質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一三四号

原木シイタケの復興対策の促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月六日

加藤 修一   


       参議院議長 平田 健二 殿



   原木シイタケの復興対策の促進に関する質問主意書

 東京電力福島原子力発電所事故から一年以上が経過したにもかかわらず、群馬県を含む東日本のシイタケ生産者は、復旧どころか、風評被害、販売不振などの実害によって経営が不安定化し、混乱に拍車がかかっている。
 食品に含まれる放射性セシウムの新基準値の適用が四月一日から始まった。ところが、シイタケ販売の前線では、スーパーなど一部の販売・流通業者が国の安全基準より低い値で独自基準を設定し、一方的に生産者との取引を停止又は休止したため、生産者が苦境に立たされている。他方で、出荷制限を実施したことのある群馬、栃木、茨城、東京、福島など東日本十七都県の生産者は、販売不振の不安を抱えつつ間断なく除染・検査対策の徹底を迫られ、売上げの減少や対策費用の累積による経営への圧迫も進んでいる。しかし、今後廃業に追い込まれる生産者が激増するとの生産現場の訴えを深刻に受け止める政府の姿勢は見えない。
 東京電力による被害賠償については、これから説明を聞く段階の生産者が多数存在するとも言われる一方で、先行する生産者の中には案件の審査や支払が大幅に遅滞し、割高になった原木購入費などの資金繰りに苦労する事例が多い実態も浮き彫りになっている。
 全国の半数近くを占める東日本のシイタケ生産者の復旧・復興対策について、右の観点から以下質問する。

一 除染・検査などへの政府の支援策について

1 原木の除染や検査のために計測・評価機器が生産現場に整備され、少なくとも新基準値以下の線量になっていなければ、安全なシイタケとして出荷できない。しかし、きのこ原木やホダ木の洗浄機械、簡易ハウスなどの放射性物質の防除施設及び検査機器等の導入を支援する平成二十四年度予算の特用林産施設等体制整備事業に関して、執行が遅れているとの指摘がある。その理由を明らかにされたい。
2 同事業の助成を受けるには、五人以上が加入する組合による申請が要件となっている。このように補助金による支援策は、事あるごとに組合要件が求められる。しかし、今回の原発事故は国策としての国の責任が大きい。安全な食品を提供してもらうためには、悲嘆に暮れる生産者の要望に率直に対応すべきである。生産者が少ない地域での要件を緩和し、一人生産者の申請も可能とすべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 一部の流通・販売業者による出荷打切り等への対策について

 独自基準を設定した流通・販売業者が国の基準とは関係なく一方的に出荷を打ち切る等の行為は、基準を順守しようとする懸命な生産者の努力を無にする結果になっている。政府は「過剰な規制と消費段階の混乱を避けるため」として新基準値の周知を求める通知を発出しているが、出荷打切り等が広がっていることを見れば周知は不十分である。シイタケ生産者に事前通告もなく何ら説明もない取引停止に対しては、アンケート等による実態調査を通じて有効な対策を打ち出すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 シイタケ生産者への賠償について

1 出荷制限を指示されているシイタケ生産地(市町村)の数と、このうち賠償交渉が未着手のシイタケ生産地(市町村)の数について、政府の承知するところを明らかにされたい。
2 生産しても、一部の販売・流通業者の独自規制によって出荷できない状況となる被害についても賠償の対象にするべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
3 シイタケの観光及び体験農園等における風評被害による逸失利益も賠償の対象とすべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
4 ホダ木の損害など賠償の申請には煩雑な計算や手続が求められることから、生産者に対する丁寧なアドバイス等が必要である。公的に支援すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 原木の供給対策について

1 廃棄される原木の補給体制が整わないまま、大幅に厳格化された原木の新指標値が決定された。このため、被災した生産者は全国の原木産地に殺到し、価格が急騰している。直近の原木の価格と、その対平年比について明らかにされたい。
2 原木産地は限られていることから、来年度以降の増産対策及び原木の購入支援策を講じることが必要であると考えるが、政府の方針を明らかにされたい。
3 原木の新指標値については、決定にあたってサンプル数が少ないなど科学的根拠に乏しいとの指摘がある。適切な調査に基づき新指標値を見直すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。