質問主意書

第179回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五二号

内閣参質一七九第五二号
  平成二十三年十二月十六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員福島みずほ君提出緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの運用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの運用に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「避難訓練」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、一般に、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二十八条第一項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第四十八条第一項の規定に基づき都道府県が行う防災訓練(以下「都道府県訓練」という。)の準備等は、都道府県の担当部署が、経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)、関連する市町村地域防災計画を作成している市町村(特別区を含む。)、独立行政法人原子力安全基盤機構(以下「機構」という。)、財団法人原子力安全技術センター(以下「センター」という。)及び原子力事業者の担当部署と協議して行うのが通常であると認識しているが、その余のお尋ねの詳細については、政府として承知していない。

二について

 御指摘の「環境防災Nネット」で公開されている緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(以下「SPEEDI」という。)による試算図形は、原子力災害対策特別措置法第十三条第一項の規定に基づき国が行う防災訓練(以下「国訓練」という。)や都道府県訓練において、外部電源喪失や冷却水の漏えいによる冷却機能喪失など様々な設備故障の複合的な発生を仮定した原子力発電所等の事故のシナリオに応じて、文部科学省がセンターに委託している事業の一環として作成されているものであり、膨大な量のシナリオが存在するため、一概にお答えすることは困難である。
 また、お尋ねの「放出源情報として使用された・・・コア・インベントリ、核燃料の量及び放出フラクション」が何を指すのか必ずしも明らかではないため、これらについてお答えすることは困難であるが、国訓練及び平成二十二年度の都道府県訓練で行われたSPEEDIによる試算において放出源情報として使用された原子炉内の燃焼度等の数値については、「環境防災Nネット」において公開されているところである。

三について

 お尋ねの「燃焼率」及び「実際の燃焼率」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、SPEEDIによる試算を行うに当たっての放出源情報は、個々の原子力発電所等の事故のシナリオに応じて設定されるものである。その際、想定される原子炉内の燃焼度が目安として一トン当たり二十ギガワット日(以下「本件目安値」という。)以上であれば、燃焼度が原子炉内における各希ガス核種及び各ヨウ素核種の存在比に与える影響を無視できることが一般に知られており、放射性物質の総放出量など燃焼度以外の放出源情報があらかじめ設定されることとあいまって、SPEEDIによる試算における放出源情報に含まれる燃焼度としては、従来より本件目安値が設定されることが多いものと承知している。したがって、燃焼度が本件目安値以上の場合のSPEEDIによる試算の結果については、燃焼度を本件目安値とした場合の試算の結果と同じであるとみなして差し支えないものと考える。他方で、燃焼度が本件目安値未満の場合については、燃焼度が原子炉内における各希ガス核種及び各ヨウ素核種の存在比に与える影響を必ずしも無視できないと考えられることから、その場合のSPEEDIによる試算の結果について一概に論じることは困難である。

四について

 お尋ねの「実際の・・・核燃料の量及びコア・インベントリ」が何を指すのか必ずしも明らかではなく、また、「実際の燃焼度」については把握していないため、お答えすることは困難である。なお、保安院においては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第三十条の規定に基づき、原子炉設置者から運転計画の届出を受けており、原子炉の運転に係る原子炉内におけるウラン及びプルトニウムの重量等の計画については承知している。
 また、実際に原子力発電所の事故が発生した場合の原子炉内に存在する放射能量については、SPEEDIによる試算を行う場合とは別に、必要に応じて保安院から機構に対して解析を依頼し試算を行うことがある。

五について

 SPEEDIによる試算は、放出源情報として放射性核種が指定されれば、ウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料又はウラン燃料のいずれの燃料も対象として行うことが可能である。また、お尋ねの「その核燃料要素の割合」が何を指すのか必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、MOX燃料を使用している原子力発電所の原子炉ごとに炉内に装荷されている燃料体の数のうちMOX燃料を含む燃料体の数をお示しすると、九州電力株式会社玄海原子力発電所三号炉において百九十三体のうち三十二体、四国電力株式会社伊方発電所三号炉において百五十七体のうち十六体、東京電力株式会社福島第一原子力発電所三号炉において五百四十八体のうち三十二体、関西電力株式会社高浜発電所三号炉において百五十七体のうち八体である。

六について

 お尋ねの点について、政府としては、「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)において、「事故時の放出源情報が確実に得られる計測設備等を強化する」こととしており、実際の事故情報を伝送するための機器や回線を強化するなどの対策が平成二十四年度中を目途に実施できるよう検討を進めているところである。

七について

 お尋ねの「一件当たりの試算に要する費用」が何を指すのか必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、SPEEDIについては、平成十七年度に約七億円、平成十八年度に約六億円、平成十九年度に約七億円、平成二十年度に約六億円、平成二十一年度に約五億円の経費を措置している。

八について

 SPEEDIによる試算は、これまでにヨウ素及び希ガス以外に、トリチウム三、ストロンチウム八十九、ストロンチウム九十、イットリウム九十、イットリウム九十一、ニオブ九十五、ルテニウム百三、テルル百二十九m、テルル百三十一m、テルル百三十二、セシウム百三十四、セシウム百三十六、セシウム百三十七、バリウム百四十、ランタン百四十、セリウム百四十一、セリウム百四十四、ウラン二百三十四、ウラン二百三十五、ウラン二百三十八、プルトニウム二百三十八といった放射性核種についても行われているとセンターから聞いている。