質問主意書

第179回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四六号

司法試験予備試験に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年十二月七日

前川 清成   


       参議院議長 平田 健二 殿



   司法試験予備試験に関する質問主意書

一 司法試験予備試験(以下、「予備試験」という。)に関して、司法試験法第五条第一項は、司法試験を受験しようとする者が法科大学院を修了した者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養(以下、「法科大学院修了者と同等の学力」という。)を有するかどうかを判定することを目的として行うと定められている。
 ところが、平成二十三年度の予備試験においては、法科大学院修了者が三百六十六名受験したところ、合格者は十九名に留まっており、合格率にして五・六五パーセントに過ぎない。
 予備試験において司法試験法に定める通り、法科大学院修了者と同等の学力を有するか否かを判定したならば、法科大学院修了者は理論上は全員が合格すべきところである。しかるに、法科大学院修了者の二十名に一名程度しか合格しないのは、予備試験が司法試験法第五条第一項に違反して実施されたか疑わざるを得ない。
 ついては、次の通り質問する。
① 平成二十三年度の予備試験は、司法試験法第五条第一項に定める目的に照らして実施されたか。
② 仮に予備試験が司法試験法第五条第一項に定める目的、すなわち法科大学院修了者と同等の学力を有するかどうかを判定するために実施されたならば、何故、既に法科大学院を修了した者の合格率は五・六五パーセントに過ぎないのか。
③ 平成二十三年度の予備試験の出題は、法科大学院修了者と同等の学力の有無を判定する試験として適当であったか。
④ 仮に平成二十三年度の予備試験の出題が法科大学院修了者と同等の学力の有無を判定する試験として適当であったならば、何故法科大学院修了者の合格率が五・六五パーセントに過ぎないのか。
⑤ 司法制度改革審議会意見書においては「法科大学院修了者の相当程度(約七~八割程度)の者が新司法試験に合格するよう充実した教育を行う」と書かれたにもかかわらず、司法試験のみならず、その予備試験でさえ合格率は五・六五パーセントに留まっていることに関して、政府はどのように総括しているのか。

二 文部科学省の取りまとめによると、法科大学院において原則である三年間学ぶためには、学費だけでも、平均して、国立では二百七十一万千八十八円、私立では四百二十七万八千八百十七円を負担しなければならず、それ故に、かかる学費等の負担が経済的に困難な者であっても司法試験から排除されないように予備試験が設けられたはずであり、予備試験は決して「裏口」でも、「抜け道」でもない。司法制度改革審議会意見書においても「経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保すべきである。」と書かれている通りである。
 しかるに、予備試験の結果発表後、日本弁護士連合会や法科大学院関係者から「予備試験の合格者が少なかったので、懸念していたような抜け道にはならない。」等の発言が散見された。
 ついては、次の通り質問する。
① 予備試験の目的は、経済的弱者であっても、学力や、能力さえあれば司法試験を受験する機会を保障し、もって司法試験の「公平性」、「開放性」を保障するためではなかったのか。
② 法科大学院修了者の低合格率は前記の通りであるが、受験者全体に至っては一・七九パーセントに過ぎない。このように予備試験を「狭き門」としたのは、政府においても予備試験を「抜け道」と位置付けている故か。
③ 万一、予備試験を「抜け道」と位置付けて、ことさらに合格基準を引き上げたならば、その結果、司法試験の「公平性」を損ねたのではないか。
④ 司法試験の「開放性」を確保し、経済的弱者に対しても司法試験を受験する機会を保障するために、どのような施策を講じているか。
⑤ そもそも司法試験受験に先立って予備試験を受験させる必要があるのか。裁判官、検察官、弁護士になろうとする者が必要な学識及びその応用能力を有するかは司法試験において判定されるのであり、法科大学院に学ぶことができなかった者にだけ二度の選抜試験を課すことは不公正ではないか。

  右質問する。