質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一五三号

薬害HIV感染患者及び医療機関にとって高額な血液製剤の使用に際し不安の無い医療環境の整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月二十日

秋野 公造   


       参議院議長 平田 健二 殿



   薬害HIV感染患者及び医療機関にとって高額な血液製剤の使用に際し不安の無い医療環境の整備に関する質問主意書

 薬害HIV訴訟は一九九六年三月に和解が成立した結果、これまで国・医療機関・患者の三者協議に基づいて医療提供体制の整備等が強化されてきたところであり、それらは、がんや肝炎等の医療提供体制整備のモデルとなっている。
 一方、HIV感染から約三十年、和解から十六年を経る中で、薬害HIV感染患者は、リポジストロフィー、C型肝炎ウイルスの重複感染による肝硬変等のアナログ製剤の長期服用による影響や合併症といった長期療養上の問題に直面し、国は今後も薬害HIV感染患者に新しく生ずる問題に対して真摯に取り組み続けていくことが求められている。
 また、薬害HIV感染患者は血友病を背景としていることから、通常は、凝固因子の補充療法が標準治療として行われている。しかしながら、例えば手術時には高額かつ大量の血液製剤の使用が更に必要となる場合もあり、医療機関にとっては一時的とはいえ高額の負担が生じる。また、特に国の研究班若しくは医学会等が定めたガイドラインが十分に周知されていない場合、又は、ガイドラインに示されていない場合の血液製剤等の使用の妥当性については、各都道府県の社会保険診療報酬支払基金支部との間で考え方の相違が生じうることから、医療機関には高額の査定を受けるリスクが常に生じている。
 よって、国はその相違を埋めるべくガイドラインの周知を行うとともに、必要な治療の標準治療についてガイドラインを定める責任がある。なかでも、インヒビターを保有している患者の場合は標準治療として行われている凝固因子の補充療法の効果は大きく減衰するため、止血のための治療は、即、患者の生死にかかわる治療となる。そのため、医療機関にとっては、数少ない種類の薬剤を用いて出血凝固のコントロールを行いながら、極めて高度な医療手技が求められる状況にあり、国は新薬の承認や治験薬の動向も踏まえ、新しい治療法について最新かつ妥当な標準医療を掲載したガイドラインを更新しながら、医療機関や支払基金等の関係者に周知していくことが常に求められている。
 患者に不安を与えない医療を提供するためには、医療を提供する医療機関も不安とならないよう、都道府県の支払基金等とお互いに合意できる環境の醸成が必要である。そこで、以下質問する。

一 インヒビター保有血友病患者の出血凝固管理は極めて困難であり、国としてのガイドラインは定められていない。しかし、血栓止血学会による「インヒビター保有血友病患者に対する止血療法ガイドライン」が定期的に更新されていることから、エイズ治療拠点病院や自治体に対して周知を更に図り、インヒビター保有血友病患者の出血凝固のコントロールに対して医療機関と支払基金の間で合意できる環境の醸成に努めるべきではないかと思われるが、政府の見解如何。

二 インヒビターを保有する薬害HIV感染患者に対して、高度な医療を提供する医療機関に過大な負担をかけないようにする必要がある。例えば、インヒビターを保有している薬害HIV感染患者がガイドラインに基づいて、肝移植のような極めて高度な医療を受ける場合には、事前に医療機関が用いるガイドラインを支払基金に示すことにより、HIV感染後の課題に関連する標準医療について、医療機関と支払基金の間で合意できる環境の醸成に努めるよう国が働きかけるべきではないかと思われるが、政府の見解如何。

  右質問する。