質問主意書

第179回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二七号

玄海原発から半径十キロメートル以内の長崎県松浦市鷹島、黒島等の防災体制の強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年十一月十六日

秋野 公造   


       参議院議長 平田 健二 殿



   玄海原発から半径十キロメートル以内の長崎県松浦市鷹島、黒島等の防災体制の強化に関する質問主意書

 現在の原子力発電所の安全協定は、多くの場合、立地都道府県と立地市町村のみが締結することになっている。また、電源立地地域対策交付金は、住民の福祉の向上等を目的として、多くの場合、立地都道府県及び立地市町村に対して配分されてきた。
 東京電力福島第一原子力発電所事故による避難地域及び屋内退避地域が原発からの距離で定められたように、先般、原子力安全委員会で防災対策を重点的に充実すべき区域の在り方を検討した結果、緊急時防護措置を準備する区域として、避難及び屋内退避を必要とする範囲を十キロメートルから概ね三十キロメートルとする案が示されたところであるが、これまでと同様に原発からの距離に応じた対応が求められているものであり、県域や市町村域ごとの対応が求められているものではない。
 長崎県松浦市鷹島及び黒島は、佐賀県に立地する玄海原発から八キロメートルしか離れていない位置にあり、時期によっては風向きが玄海原発から鷹島及び黒島に向くこともある点にかんがみ、十一月には避難訓練が行われることになっていると聞いている。
 これまで防災対策が求められてきた地域については、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金で原子力防災資機材の整備を支援してきているものの、特に県域を越えた地域においては、地域住民への防災対策の周知徹底が不十分であり、その状態を放置し続けることは行政の怠慢である。緊急時計画区域の見直しで、避難及び屋内退避を必要とする範囲を十キロメートルから三十キロメートルに拡大する前に、その前提を見直す必要があることを指摘した上で、以下質問する。

一 原子力発電所の安全協定は、立地自治体等が原子力発電所の運転や新増設等に関与する観点から、立地自治体等の権限を定めた協定であり、法令上の位置付けがない任意のものである。県域を越えた地域の声が届くように、原子力発電所の立地自治体に隣接する自治体とも安全協定を締結させる必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 長崎県松浦市のような原子力発電所の立地自治体から県域を越えて隣接する自治体においても、放射線測定器等の防災機材の整備等及び被ばく医療設備の整備・維持・管理や、緊急時における専用回線網の整備、防災計画の策定と訓練の実施、緊急事態応急対策拠点施設の整備などが必要である。これに対して、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金を用いて、松浦市のように県域を越えて隣接する自治体の防災体制を強化すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 電源立地地域対策交付金では、電源地域における住民の福祉向上等を目的として行われる公共用施設の整備や各種事業活動など、ハード・ソフト両面にわたる支援を実施している。しかしながら、同交付金は立地都道府県及び立地市町村にしか配分されていない。そこで、今後は県域を越えた地域の住民の福祉が向上するように隣県に対しても配分を行うことができるようにすることにより、長崎県を通して松浦市にも配分できるようにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、政府は玄海原発付近を通らないと避難できない鷹島について、どのような避難経路を指導するのか。このままでは事故時に危険の高い地域に向かわせることになるが、政府の指導の具体的内容について明確に示されたい。

五 政府は鷹島に船でしか渡ることができない黒島について、どのような避難経路を指導するのか、その具体的内容について明確に示されたい。さらに、悪天候時等、自力での避難が困難な事態が発生した場合にどのような対応を行うのか。今後の緊急事態応急対策に関する政府の方針を示されたい。

六 今後、原子力安全委員会で防災対策を重点的に充実すべき区域の在り方の検討を進め、その中で、緊急時防護措置を準備する区域として、避難及び屋内退避を必要とする範囲を三十キロメートルまで拡大する場合、政府は玄海原発から三十キロメートル区域で新たに対象地域となる壱岐市に対して、どのような避難経路を指導するのか、その具体的内容について明確に示されたい。また、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金の交付対象を拡大することにより、原発から三十キロメートル区域における自治体の防災体制の強化を可能にする必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。