質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一五一号

後発医薬品の利用促進のための環境整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月二十日

田村 智子   


       参議院議長 平田 健二 殿



   後発医薬品の利用促進のための環境整備に関する質問主意書

 医療費の財源確保や患者個人負担の軽減の観点から、有効性・安全性の確認された後発医薬品の利用拡大は必要な事である。
 政府も後発医薬品の利用拡大の方針を持ち、そのためこれまでの取組に加えて、本年四月の診療報酬改定で後発医薬品の利用促進のために処方せん料の一般名処方加算の新設や処方せん様式の変更などが行われた。一般名処方が急速に普及していると報道もされているが、準備が不十分だったこともあり、現場で若干の混乱や不安が生じており、政府の対策が求められる。
 また、後発医薬品の更なる品質向上とともに、国立医薬品食品衛生研究所(以下「国立衛研」という。)のジェネリック医薬品品質情報検討会で行っている独自試験等の後発医薬品の安全性・有効性の検証の取組を充実・拡充させるなど、国として医師を始めとする医療関係者、国民が安心して後発医薬品を使用できるようにするための環境整備を更に進める必要がある。
 この観点から、以下質問する。

一 診療報酬改定で医薬品を一般名で処方した場合に処方せん料に二点が上乗せされる一般名処方加算が導入された。この加算は後発医薬品がない先発医薬品は対象となっておらず、また、後発医薬品があるのに加算対象とならない医薬品があるなど、非常に複雑な制度となっている。さらに、厚生労働省が一般名処方マスタとして公表している医薬品は算定対象となる全ての医薬品を網羅しておらず、医療機関や薬局に様々な混乱と負担をもたらしている。
 この混乱に対して厚生労働省は、一九六七年以前に承認・薬価収載された医薬品のうち、価格差のある後発医薬品があるものについて「先発医薬品に準じたもの」として一般名処方加算の対象とするとともに、「先発医薬品に準じたもの」も含め、一般名処方の加算対象となる成分・規格を全て網羅した一般名処方マスタを早急に整備することを明らかにしているが、さらに一般名処方加算の対象とならない医薬品の一覧の整備も必要ではないか。

二 一部の後発医薬品は先発医薬品の効能効果の一部について承認を受けていないものがあり、先発医薬品の処方に対して患者の疾患に適応がない後発医薬品に変更調剤されたり、一般名処方した場合に患者の疾患に適応がない後発医薬品が調剤されたりした場合に、その薬剤に対する調剤報酬が査定・減額される可能性がある。一方、先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品を網羅的に検索できる仕組み等はなく保険医療機関及び保険薬局において先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品の情報を正確に把握することが困難である。そのことを考慮すれば、先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品が調剤された場合に、一律に査定を行うことは困難と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また、政府の見解を審査支払機関だけでなく、個別に保険者にも周知すべきではないか。

三 一部の先発医薬品と違う効能を持つ後発医薬品について、先発医薬品の追加効能に関する再審査が問題なく終了した場合において、速やかに後発医薬品への効能追加の承認申請が行われるべきと考えるが、政府としてどのような対応をしているのか。

