質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第九一号

関西電力大飯原発三・四号機の再稼働に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年四月二十日

福島 みずほ   


       参議院議長 平田 健二 殿



   関西電力大飯原発三・四号機の再稼働に関する質問主意書

 四月十三日、政府は、関係閣僚会議において、関西電力大飯原発三・四号機を再稼動させることについて「必要性が存在する」と判断した。翌四月十四日には、経済産業大臣自ら福井県知事を訪問し、その再稼動を要請している。
 しかしながら、今なお政府及び国会が設置した原発事故調査委員会の最終報告は提出されておらず、東京電力福島原発事故の真の原因は未だ国民に明らかになっていない。加えて、政府の関係閣僚会議による判断は、わずか六回の会議で、情報公開も不十分な中で決定され、専門家や国民からの批判が噴出している。東京電力福島原発事故の反省の中で、いわゆる「原子力ムラ」といわれる政府、電力会社、研究者及びメーカーによって原子力「推進」に重きを置いた姿勢の中で閉鎖的な議論と判断がなされた結果、安全性が十分に確保されなかったことに対して厳しい批判が起きたことは記憶に新しい。にもかかわらず、今回の再稼動に関する政府の対応は、東京電力福島原発事故前と変わらず、安易な「安全基準」の設定、情報公開の不徹底等の状況下で拙速な判断が下された。
 まるで東京電力福島原発事故が起きなかったかのように、事故の教訓が活かされることなく、最優先にされるべき科学的安全性の確保を後回しにし、原発再稼動へと邁進する政府の姿勢に、国民は深い不信感と不安を抱いている。
 よって、以下質問する。

一 再稼働を判断する関係閣僚会議について

1 関係閣僚会議に参加した者は誰か。オブザーバーや官僚も含め、すべての氏名を明らかにされたい。
2 政府の判断を決する本関係閣僚会議に、政府以外の者が参加したか。参加したとすれば、それは誰か。政府の判断をする会議に政府以外のものが参加できる理由は何か。

二 再稼働を判断する関係閣僚会議に関する情報公開について

1 関係閣僚会議に提出された資料は、現在、すべて公開されているか。
2 関係閣僚会議は、すべて録音されているか。一部のみが録音されているなら、それは何回目の会議か、その対象を示されたい。
3 国民の生命に関わる重大な決定が、非公開の議論の下で決定されることには納得できない。よって、議事要旨ではなく議事録を作成すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。議事録を作成しないのであれば、その理由を示されたい。
4 関係閣僚会議の議事録は、その重要性に鑑み、再稼働に対する不安を抱く国民への説明責任を果たすために、作成後、直ちに公開すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。作成後、直ちに公開できないのであれば、その理由は何か。
5 前記4の議事録の公開を直ちに実現できないのであれば、少なくとも、将来的に、議事録を公開すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 再稼働の判断のための新しい安全基準について

1 新しい安全基準には、フィルターの設置や防護壁など、再稼働する時点では完備できていないものがある。完備されなくても安全を担保したと言えるのか。
2 再稼働後に整備しなければならない措置が完備されるまでの間に、原発事故が起きた場合、その責任は、国、関西電力、福井県、その他どの主体にあるのか。

四 ストレステスト意見聴取会委員の井野弘満氏と後藤政志氏からの指摘について

1 両委員から、「ストレステスト意見聴取会では、徹底して議論を尽くすことが、国民に対する原子力安全・保安院の責務です」と指摘されているが、その責務は果たされているか。
2 「制御棒の挿入性を検討対象から外している」と指摘されているが、その事実関係及び政府の見解を示されたい。対象から外しているのであれば、その理由を述べられたい。
3 「基礎ボルトなどの機器の強度について、安全率を削って評価している」と指摘されているが、その事実関係及び政府の見解を示されたい。削って評価しているのであれば、その理由も述べられたい。
4 「原子炉建屋などの構造強度に関わる許容値について、耐震バックチェックの基準より甘い許容値を適用していることを認めている」と指摘されているが、その事実関係及び政府の見解を示されたい。甘い許容値を適用することを認めているのであれば、その理由を述べられたい。
5 「本来の設備は東京電力福島原発事故前から改善せず、消防車や非常発電装置などの外部仮設設備だけで安全だとしている」と指摘されているが、その事実関係及び政府の見解を示されたい。本来の設備についての改善をしないままで問題ないとしているのであれば、その理由を示されたい。
6 「ストレステストは、過酷事故対策の検証を含めた二次評価と合わせて評価しなければ、地域住民が安全性を判断する上で意味がない」と指摘されている。二次評価と合わせた判断でなければ再稼働を判断することはできないと考えるが、政府の見解を示されたい。
7 電力事業者は、原子力安全・保安院の指示により、二〇一一年末までにストレステストの二次評価を提出することになっていた。政府は関西電力から現時点で二次評価の結果を受領しているか。関西電力が提出していないのであれば、その理由について政府の承知するところを示されたい。また、関西電力が二次評価を提出していないにもかかわらず、政府はなぜ再稼働を判断できるのか。その理由を述べられたい。

