第179回国会(臨時会)
質問第四九号 朝鮮半島の非核化に関する共同宣言及び第四回六者会合に関する共同声明に矛盾する日韓原子力協定に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十三年十二月七日 浜田 昌良
参議院議長 平田 健二 殿 朝鮮半島の非核化に関する共同宣言及び第四回六者会合に関する共同声明に矛盾する日韓原子力協定に関する質問主意書 韓国、ベトナム、ヨルダン及びロシアの各国と我が国との原子力協定の承認について、現在、国会で審議されているものの、これらの協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質の濃縮又は再処理の扱い(以下「濃縮・再処理」という。)については、これらの協定間で同様の扱いとはなっていない。 具体的には、ヨルダン及びベトナムとの各協定においては、片務的に我が国が同意しない限りこれらの国の管轄内において濃縮・再処理を行うことができない規定(以下「A規定」という。)となっているのに対し、韓国及びロシアとの各協定においては、同位元素ウラン235の濃縮度二十パーセント未満までは双方とも自由に濃縮・再処理できる規定(以下「B規定」という。)となっている。 一方、一九九二年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言においては、「南と北は核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しない」と規定され、また、二〇〇五年の第四回六者会合に関する共同声明においては、「一九九二年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言は、遵守され、かつ、実施されるべきである。」と明記され、我が国も同意している。 よって、今般の日韓原子力協定で、韓国が自由に濃縮度二十パーセント未満まで濃縮・再処理できることを規定することは、明らかにこれらの共同宣言及び共同声明に矛盾するだけではなく、北朝鮮の濃縮・再処理計画の完全放棄を求め、東アジアの非核化を目指す我が国の外交姿勢との関係から多くの国民が疑念を有している。 そこで、以下のとおり質問する。 一 我が国が他国及び地域と既に締結した原子力協定のすべてにおいて、濃縮・再処理の扱いがA規定となっているもの、B規定となっているもの又はその他の規定(以下「C規定」という。)となっているものについて、それぞれの相手国・地域名を示されたい。また、このうちC規定については、それぞれの相手国・地域別にその概要を明らかにされたい。 二 韓国が既に締結している原子力協定において、濃縮・再処理の扱いが、相手国が同意しない限り韓国の管轄内において濃縮・再処理を行うことができない規定(以下「A′規定」という。)となっているもの、B規定となっているもの又はC規定となっているものについて、政府の承知する範囲でそれぞれの相手国・地域名を示されたい。また、このうちC規定については、政府の承知する範囲でそれぞれの相手国・地域別にその概要を明らかにされたい。 三 今般の日韓原子力協定の濃縮・再処理の扱いについて、A規定とならなかった理由及び日韓それぞれの主張を明らかにされたい。 四 一九九二年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言があるために、韓国側も濃縮・再処理を行うことはなく、実際には日韓原子力協定のB規定は活用されないとの外務省担当官の説明が十二月一日の公明党・外交安全保障部会でなされたが、野田内閣も同様の見解なのか明らかにされたい。 五 二〇〇五年の第四回六者会合に関する共同声明については、もはや我が国は遵守されるべきものと考えていないのか、野田内閣の認識を明らかにされたい。 もし、遵守されるべきものと認識しているのであれば、「一九九二年の朝鮮半島の非核化に関する共同宣言は、遵守され、かつ、実施されるべきである。」との規定と、今般の日韓原子力協定において韓国が自由に濃縮度二十パーセント未満まで濃縮・再処理できることを規定することの整合性はあると考えているのか。両者に整合性があると考える場合、その理由とともに、野田内閣の見解を国民が分かるように明らかにされたい。 六 今般の日韓原子力協定で、韓国が自由に濃縮度二十パーセント未満まで濃縮・再処理できることを規定することは、北朝鮮の濃縮・再処理計画の完全放棄を求め、東アジアの非核化を目指す我が国の外交姿勢との関係から矛盾し、むしろ濃縮・再処理を一方的に進めようとする北朝鮮に口実を与えるのみとの指摘が世界からなされうると考える。野田内閣はどのような説得力のある説明を行うのか、国民が分かるように明らかにされたい。 右質問する。 |