質問主意書

第179回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四四号

中国漁船衝突事件における船長釈放の経緯に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年十二月二日

丸山 和也   


       参議院議長 平田 健二 殿



   中国漁船衝突事件における船長釈放の経緯に関する質問主意書

 平成二十二年九月七日に尖閣諸島周辺で発生した中国漁船衝突事件は、逮捕・勾留されていた中国人船長を、那覇地検が「我が国の国民への影響や日中関係を考慮」して釈放し、仙谷官房長官(当時)が、その「地検独自の判断を了」とするという不自然な経過を辿った。
 地検が独自に日中関係を考慮して政治判断をしたという政府の説明に、大多数の国民が納得しないなかで、本年九月二十六日付け産経新聞紙上に、松本前内閣官房参与が「(釈放しろと命令をしたのは)仙谷氏の可能性が高い」と述べたとする記事が掲載された。同じ記事のなかで松本氏は「地検から首相官邸に証拠となるコピーのビデオテープが届いた」とも述べている。
 検察庁法十四条但書の「(法務大臣は)個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」との規定は、指揮権発動について制限を課すものである。個々の事件については、法務大臣のみが、検事総長のみを指揮できるのであって、法務大臣以外の閣僚が検察官に圧力をかけたのであれば、この規定の趣旨に反する行為である。
 松本氏の証言が事実であるとすれば、司法権の運用を政治ないし内閣がゆがめるという異常事態が生じたと言わざるを得ず、同氏の証言の真偽を確認する必要がある。
 そこで以下のとおり質問する。

一 首相官邸が同事件の証拠となるビデオテープのコピーを提出するよう検察に要求したことはあるか。

二 検察庁は、同事件における船長釈放前に、官邸から同事件のビデオテープのコピーを提出するよう求められたことはあるか。

三 検察庁は、前記二の要請を受け、同事件のビデオテープのコピーを官邸に提出したことはあるか。

四 検察庁は、同事件における船長釈放前に、官邸から、同事件の担当検事もしくはその他の検察官が官邸に来るよう要請された事実はあるか。

五 前記四で官邸から要請された場合、いつ、官邸の誰から、検察庁の誰に、どのような要請があったのか。

六 前記四の要請を受け、検察官が官邸に赴いた場合、その検察官の役職・氏名を明らかにされたい。

七 検察官が官邸に赴いた場合、その検察官は官邸の誰と面接したのか、官邸側の役職・氏名を明らかにされたい。

八 検察官が官邸に赴いた場合、その検察官は、同事件における中国人船長の処分問題について、官邸の誰からどのように言われたのか、その発言内容を明らかにされたい。

九 仙谷官房長官(当時)が船長を釈放するよう検察に働きかけたという事実はあるか。

十 松本氏は、前記の新聞紙上で、中国人船長がなぜ釈放されたのかという質問に対し、「那覇地検が大きなミスをしていたから。地検から首相官邸に証拠となるコピーのビデオテープが届いたが、重大な瑕疵があり、(起訴しても)公判がたえられない、有罪にもならないと官邸側が判断した」、「仙谷由人官房長官が検察当局者に質問をして、瑕疵があると分かった」と当時の真相を語っている。そのような事実があったのかを明らかにされたい。

十一 前記の松本氏の証言が事実であるとすれば、司法権の運用を政治ないし内閣がゆがめるという異常事態が生じたと言わざるを得ないと考えるが、政府の見解を問う。

  右質問する。