四 二〇〇八年度から国立衛研に対して後発医薬品の品質を検討するための後発医薬品品質情報提供等推進費による事業(以下「推進事業」という。)の委託を行い、これを受けて、国立衛研はジェネリック医薬品品質情報検討会(以下「検討会」という。)を設けて、後発医薬品の品質について学術的観点から検討を行っている。また、検討会での検討を受けて、いくつかの後発医薬品については国立衛研等で純度試験・溶出試験等が行われ、一部の後発医薬品について先発薬との類似性に疑問がある、安定性に問題がある、不純物が多いなど品質に問題があるとの結果が検討会に報告されている。
1 厚生労働省が国立衛研に対して推進事業の委託を行った理由を明らかにされたい。後発医薬品の品質についての懸念も見られることから、普及促進のために品質の信頼性の向上を図るべきと考えたからではないのか。
2 国立衛研等の試験の結果報告は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)や国立衛研のホームページで公表されているが、これ以外に医師や薬剤師などに届けるためにメーカーや政府はどのような措置をとっているのか具体的に明らかにされたい。ホームページへの公表以外にメーカーへの指導など、政府が具体的な措置をとっていないのであれば、その理由を明らかにされたい。
3 後発医薬品普及のためにその品質に対する疑念を払拭することが必要である。そのためにホームページでの試験結果の報告書公表にとどまらず、推進事業による試験結果を医師や薬剤師等へ積極的に情報提供し、問題が指摘された医薬品については品質の改善を促すとともに、その事実を明らかにし、品質が改善された時には、その検証を行い医師や薬剤師などにその結果を情報提供すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 日本は後発医薬品の利用シェアを今年度中に数値ベースで三十パーセントにするという目標も掲げ、後発医薬品の利用促進を進めている。
1 二〇〇五年度以降に行われた後発医薬品の品質確保や品質を確認し情報提供する取組について、その事業名及び各年度の決算総額(または予算総額)を明らかにされたい。また、PMDAにおける二〇〇五年度以降の後発医薬品専任の承認審査部門の人員数及び全ての承認審査部門の人員数について、年度ごとに政府の承知するところを明らかにされたい。
2 米国では後発医薬品を安心して使えるように積極的な取組を行っている。具体的には、FDAの後発医薬品を専門に扱うジェネリック医薬品局に二百十五人の審査官を置き、さらに増員を進める方針であることが報道されている。また、年間数十億円の予算を使って後発医薬品の治療学的同等性を評価している。日本においては、審査管理部門に専任の担当者が置かれず、米国に比して品質確保等のために使われる予算も少ない。現在の取組は安心して後発品を使えるようにするためには不十分ではないか。後発医薬品の品質確保や品質を確認し情報提供するための予算を大幅増額し、後発医薬品の審査や安全管理のための人員増を進めるとともに、専門的知識を有する後発医薬品の審査や安全管理の専任の担当者を置くことも検討すべきではないか。
3 米国FDAは承認された個別の後発医薬品の治療学的同等性の評価を行い「治療学的同等性評価を受けた承認医薬品集」(通称:オレンジブック)を毎年発行し、また、月毎に追補を出している。具体的には、生物学的同等性について、既知あるいは疑わしい問題が無い、または、生物学的同等性に問題がある(若しくはその可能性がある)点に関して試験などによって問題が解消されているものを、治療学的に同等であると判断して「A」から始まる評価コードに分類し、逆に生物学的同等性に問題がある(若しくはその可能性がある)点に関して問題が解消されていないものを現時点で治療学的に同等でないと判断して「B」から始まる評価コードに分類をしている。また、この評価コードの変更についても手順を定め、生物学的同等性に疑問が生じた場合は速やかにコード変更をすることとしている。
 早急に日本においても、米国に倣って医師や薬剤師が後発医薬品を選択するために有用な情報を提供するために、薬事承認された後発医薬品について薬事法上適法か否かという評価とは別に、薬事承認申請時に提出された生物学的同等性の資料等や検討会に報告された試験結果、学会報告や発行された文献に基づいて、治療学的同等性を評価した承認医薬品のリストを作成すべきではないか。
4 政府は、「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」を進めているが、後発医薬品の品質の向上を図るとともに、前記の治療学的同等性を評価した承認医薬品のリストの作成など、積極的な情報提供によって、薬剤師や医師、国民などが安心して後発医薬品を使用できる環境作りを更に進めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

六 国民は先発医薬品、後発医薬品のいずれであっても安くて品質の良い医薬品を求めている。四月三日の参議院厚生労働委員会において、日本、アメリカ、ドイツ、イギリス及びフランスの薬価の比較を取り上げ、日本の薬価はアメリカを除くドイツ、イギリス及びフランスに比べて高いとする全国保険医団体連合会の薬価の国際比較調査について、小宮山洋子厚生労働大臣は、「近年保険収載された新薬につきましては、おおむね外国平均価格より安く、平均すると外国平均価格に比べ八割以下の価格となっています。ただ、これまでのものを合わせると御指摘のような状況になるのだと思います。」と調査結果を否定できなかった。後発医薬品の品質を向上させるとともに、国際的にも高い日本の薬価のあり方を見直すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。