示されたい。

七 農水省の「展示館事業に係る論点調査チーム」の中間報告によれば、「政府と企業が覚書を締結することは一般的ではないが、外務省からフレンドリー・アドバイスがあったこともあり、形式・内容両面から法的拘束力がないことを確認の上で覚書が締結されたことを確認」とある。この「フレンドリー・アドバイス」とは、どのようなことを指しているのか。また、一般的ではない政府と企業間の覚書が何故交わされたのか。

八 平成二十三年二月四日、鹿野前大臣は中国側から常設展示館の場所を確保するために必要と求められ、中国農業発展集団総公司に対して声明を書簡で出したというが、実質的に政府保証したことになると考えるが、政府の見解を示されたい。

九 平成二十三年十二月、協議会から農水省に対し、輸出倍増サポート事業の補助金(上限二千五百万円)の交付申請が行われたが、展示館がオープンしていないことから、補助金は交付されなかった。しかし、そのような中で同年十二月二十五日、野田首相は筒井前副大臣の要望で中国の展示館を視察している。補助金が交付されず、オープンもされていない展示館について、前日になって急にスケジュールを変更してまで視察日程に組み込んだことは異例であると考える。何故、野田首相は視察したのか。

十 農水省は展示館事業に関連し、協議会の設立に向け関係団体や都道府県に対する参加の働きかけや定款案等を作成し、さらに、昨年十二月二十五日に訪中した野田首相は筒井前副大臣からの強い要望により展示館を視察するなど、一民間団体に対する支援としては異例とも言える対応をしている。しかしながら、日本政府が本事業の債務負担を求められていることに関しては、政府は民間団体がやったことと説明しており、説明には矛盾があると考えるが、政府の見解を示されたい。

十一 本事業に関連し、都道府県知事宛てには鹿野前大臣署名の協議会への賛同を呼び掛ける文書を発信、一月二十八日開催の中国輸出促進会議終了後には筒井前副大臣名にて都道府県知事と関係企業社長宛てに参加意向伺いの文書を発信している。本事業に関し、農水省担当者が各種団体や企業に対して個別に説明を行ったと承知しているが、説明を行った団体・企業名を示されたい。また、民間団体の事業に際し、農水省が個別に訪問し説明をすることについて、政府の見解を示されたい。

十二 「展示館事業に係る論点調査チーム」による展示館事業の今後の在り方の検討について、中間報告では、「改めて中国農業部との連携を深め、その上で農林水産省が一定の役割を果たすことが重要であると考えられる」と記されているが、「一定の役割」とは具体的にどのような役割を想定しているのか。さらに、農水省が本事業を今後行っていくということか。その場合、参加する民間団体・企業の事業とも深く関連することから、政府が果たす役割を逸脱するおそれがないのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。