質問主意書

第179回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九号

福島全県民の精神的損害及び自主避難に対する野田内閣の心ない対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年十一月十日

浜田 昌良   
参議院副議長 尾辻 秀久 殿



   福島全県民の精神的損害及び自主避難に対する野田内閣の心ない対応に関する質問主意書

 原子力損害賠償紛争審査会の中間指針においては、警戒区域などの一部の地域の住民に対する精神的損害は賠償の対象としつつも、ありとあらゆる風評被害に苦しんでいる福島全県民に対する精神的損害は賠償の対象としていない。また、避難に対する賠償についても同様に、一部の地域における政府の指示に基づく避難のみを対象とし、それ以外の地域におけるいわゆる自主避難についてはいまだ対象としていない。
 福島県原子力損害対策協議会(以下「協議会」という。)がこれらの賠償を求めた公開質問状に対し、十一月四日、東京電力は「独自判断で賠償範囲を認定するのは困難」として、あくまで中間指針に準じて賠償する考えを改めて示した。
 私が九月三十日付けで提出した「今般の東日本大震災等の復旧・復興における硬直的な予算要求・執行方式の是正に関する質問主意書」(第百七十八回国会質問第四四号)において、「自主避難者への支援、福島全県民が求めている「精神的損害」への対応(中略)など、(中略)中間指針では対象となっていない(又はその適用が不明確な)事業であって、早期救済が必要なものとして被災自治体が応急対応しうる基金を、第三次補正予算で計上すべき」と指摘したのに対し、十月十一日付けの同質問主意書に対する答弁書(内閣参質一七八第四四号)において、「今後、地方公共団体から具体的な要望があった場合には必要な措置を検討してまいりたい。」、「中間指針(中略)において賠償すべき損害として示されていない損害については、地方公共団体の要望等も踏まえ、自主避難者への支援も含め、必要な措置を講じてまいりたい。」旨の答弁があった。しかしながら、協議会の公開質問状など、地元の要望が明確であるにもかかわらず、口先だけで一向に予算措置を行わない野田内閣の心ない対応に、被災者のみならず多くの国民が疑念を抱いている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 原子力損害賠償紛争審査会において、自主避難についても損害賠償の対象にするとの報道がなされているが、その真偽及び検討状況如何。当初、八月五日の中間指針発表後一か月程度で結論をまとめるとの説明もあったが、いまだに結論が出ていない。いつまでに結論を出すのか明らかにされたい。また、賠償の対象とする自主避難を何らかの形で線引きするとの報道もあるが、その真偽如何。さらに、どのような線引きを検討しているのか、そのような対象の限定が県民の要望を踏みにじるものとならないのか、野田内閣の見解を明らかにされたい。

二 私が発議者となり第百七十七回国会で成立した「平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律」(以下「仮払・基金法」という。)第十四条の原子力被害応急対策基金は、このような福島全県民の精神的損害や自主避難への賠償に対応できるものである。当該基金については、前記の答弁書において、「今後、地方公共団体から具体的な要望があった場合には必要な措置を検討してまいりたい。」とのことであるが、福島県から当該基金の設置についての要望は、野田内閣として受けていないという認識か明らかにされたい。

三 仮払・基金法第十四条では、原子力被害応急対策基金の設置主体は地方公共団体と規定されていることから、福島県内の市町村も設置主体になり得ると考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。また、福島県内の市町村からも、当該基金の設置についての要望は、野田内閣として受けていないという認識か明らかにされたい。

四 枝野経済産業大臣は、九月二十九日の参議院予算委員会において、「自主避難をされている被災者の皆さんについては、紛争審査会の中間指針における損害類型としては示されていませんが、自主避難された方々の個別具体的な事情に応じて、相当因果関係のある損害であれば当然賠償の対象となります。現在、審査会においても自主避難された方々への賠償に関して議論中でありますし、それを待たずとも、相当因果関係がある損害の円滑な賠償は東京電力において促してまいりたいと思っております。」と答弁した。また、同大臣が十月六日の参議院東日本大震災復興特別委員会において、「自主避難者についても、指針が出る出ないにかかわらず、明らかに自主避難によって被害を受けている、自主避難をすることが当然であると思われるような皆さんにとっては東京電力において賠償がなされるべきである、これが制度であります。」と答弁したにもかかわらず、十一月四日、東京電力は「独自判断で賠償範囲を認定するのは困難」として、あくまで中間指針に準じて賠償する考えを改めて示した。十一月四日の東京電力の回答について経済産業省に事前相談はあったのか、その有無を明らかにするとともに、同大臣は自主避難に対する賠償について「円滑な賠償は東京電力において促してまいりたい」と九月二十九日の参議院予算委員会において答弁した後、東京電力に対して具体的にどのような対応をしたのか明らかにされたい。

五 福島全県民の精神的損害や自主避難に対し、口先だけで一向に対応しない野田内閣に、被災者のみならず多くの国民はもはや苛立ちを感じている。地方公共団体の要望等の有無を逃げ口上にするのではなく、国民の生命財産を守る日本国政府として野田内閣は何を実施するのか。言葉だけではなく、行動の具体的内容を明らかにされたい。

  右質問する。