質問主意書

第179回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四七号

内閣参質一七九第四七号
  平成二十三年十二月十六日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員浜田昌良君提出薬物事犯の執行猶予者に対する保護観察体制の拡充に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出薬物事犯の執行猶予者に対する保護観察体制の拡充に関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十二年に、大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)違反、覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)違反、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)違反、あへん法(昭和二十九年法律第七十一号)違反及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)違反の罪により懲役の言渡しを受けてその執行を猶予された者の人員は、それぞれ千九十八人、四千三百六十人、二百六十一人、二人及び八人であり、そのうち執行猶予の期間中保護観察に付する旨の言渡しを受けた者は、それぞれ四十五人、四百六十九人、十六人、零人及び零人である。また、平成二十二年において、保護観察所における「覚せい剤事犯者処遇プログラム」の受講を開始した保護観察付執行猶予者の人員は、四百十九人である。

二について

 お尋ねのうち、「保護観察付きの執行猶予」に関することについては、刑の執行を猶予するか否か、及び執行猶予の期間中保護観察に付するか否かについては、個別の事案における裁判所の判断に関わる事項であるので、答弁を差し控えたい。
 保護観察所においては、規制薬物の使用を反復する犯罪的傾向の改善に有効なものとして「覚せい剤事犯者処遇プログラム」を実施しているところ、現在、仮釈放者及び保護観察付執行猶予者のうち当該傾向が強いものに対して、特別遵守事項として「覚せい剤事犯者処遇プログラム」の受講を義務付けた上、これを実施している。また、保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しては、特別遵守事項として「覚せい剤事犯者処遇プログラム」の受講を義務付けることはしていないが、特に必要と認められる者に対しては、その者の自発的意思に基づいて「覚せい剤事犯者処遇プログラム」を実施している。
 なお、平成二十三年十一月四日に内閣から国会に提出した刑法等の一部を改正する法律案においては、更生保護法(平成十九年法律第八十八号)の一部を改正して、保護観察所の長が、規制薬物等に対する依存がある保護観察対象者に対する保護観察を、外部の病院、公共の衛生福祉に関する機関等と連携して実施するための法整備を行うこととしている。これを踏まえ、今後とも、保護観察のより一層の充実強化を図り、特に、規制薬物等に対する依存がある未成年の保護観察対象者に対するより一層適切な保護観察の実施に努めてまいりたい。

三について

 平成二十三年十一月四日に内閣から国会に提出した刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の施行後、刑の一部の執行猶予の言渡しがされるか否かについては、個々の事案に応じて、裁判所において判断されるものであることから、薬物事犯について刑の一部の執行猶予を言い渡される者の人員の見込みや保護観察に付される者の人員の見込みの確たる予測を示すことは困難であり、お尋ねの「薬物事犯の保護観察者がどの程度増大すると見込んでいるか」については、お答えすることは困難である。
 なお、平成二十二年に、覚せい剤取締法違反の罪により新たに刑事施設に入所した受刑者であって、刑期が三年以下のもののうち、前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者の人員は千六百八十五人であり、二度目以上の入所者の人員は三千八百五十五人であって、これらを合計すると、五千五百四十人となる。また、同年における同法違反による仮釈放者及び保護観察付執行猶予者の保護観察開始人員は、それぞれ三千百三十四人及び四百七十二人である。

四について

 法務省においては、精神科医師や民間自助グループの施設長等の薬物問題に関する専門家によって構成される薬物処遇研究会を開催し、新たな薬物処遇プログラムの開発や、保護観察所と地域の医療、保健又は福祉に関する機関等との連携による支援体制の整備についての検討を進めているところである。今後、同研究会における検討等を踏まえ、お尋ねの「薬物事犯初犯者」を含め、規制薬物等に対する依存がある保護観察対象者に対する支援体制の充実に努めてまいりたい。