質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第二六号

エアゾール缶等の火災・爆発事故対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年二月十五日

加藤 修一   


       参議院議長 平田 健二 殿



   エアゾール缶等の火災・爆発事故対策に関する質問主意書

 爆発・引火の危険性があるガスボンベ、スプレー缶、ライターなどが、ごみ収集車内で火災や爆発を起こす事故が相変わらず多発している。
 東京消防庁の調査によると、二〇〇六年からの五年間に同消防庁管内だけでいわゆるエアゾール缶等に起因する火災が九百三十四件も発生し、一人が死亡、二百九十五人がけがをしている。そのうち約八割がごみ収集車内で残存ガスが噴出することにより発生した火災事故である。
 東京都ばかりではなく、「千葉市では、軽微なものを含め、毎年五十件を超えるごみ収集車の発火事故が発生しています」(千葉市環境局ホームページより)、「家庭ごみを回収中のごみ収集車の火災が、全国十九の政令市で、過去五年間に二千件以上起きている」(二〇一〇年十二月二十六日付け読売新聞)など、全国で事故は日常的に発生しており、マスコミ等の警告も相次いでいる。
 特に爆発事故は人的損失にとどまらず、公共施設も大きく損壊させる。一般廃棄物処理施設での物損事故状況をまとめた環境省の「平成二十年度一般廃棄物処理施設等事故事例調査報告書」によると、粗大ごみ処理施設での爆発は二〇〇四年度から二〇〇七年度の四年間で二百三十二件にも達し、全爆発事故件数のうち実に九割以上を占める。
 これらエアゾール缶等の火災・爆発事故に対して、政府及び自治体が講じている防止対策を一言で言えば、ガスの抜取り廃棄を市民に求める啓発活動の一本槍である。しかし、各地の事故多発は、これだけでは対策として不十分であることを物語っている。
 一昨年、「スプレー缶、ライターなどの一般廃棄物への混入に起因する収集・処理・処分時等において多発する火災・爆発等事故に関する質問主意書」(第百七十六回国会質問第一九二号)において同様の問題点を指摘しているが、実態把握が不十分である上に一向に改善が図られていないことから、改めて政府の抜本対策を求めて、以下質問する。

一 エアゾール缶等の事故の全体像と実像の把握の必要性について

 エアゾール缶等の事故に関する国の調査は、約九十自治体を抽出するアンケート調査のみである。しかし、繰り返される事故の原因究明と的確な防止対策の推進には、具体的な被害把握と事故の実像に迫る詳細な全国調査が欠かせないと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 混乱するエアゾール缶等の処理法について

 エアゾール缶等の廃棄に関して、穴を開けガスを抜いて廃棄させる自治体と、穴を開けないよう求める自治体があるなど、全国的に「ごみ出し」ルールが混乱している。また、缶だけでなくライターの廃棄方法も自治体によってまちまちである。こうした混乱を回避する対策を講じるべきと考えるが、政府の方針を示されたい。

三 ガス抜き方法の周知だけでは事故は減らないことについて

 事故防止策は、缶のガスを使い切るための残存ガス排出装置の装着と使用、そのことの市民への周知徹底であることが強調されている。しかし、ガス抜き方法は製品ごとに異なる上に、高齢者や年少者には複雑で理解が難しく、その作業は一般消費者には危険過ぎるとの指摘も多い。分別収集を行った上で処理機器等を活用して一括して処理する方式が有効と考えるが、政府の見解を示されたい。

四 ガス爆発や火災で甚大な物損が生じていることについて

 二〇〇一年、群馬県高崎市ほか四町村の衛生施設組合では、不燃ごみ破砕機がガスボンベで爆発し、修理費と復旧までのごみ処理委託費を合わせて八千万円以上の出費を余儀なくされた。同組合では事故以降、ガスが残留している缶がないか不燃ごみ一つ一つを手作業でチェックする余計な一手間をかけることとなった。こうした事例は全国で多数発生していると推測されるところ、甚大な物損が生じている事実は無視できない。一般廃棄物処理施設及びごみ収集車で発生した可燃性ガス由来の爆発・火災事故の被害総額は全国でいくらになるか。修理費と復旧までのごみ処理委託費の合計額の推計値について、二〇〇四年度から二〇〇七年度までの四年間の年度ごとに、政府の承知するところを明らかにされたい。

五 有効な処理機器の活用による事故根絶の必要性について

 現状を放置すれば、関係業界を含め国や自治体は、不作為の責任を問われ提訴されることも覚悟すべき事態となりうる。ごみ処理時に可燃性ガス(スプレー缶、ライター等)が含まれていても安全な処理機器が既に開発されており、いくつかの自治体ではそうした機器を購入・活用している事例がある。国は、このような処理機器の購入・活用が拡大するよう、支援措置を含めた積極的な対策を講じるとともに、関係業界に対しても適切な措置をとるよう指導するべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。