質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

ヨーネ病対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年二月二十二日

紙 智子   


       参議院議長 平田 健二 殿



   ヨーネ病対策に関する質問主意書

 現在、多くの産業獣医師から、ヨーネ病の検査の公定法であるELISAについて、非特異反応が多く、検査キットとしては問題があるとの声がある。
 それを裏付けるように、新潟県中央家畜保健衛生所が出した「ヨーネ病ELISA非特異反応が認められた酪農場で分離された抗酸菌」との報告でも、新潟県の酪農場においてELISAによる抗体検査で十七頭のヨーネ病患畜を摘発したが、すべての患畜について菌培養検査や遺伝子検査を行った結果、ヨーネ菌の存在が認められなかったことが指摘されている。また、下越家畜保健所が出した「ヨーネ病抗体非特異反応が疑われた農場における防疫対応」との報告においては、「平成二十年度診断予防技術向上対策事業でもエライザのみが陽性となる個体が五パーセント程度認められており」として、「免疫学的検査法だけでヨーネ病と診断する現行の診断基準を再検討する必要がある」としている。
 このように、各地の家畜保健衛生所からもELISAの非特異反応が五パーセントにも及ぶことが指摘され、診断基準の再検討が要請されているのである。
 現在、ELISAで陽性とされ、殺処分される乳牛等は、評価額の四分の三しか補償されていない。その殺処分される乳牛の五パーセントが、患畜でないということになれば、その家畜所有者は、評価額の四分の一について損失を被ることになるのである。さらに、「ヨーネ病防疫対策要領」によりヨーネ病発生農家(カテゴリー二農場)と判定されることにより、家畜の販売や移動に著しい支障を来すことになるだけではなく、農場の評価も著しく低下し、直接的・間接的な経済損失額は巨額になることが想定される。家畜所有者に何の落ち度もないにもかかわらず、損失を被ることは許されない事態であり、こうした事態は正されなければならない。
 ついては、以下質問する。

一 これだけの非特異反応があるELISAだけに依存した検査法を改め、菌培養検査を併存させるべきである。そして、ELISAで陽性になっても菌培養検査で陰性になった場合は、評価額の補償は、全額にすべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。また、これらの対応が出来ない場合、その理由を明らかにされたい。

二 市販ELISAキットの非特異陽性反応について、政府はいつからその事実を承知していたのか。また、政府は、承知した時点で、現行のELISAキットの添付使用説明書にその旨の「注意書き」を追加するようメーカーに対する指導を行ったり、実際に診断キットを使用する家畜保健衛生所等に対する擬陽性の可能性に関する注意勧告や通達を行ったのか。

三 家畜所有者が所有する乳牛等が患畜でないにもかかわらず、検査法の不備により殺処分された場合の損失について、政府は擬陽性により殺処分された頭数を把握しているのか。また、政府は、補償する義務がないと考えているのか。もし補償する義務がないと考える場合、その根拠を明らかにされたい。さらに、政府が、補償する義務があるとする場合、どのような補償方法を検討しているのか、明らかにされたい。

四 農林水産省に設置されたヨーネ病検査に関する技術検討会では、「新たな検査法が導入されるまでの間、エライザ検査の結果に基づく、ヨーネ菌感染の有無の判定については慎重に行う必要がある。」としているが、今後の具体的な対応について示されたい。

五 日本における家畜伝染病の中で、ヨーネ病の発生件数は、群を抜いて高いものになっている。そのような中で、前述の指摘にあるような問題を有するELISAによる検査を放置し、二〇〇七年秋以降、菌培養検査を事実上実施できない状況を作り出してきた政府の責任は極めて重大である。その責任について、政府はどのように受け止めているのか、明らかにされたい。

  右質問する。