質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一五五号

違法伐採対策の推進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月二十日

加藤 修一   


       参議院議長 平田 健二 殿



   違法伐採対策の推進に関する質問主意書

 本年、六月にはブラジルにおいて、リオ・プラス20が開催される。その重要なテーマは、グリーン経済と持続可能な地球社会の構築であり、また、GDPを補完する幸福度指標についても議論の対象となる。幸福という言葉が議題に直接的に表示されたことは、画期的である。アジェンダ21が宣言されてから二十年が経過しているが、発展途上国においては人口増加、先進国においては過剰消費が進展している。先進国と途上国間における調整は厳しく、大きな問題である。依然として、この人口増加や過剰消費の問題は、主流であり続けている。結果として、地球環境に過大な負荷がかかり、生物多様性の現実は深刻化している。
 途上国の森林・林業の分野においても、同様の状況が進んでいる。特に、林業における違法行為に基づく乱開発は、土壌を剥き出しにし、土壌中のメタンや炭素成分の大気中への拡散は、膨大であることから、地球温暖化への影響などが指摘されている。林業の持続可能な開発のあり方が求められているが、現実は厳しく、広範な影響をもたらすものと認識している。その中でも違法伐採と違法な木材の流通は、世界の持続可能な森林経営を阻害する重大な問題と認識している。日本は世界有数の森林国でありながら、七割以上の木材を輸入に依存している木材輸入大国である。熱帯雨林の違法伐採と違法な木材の流通問題を抱えている途上国から日本に来た留学生は、日本の国土の豊かな森林を目の当たりにして大きな矛盾を抱いている。すなわち、豊かな森林を持つ国・日本が、何故木材輸入国であり続けるのかとの指摘がある。
 平成十七年のグレンイーグルズ・サミットにおいて、日本を始めとする木材消費国は違法伐採問題に取り組む国際的な約束をした。その翌年に、日本ではグリーン購入法の改正により、政府調達において木材の合法性及び持続可能性を確認する措置を導入した。これは世界に先駆けた動きであった。しかしながら、日本における木材の主要な消費は、民間セクターによるものである。違法に伐採された木材に関する民間事業者への規制的な措置は効果を上げているとは言えない。法的な規制はこれまで存在せず、我が国政府は企業の自主的な取組を推奨しているに過ぎない。
 また、日本の政府調達における合法性証明においても、相手国の証明に頼っているが、生産国は木材を売りたいという前提があり、国によってはガバナンスが弱いという問題や、伐採地周辺の住民と政府・企業が対立していることもある。
 具体的には、合法性が証明されているとするマレーシア・サラワク州では、森林に依存する先住民族など人々の土地に関する権利が、政府が森林開発の許可を判断する際に尊重されていないことが、現地NGO等より報告されている。先住民族の土地に関する権利の侵害に基づく森林伐採に対して、マレーシア最高裁で違法の判決が出ている。この例では、これまで「合法」だった輸入木材が、実は「違法」だったということになる。このように合法性の証明を相手国に頼っているとその信頼性が低くなる場合もあり、国際的な信頼性の維持も含めて日本側で何らかの対策をとることが喫緊の課題である。
 近年、米国、EU等では民間セクターを含む違法な木材流通に対する法的な規制をとり始め、木材取引業者がリスク評価を行い、対処を行うことを法的に義務付けている。他の先進国での取組が進むことによって、規制のない日本が、違法伐採木材の受入国になる可能性が高まるとも考えられる。そのようなリスクを避けるために、日本でも民間を含め、違法伐採木材の流通を規制する法的措置を講じる必要性があるとの視点から、以下質問する。

一 グリーン購入法の成果について
1 政府によると、違法に伐採された木材は使用しないことになっているが、グリーン購入法での対策では不十分との指摘がある。グリーン購入法の「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」に基づく具体的な成果を明らかにされたい。また、日本市場における合法性の確認された木材の流通量は、グリーン購入法によりどの程度、増加したと言えるか、各品目の数量と合法性証明を得ているとされる材積の市場全体に占める割合、それぞれの変化の動向について見解を示されたい。
2 日本の政府調達は、実際に合法性証明を求めているのか、どのような現実的対応をとっているのか、明らかにされたい。また、合法性証明が不十分な場合、調達しないことになっているのかを明らかにされたい。さらに、政府調達量全体において、合法性証明の要求と確認ができている割合と、各省庁の製品別・国別の実績を示されたい。

二 合法性の証明について
1 林野庁は、木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のために、ガイドラインにおいて証明方法を示している。同ガイドラインのうち、「二.業界団体による自主的行動規範に基づく事業者認定による方法」と「三.個別企業による自主的な証明方法」においては合法性を構成する要件が極めて重要である。合法性の要件をより明確にすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 生産国から出される合法性証明の書類として、輸出手続きに関する書類や、JAS認定書、加工業者が有する森林認証・CoC認証証書などが使われることもあるというが、これらは合法的に伐採された証明と言えるのか、政府の見解を示されたい。
3 包括的な合法性証明制度のない国においては、どのように合法性を確認するのか、合法証明に使われる書類とは、どのようなものがあるのか、すべて明らかにして各国ごとの実績を示されたい。

三 合法木材の輸入企業への税制上の優遇措置について
 合法木材の調達ルートの確認には、企業の労力と時間の負担がかかる。違法伐採対策をとっている企業が不利を被る一方で、対策に取り組まない企業がコスト面で有利になる状況は一種のモラルハザードである。これを改善するために民間セクターへの法的規制の拡大は必要と考えるが、政府の見解を示されたい。また、合法木材の輸入企業にメリットを働かせるため、税制上の優遇措置を検討すべきと考えるが、併せて政府の見解を示されたい。

四 合法性の確認対象について
 日本のグリーン購入法において合法性の確認は「伐採にあたっての森林に関連する法令」が対象となっている。例えば、木材流通における税金・ロイヤルティの支払、また、森林の開発・伐採の許認可手続きにおける先住民族や地域住民の森林・土地利用の権利を尊重すること等は、確認の対象となり得るのか、政府の見解を明らかにされたい。

五 証明書による合法確認について
 日本の現状の合法性確認制度の実施の実態は、生産国からの何らかの証明書があればすべて合法という位置付けになっているとの指摘もある。その結果、日本が違法木材あるいは違法の可能性の高い木材の受入国になる可能性があると考えられるが、政府の見解を示されたい。

六 民間部門の違法木材の流通に対する法的規制について
 政府調達にのみ限定され民間調達には適用されていない日本のグリーン購入法に対して、民間部門も含めて違法木材を規制するEUや米国の法律は、取引業者がリスク評価を行い違法な取引には罰則が科せられる。日本のグリーン購入法にはそのような規定はなく参考にすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。