質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一四一号

インプラントの治療トラブルの防止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月十一日

加藤 修一   


       参議院議長 平田 健二 殿



   インプラントの治療トラブルの防止に関する質問主意書

 昨年末、国民生活センターの発表で、インプラント(人工歯根)治療により体調不良や身体的なトラブルを申し出た「危害」の苦情が過去五年間に三百四十三件も寄せられていたことが明らかになった。また、日本顎顔面インプラント学会の全国調査によると、インプラント治療によってあごや唇のしびれ、麻痺などの健康被害が生じ、そのため再治療を受けた事例が二〇一一年までの三年間に四百二十一件もあったことが明らかになった。最近の二つの調査結果を単純に比較すると事態は深刻化しているのではないかと思われる。
 私は一昨年十一月、「歯科医療に係るインプラント治療に関する質問主意書」(第百七十六回国会質問第一二〇号)において、全国実態調査を実施すべき点や医師教育の必要性などについて指摘しているが、依然としてトラブルは続いている。厚生労働省は本年二月末、都道府県の医政関係課長会議において国民生活センターの資料を示し「歯科医療の安全に努めてほしい」と要請したが、要請にとどまらず国民の健康に関わることから抜本的な改善策を考えるべきであり、政府の役割を明確に示すべきである。
 インプラント治療は、一部を除き自由診療である。治療費は健康保険が適用されないことから、国民生活センターの調査によれば、被害相談者の治療費は平均百二十万円に達している。またインターネット上では「一本二十万円から」などと示されており、広告まがいの歯科医院のホームページがあふれている。医師の説明や手術後の対応が不十分と感じている消費者も多いとされており、群馬県下においてもその声は少なくない。
 これらの環境下で、調査会社の推定では歯科治療の約二割に相当する年間約六十万本もの治療が行われているとされる。高齢化社会の進行に伴いインプラント治療の普及が進むものと考えられるが、トラブルを未然に防ぐことが必要である。以下質問する。

一 インプラント治療による身体的な危害の事例、治療金額、医師による治療の内容やリスクについての説明の有無などについて、総合的な全国調査により実態を把握すべきである。政府の取組方針を明らかにされたい。

二 国民生活センターから歯科医師会及び関係学会に対して、「消費者が治療の過程で危害等を受けた場合に適切なアドバイスを得られるような相談窓口を拡充するよう」要望が寄せられている。政府は相談窓口の有無等に関する実態調査を行うとともに、歯科医師会及び関係学会等への指導を行うべきと考えるが、政府の取組方針を示されたい。

三 インプラント治療に係る様々な医療トラブルを防止するためには、インプラント治療についての基準や治療のプロセス全体を網羅するような国のガイドラインが不可欠と考えるが、その作成について、政府の見解を示されたい。

四 「歯科医療機関や歯科医師によって治療技術に差がある」と指摘する声があるが、インプラント治療の教育体制の遅れの認識と改善策について、政府の見解を示されたい。

五 厚生労働省の通知である「広告が可能な医師等の専門性に関する資格名等について」においては、歯科医師については歯周病専門医など五種類の資格が認められている。インプラント治療の専門医についても次の六にあるように資格として認めるべきであると考えるが、なぜ追加されないのか。政府の見解を示されたい。

六 インプラント治療医師の認証制度としては、公益社団法人日本口腔インプラント学会(JSOI)や社団法人日本顎顔面インプラント学会の自主基準による資格のほか、国際口腔インプラント学会(ICOI)やドイツ国際インプラント学会(DGZI-J)などの資格があり、これらを取得する医師がいる。これらの国際的な認証制度について、いかなる評価、位置付けを考えているのか政府の見解を示されたい。

七 一部の歯科医療機関のホームページにおけるインプラント治療に関する不適切な表現の広告に対して、監視や指導を徹底すべきと考えるが、政府の今後の具体的な取組方針を示されたい。

  右質問する。