五 関西電力の今夏の電力供給量について

1 政府が再稼働を判断する際に用いた関西電力の今夏の電力供給量は、電力事業者及び原子力安全・保安院以外の第三者によって精査されたのか。精査されたとしたら、誰が精査したのか。
2 関西電力から提出された電力供給量のデータによると、二つの火力発電所が止まったままになっているが、その理由について政府の承知するところを示されたい。
3 前記2で指摘した火力発電所を今夏だけでも稼働するよう、政府は指導しないのか。また、稼働できないのであれば、その理由について政府の承知するところを示されたい。
4 足りないとされる電力需要については、ピークカット、揚水発電の活用などの対策によって回避できないのか。このようなピークカットや揚水発電の更なる活用などの対策を講じることができないのであれば、その理由を述べられたい。

六 原子力事故への対応について

1 東京電力福島原発事故後、政府は原子力防災指針の改定を行ったか。改定していないにもかかわらず、再稼動をすることはできないのではないか。
2 政府の原子力災害対策マニュアルは、東京電力福島原発事故後、どのような形で見直しが検討されたか。
3 前記2の結果、原子力災害対策マニュアルは、東京電力福島原発事故後に改定されたか。改定されていないにもかかわらず、再稼動することはできないのではないか。

七 関西電力と自治体との間の防災協定の締結について

1 関西電力が設置する原発のすべてを対象として、「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」に該当する自治体と関西電力との間で防災協定を締結する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」に該当する自治体のうち、関西電力との間で防災協定を締結できている自治体はどこか。
3 再稼働する前の段階において、大飯原発の「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」に該当する自治体と関西電力との間で防災協定を締結する必要があると考えるが、いかがか。

八 大飯原発周辺の自治体における同意について

1 最終的な再稼働の判断は、原発立地自治体の同意のみで足りるのか。
2 「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」に該当する自治体の同意は必要あるのか。
3 経済産業大臣が発言した「地元の一定の理解」とは、どのような自治体を対象とし、かつ、どのような状態を指すのか、具体的に示されたい。

九 京都府知事及び滋賀県知事から提起された「国民的理解のための原発政策への提言」について

1 この提言では、「政治的な見解ではなく信頼のおける中立的な機関による専門的な判断」が必要と指摘されているが、政府はそのような判断ができていると考えるか。
2 「原子力規制庁の早期設置が必要である」と指摘されているが、原子力規制庁が設置できていないのは、政府の怠慢である。国民は、原発事故を引き起こした原子力安全・保安院を信頼していない。原子力の安全を規制する新たな組織を立ち上げることなく、事故を起こした当事者が、再稼働の判断に関与することは許されないと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 「国民の理解を得るためには、まず国民の判断基準となる情報を徹底的に公開すべきである」と指摘されているが、政府はこの指摘に対して納得させられるような情報公開が行われていると考えるか。
4 「大飯発電所三・四号機については、これまでに実施された応急措置(基準一、基準二)と恒久措置(基準三)の関係を明らかにし、恒久措置に代わる安全性が担保されているか、恒久措置の実行が担保されているか、またその過程は適切かなど、再稼働の問題点を明らかにすべきである」と指摘されているが、政府はこのような問題点を明らかにできていると考えるか。できていないのであれば、いつまでに明らかにするのか。
5 「事故調査が終わらない段階において再稼働をするだけの緊急性の証明」が必要と指摘されているが、政府はそれを証明できていると考えるか。証明できているなら、その理由を示されたい。
6 「脱原発依存の実現の工程表を示し、それまでの核燃料サイクルの見通し」を提示するよう指摘されている。政府において脱原発依存の実現のための工程表は、現時点でできているのか。また、最終処理体制の確立はできているのか。
7 「機能しなかったオフサイトセンター、情報提供されなかったスピーディの予測など、福島原発事故の教訓を徹底的に踏まえた対策を構築すべきである」と指摘されているが、政府においてこれらの対策はそれぞれ実施されているのか。
8 「経済面等、福井県に対する国としての全面的配慮を求めるものである」と指摘されているが、政府においてこのような配慮は検討されているのか。

十 エネルギー供給における原発の位置づけについて

 経済産業大臣は、衆議院経済産業委員会において「原発をゼロにしていく」と発言している。また、参議院予算委員会において「原発への依存度はできるだけ早く、できるだけ大きく引き下げていくべきだと考えています」と答弁している。一方で、経済産業大臣は、福井県知事に対して「原発を重要な電源として活用することが大事」と発言している。これらの発言は矛盾しているのではないか。

十一 国民及び専門家等からの批判について

1 朝日新聞が四月十四・十五日に実施した世論調査によると、「原発再稼働に反対」とする人は五十五パーセント、「政府が決めた暫定的な安全基準を信頼しない」とする人は七十パーセントに達している。この結果を政府はどう受け止めるか。
2 経済産業大臣は、参議院予算委員会において「地元の皆さんを始めとする国民の皆さんの一定の理解が得られなければ再稼動はいたしません」と発言している。前記1の世論調査の結果は、まさに国民の理解は得られていないことを示すと考えるが、いかがか。
3 福島県知事は、政府の原発再稼働に向けた動きについて「福島第一原発事故の検証も終わらないうち再稼動の議論をするのは問題だ。原発事故の厳しさ、実態を分かっているのかなと思う」と発言している。政府は、この発言をどう受け止めるか。
4 国会の原発事故調査委員会委員長は、四月十八日、「政府の安全基準は、原発の安全を確保するのに十分なものか疑問が残る。本当にこの国の原子力の安全は守られ、国民の健康を優先した安全規制が実施されるのか、大いに不安になった」と発言している。政府は、この発言をどう受け止めるのか。

  右質問する。