質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一五八号

日本航空に対する欠損金の繰越控除制度の適用等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月二十一日

三原 じゅん子   


       参議院議長 平田 健二 殿



   日本航空に対する欠損金の繰越控除制度の適用等に関する質問主意書

 日本航空(以下「日航」という。)は史上空前の一兆円近い債務超過に陥り、平成二十二年一月に会社更生法の適用を申請し経営破綻した。そして、企業再生支援機構の支援を受けることとなり、約七千億円に上る公的資金の投入等による救済を受けた。日航は経営再建中であるが、五千二百億円の債権放棄やリストラなどの破綻効果もあり、初年度の二十二年度に千八百八十四億円、二十三年度には二千四十九億円もの営業利益を上げており、六月二十日に東証に株式上場の申請を行い、本年九月の再上場を目指していると承知している。
 こうした状況に鑑み、政府の見解及び取組に関し、以下質問する。

一 政府として、「日航が我が国のナショナルフラッグキャリアである」という認識はあるのか。

二 欠損金の繰越控除制度について、会社更生法の適用を受け、債権放棄を受けた上で、公的資金まで投入され、結果として二年連続過去最高益を計上している日航のような企業まで、その適用対象として想定していたのか。消費税増税が検討されている状況にあって、こうした企業に多額の免税をすることについて、国民に対しどのように説明するのか、政府の見解を示されたい。

三 平成二十二年四月二十一日の衆議院国土交通委員会で複数の委員より、日航に対する政府支援により航空産業の競争環境が歪められる恐れがあるのではないかとの懸念が示された。これに対し、前原誠司国土交通大臣(当時)は「公的資金を入れられたところが有利な環境に置かれることがいかがなものかという問題意識は持ち続けている。」、「公平性が失われることがあってはならない、何らかの措置を考えないといけない問題」、「それぞれの会社が適正な規模の中で、適正な路線規模を確保した上で、競争することが望ましい」旨を答弁している。また、竹島一彦公正取引委員会委員長は「EUが導入しているような基本的考え方(EUにおける公的支援ガイドライン)は日本においても採用されることが望ましい。」旨を答弁し、単に助成するというのではなく、そのマーケットにおいて公正な競争環境を歪めることがあってはならないという趣旨の見解を示している。
1 破綻して公的資金を投入された航空会社が新規路線の開設、新事業への進出など、積極的な事業展開を行い得ることは、公正な競争環境とは言えないのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 具体的に今回の日航のケースで言えば、前記の大臣答弁等にも関わらず、これまでの政府の対応は、国土交通省が航空局長通達により不当廉売の規制を行う程度にとどまっており、当該規制も再上場後には取り下げられるものと承知している。こうした中、日航が地方路線を切り捨てる一方で、公的資金により新規路線を続々開設し、また、ジェットスタージャパンなど海外の航空会社との資本提携による全く新規のLCC事業に対する出資を行うなど、積極的な事業展開を行っている点について、国益の観点からその正当性に対する政府の見解を明らかにされたい。

四 企業再生支援機構は、日航に対する支援を行うに当たり、旧産業再生機構のように業界再編の観点から、同業他社に対して一部事業の売却等を検討しなかったのか、政府の承知するところを示されたい。そもそも検討をしなかったのであればその理由を、また、検討したのであれば、最終的に実施しないという判断に至った理由について、政府の承知するところを示されたい。

五 日航の財務状況に関して、平成二十二年度に新たに生じた欠損金九千億円の詳細な内訳について、政府の承知するところを示されたい。

六 現在の日航の株主構成、具体的には株主名と各株主の持ち株数を具体的かつ網羅的に示されたい。

  右質問する。