質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第三一号

年金交付国債に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年二月十六日

若林 健太   


       参議院議長 平田 健二 殿



   年金交付国債に関する質問主意書

 年金交付国債に関して、年金積立金との関係、平成二十五年度以降の取扱い、会計年度独立の原則との関係等について、以下、質問する。

一 年金交付国債と年金積立金との関係について

 年金特別会計では、国民年金勘定において、特別会計に関する法律第百十五条第一項の規定に基づき、剰余金のうち国民年金事業の給付費及び基礎年金勘定への繰入金の財源に充てるために必要な金額を積立金として積み立てている。また、厚生年金勘定においても、同法第百十六条第一項の規定に基づき、剰余金のうち厚生年金保険事業の保険給付費及び基礎年金勘定への繰入金の財源に充てるために必要な金額を積立金として積み立てている。
 年金特別会計における平成二十四年度の年金差額分(基礎年金国庫負担割合二分の一と三十六・五パーセントの差額分)の取扱いとしては、両勘定において年金積立金管理運用独立行政法人に対して国債が交付され、国庫負担差額相当額寄託金として両勘定の積立金に計上される一方、両勘定の歳入にはその同額が「国庫負担差額相当額積立金より受入」として計上されている。
 特別会計に関する法律第百十五条第三項では、「第一項の積立金は、国民年金事業の給付費及び基礎年金勘定への繰入金の財源に充てるために必要がある場合には、予算で定める金額を限り、国民年金勘定の歳入に繰り入れることができる」と規定し、同法第百十六条第四項では、「第一項の積立金は、厚生年金保険事業の保険給付費及び基礎年金勘定への繰入金の財源に充てるために必要がある場合には、予算で定める金額を限り、厚生年金勘定の歳入に繰り入れることができる」と規定している。また、これらの積立金の水準は、有限均衡方式の下、財政均衡期間の最終年度において給付費の一年分程度の規模となるように制度が構築されており、積立金の安易な取り崩しは認められるものではない。これらの趣旨に照らせば、平成二十四年度の年金給付財源を確保するために年金交付国債を積立金に計上する一方、既存の積立金を取り崩すことで必要な財源を確保する一連の会計処理は、財政規律や積立金設置の本来の趣旨から逸脱するものと考えるが、政府の認識を示されたい。

二 平成二十五年度以降の年金交付国債の取扱いについて

 平成二十四年度予算では、国庫負担差額相当額寄託金を除く運用寄託金(平成二十四年度末時点)が、年金特別会計の厚生年金勘定においては約九十四・五兆円、国民年金勘定においては約六・三兆円となることが予定されており、後年度においても年金交付国債の発行が続く場合、積立金における同寄託金の更なる減少が見込まれる。
 平成二十三年十二月二十二日付けで公表された「平成二十四年度以降の基礎年金国庫負担の取扱い等について」では、「平成二十五年度から税制抜本改革により安定財源を確保するまでの間の年金差額分の取扱いは、現行法の「必要な税制上の措置を講じた上で国庫の負担とするよう、必要な法制上及び財政上の措置を講ずる」との規定に沿って、引き続き検討する」としている。しかしながら、「税制抜本改革により安定財源を確保する」ための法律案が成立せず、「安定財源を確保するまでの間」が長期間となる可能性があり、この間は年金交付国債の交付が続くことも考えられる。この場合、平成二十五年度以降の年金交付国債の発行について、財政規律の観点から具体的な上限金額を設定するのか、政府の見解を示されたい。

三 年金交付国債と会計年度独立の原則との関係について

 財政法第十二条では、「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない」として会計年度独立の原則を定めている。本規定は財政に係る基本原則の一つであるが、まずはその意義について、政府の認識を示されたい。
 年金交付国債の償還については、税制抜本改革により安定財源を確保した後に歳入歳出の両面について予算計上するとされており、平成二十四年度予算では一般会計予算総則第十一条において年金交付国債の発行及び交付額を定めるにとどまっている。これにより、形式的には会計年度独立の原則が守られることとなるが、実際には年金を給付する年度と当該給付費見合いの財源を実質的に確保する年度が異なっており、会計年度独立の原則に合致しない姿であると考える。今般の年金交付国債を活用した国庫負担差額分の財源確保策が、会計年度独立の原則を求める財政法の趣旨に照らしてふさわしいものであるのか、政府の認識を示されたい。

四 年金交付国債の償還について

 交付国債の償還は保有者からの請求等に応じて行うとされているが、年金交付国債の償還は、税制抜本改革により財源を確保した上で行うとされている。では、年金交付国債を保有する各機関は、税制抜本改革により安定財源が確保される以前に任意に償還請求を行うことができるのか、また、償還請求額は保有する国債の金額の範囲内で各機関が任意に決定することができるのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。