質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第八八号

為替デリバティブ被害に対する金融庁の責任に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年四月十九日

丸山 和也   


       参議院議長 平田 健二 殿



   為替デリバティブ被害に対する金融庁の責任に関する質問主意書

 銀行が中小企業に販売した為替デリバティブが巨大な損失を発生させ、経営を圧迫するという深刻な事態になっている。平成二十三年三月の金融庁の調査によると、平成二十二年九月末現在の残存契約数は四万五百件、通算損失は千四百億円、一契約当たり六百万円のマイナスという深刻なものである。
 金融庁は、監督指針に基づき、為替デリバティブを販売する際の説明態勢について監督している。監督指針では、「デリバティブ取引が含まれているときや、デリバティブ取引を行う場合は、金融商品取引法三十八条の禁止行為や四十条の適合性の原則に抵触することのないよう、顧客の知識・経験・財産の状況、取引を行う目的を踏まえ、適切かつ十分な説明をしているかについて検証する」とされている。
 監督指針に沿って金融庁が適切な検証をしていれば、今日の為替デリバティブの深刻な被害もなかったと思われる。にもかかわらず、多くの被害が出ていることからすれば、金融庁の監督が不十分であったと言わざるを得ない。
 また、現在、為替デリバティブ問題の解決に、金融ADRが重要な役割を果たしている。全国銀行協会が、銀行法及び農林中央金庫法上の指定紛争解決機関として、顧客からの苦情や紛争解決の申立てに対応している。また、特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)も、金融庁長官から指定を受け、指定紛争解決機関として業務を行っている。
 しかし、金融ADRに臨んでいる弁護士からの情報では、銀行寄りの和解案が多く、せいぜい過失割合五対五の和解案提示になっているとのことである。FINMACのあっせんでは、銀行側から減額の余地なしと言われると、簡単に手続を打ち切った事例もあるという。さらに、中小企業が銀行相手の訴訟提起に消極的であることから、銀行側が和解に応じないとも言われている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 メガバンクを中心とする銀行が為替デリバティブを強引に販売し、結果として中小企業に大きな損害が出ていることに対して、銀行の監督官庁としての金融庁の責任は重大であると考える。この点に関して、政府の見解を問う。

二 金融ADRが為替デリバティブ被害者の救済に十分役立っていないことについて、政府は認識しているか。また、政府は金融ADR機関に対してどのような指導を行っているか、具体的に示されたい。

三 近時、FINMACが為替デリバティブ問題解決に消極的になったという話をよく聞く。政府は、FINMACについて、このような事態を把握しているか。また、政府はFINMACに対してどのような指導を行っているか、具体的に示されたい。

  右質問する。