質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一二一号

いわゆる「脱法ハーブ」についての早急な規制強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年五月二十二日

浜田 昌良   


       参議院議長 平田 健二 殿



   いわゆる「脱法ハーブ」についての早急な規制強化に関する質問主意書

 近年、お香やハーブとして販売されたものを吸引することによる事故が多発しており、本年四月二十四日付け毎日新聞によれば、今年に入って東京都内で少なくとも七十七人が体調不良を訴えて病院に搬送されたほか、二月には名古屋市で二十四歳の男性が、また、四月には横浜市で二十六歳の男性が急死している。
 このようないわゆる「脱法ハーブ」など、覚醒剤・大麻に化学構造を似せて作られた物質が添加され、多幸感を得ることを目的として若年者の間で乱用が拡大し始めている脱法ドラッグの販売実態について、厚生労働省が調査したところ、本年三月末時点で、二十九都道府県で三百八十九業者が存在することが明らかとなった。
 「脱法ハーブ」は禁止薬物の「ゲートウェイ」とも言われており、このような状況を放置することは、若年者の健全な育成を阻害するのみならず、暴力団などの新たな資金源ともされており、看過できるものではない。
 東京都が平成十七年に「東京都薬物の濫用防止に関する条例」(以下「脱法ドラッグ条例」という。)を制定したことを受けて、厚生労働省は平成十八年に薬事法を改正し、興奮、抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害を発生するおそれがあるものであって、麻薬取締法等で規制されていないものを指定薬物として規制する仕組みが導入されている。しかしながら、近年の「脱法ハーブ」をめぐる状況から、早急に更なる規制強化を求める声が国民の間に拡がっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 現在、六十八の指定薬物が指定されているが、近年、化学構造を少し変化させて法規制をすり抜ける事案が出てきていることに鑑み、一定の官能基があるものなどを早急に包括指定することが必要とされているが、政府におけるその検討状況及び実施の見通しを明らかにされたい。

二 指定薬物に対しては、現在では、麻薬取締官による取締りの対象外とされており、また、その疑いがある物品を発見した場合に収去ができる法整備がなされていない。薬事法の改正により、このような法整備を早急に行う必要があるが、厚生労働省は他の改正内容と併せて薬事法改正を準備しており、本年三月七日、小宮山厚生労働大臣は衆議院厚生労働委員会において、現在の通常国会で薬事法改正は困難との答弁を行った。「脱法ドラッグ」に関しては一日も早い法整備が必要であることに国民の合意があることは明らかであることから、薬事法の当該部分のみに関する改正を行うことが急務であると考えるが、野田内閣として改正案を今国会に提出する方針があるか、明らかにされたい。

三 東京都の脱法ドラッグ条例においては、知事指定薬物の製造、販売、広告のみならず、みだりに使用することを禁止しているのに対し、薬事法においては、製造、輸入、販売、広告等は禁止されているものの、その使用は禁止されていない。一方、現在報道されている脱法ハーブの使用者はどう見ても故意犯と見受けられるところ、供給側の規制が「いたちごっこ」とならないためにも、なんらかの使用規制を行うべきと考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。

四 東京を始め、多くの地域で「脱法ハーブ」の吸引により病院に搬送された例が報告されているが、その場合の治療は健康保険法又は国民健康保険法の適用となるのか。これらの法律の支給制限の対象となる「自己の故意の犯罪行為」及び「著しい不行跡」の適用の実態を明らかされたい。特に、健康保険法のコンメンタールによれば、故意の犯罪行為には条例を含むとされているが、東京都の脱法ドラッグ条例違反で健康を害した場合には、健康保険法及び国民健康保険法の支給制限の対象となるという理解で良いか。総じて、故意による「脱法ハーブ」の吸引などへの健康保険法及び国民健康保険法の支給制限の適用の可否について明らかにされたい。

五 厚生年金保険法及び国民年金法の支給制限にも、「故意に保険事故を生じさせた者」、「自己の故意の犯罪による事故」などが挙げられているが、「脱法ハーブ」を故意に吸引したことにより障害が生じたり死亡した場合には支給制限に該当するのか。また、当該「故意の犯罪」の対象とするには、どの程度の罰則が必要か。さらに、刑罰が伴わなかったものに、「故意の犯罪」として支給制限が行われた例があるか、政府の把握している範囲で明らかにされたい。

六 若年者においては、興味本位や余りにも軽い気持ちで「脱法ハーブ」に手を染める者も少なくない。政府として、薬物教育の徹底を含め未然防止策についてどのように考えているのか、野田内閣の方針を明らかにされたい。

  右質問する。