質問主意書

第178回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四三号

内閣参質一七八第四三号
  平成二十三年十月十一日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員浜田昌良君提出心ない原子力発電所事故賠償請求手続きに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出心ない原子力発電所事故賠償請求手続きに関する質問に対する答弁書

一、二及び三の2について

 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の事故(以下「原子力事故」という。)に係る東京電力による賠償の手続(以下「賠償手続」という。)に係る請求書類や案内書等(以下「請求関係書類」という。)の分量及び御指摘の合意書の「なお、上記金額の受領以降は、上記算定明細書記載の各金額及び本合意書記載の各金額について、一切の異議・追加の請求を申し立てることはありません」との記載等に関しては、経済産業省から東京電力に対し、請求者に送付する請求関係書類を原子力事故の被害者(以下単に「被害者」という。)に発送する前に送付するよう要請していたところ、請求関係書類が同省に届いたのは、平成二十三年九月十二日の発送日当日であった。
 また、賠償手続については、被害者に対する配慮が足りないとの指摘を踏まえ、経済産業省においては、東京電力に対し必要な措置を講じることを要請し、東京電力においては、これを踏まえ、請求書類の記載に係る負担の軽減に資する手引書の作成、賠償手続に関する相談窓口の充実、被害者宅等への訪問による請求書類の記載のお手伝い、先に述べた合意書の記載の削除等の改善策を講じていると承知している。また、経済産業省において、東京電力に対し、資金繰りに窮している等の被害者に対する概算額の支払を含め、賠償金の支払の弾力的な運用を図るよう要請したところであり、今後とも賠償手続に係る被害者の負担の軽減に努めてまいりたい。

三の1について

 賠償手続の進め方については、まずは原子力事故による損害の賠償について責任を負っている東京電力において、適切な措置を講じるべきものと考えている。政府としても東京電力の取組について注視するとともに、原子力損害賠償支援機構(以下「機構」という。)を通じた、専門家も活用した相談業務の体制を可及的速やかに整備してまいりたい。

三の3及び4について

 原子力事故による損害の賠償は、原子力事故と相当因果関係のある原子力損害について行われるものであるが、東京電力によれば、観光業における原子力事故以外の原因による売上高の減少率については、原子力事故の影響が大きいとされている福島県、茨城県、栃木県及び群馬県を除く東北地方及び関東地方各都県における旅館業者の売上高の平成二十三年三月から同年五月までの各月において前年同期と比較した減少率(以下「東日本大震災後の他都県の売上高減少率」という。)の平均が三七・六パーセントであること、姫路市、加古川市、相生市、赤穂市及び明石市における株式会社ジェイティービー、株式会社日本旅行、近畿日本ツーリスト株式会社及び東急観光株式会社の合計の取扱額の阪神・淡路大震災が発生した平成七年一月から同年六月までの各月において前年同期と比較した減少率(以下「阪神・淡路大震災後の旅行業者の取扱額減少率」という。)の平均が一七・五パーセントであること及び京都府における観光消費額の平成七年の前年と比較した減少率(以下「阪神・淡路大震災後の観光消費額減少率」という。)が一七・四パーセントであること等を参考に、二〇パーセントと設定したとのことである。東京電力によれば、その際、東日本大震災後の他都県の売上高減少率については、平成二十三年七月に原子力損害賠償紛争審査会が取りまとめた「専門委員調査報告書」を、阪神・淡路大震災後の取扱額減少率については、平成十年一月に社団法人日本旅行業協会が発行した「旅行業から見た阪神大震災」を、阪神・淡路大震災後の観光消費額減少率については、平成九年六月に社団法人日本観光協会が取りまとめた「全国観光動向―平成七年(度)観光地入込観光客統計―」をそれぞれ用いたとのことである。
 また、東京電力によれば、サービス業における原子力事故以外の原因による売上高の減少率については、東日本大震災の影響が小さいと考えられる西日本におけるサービス産業の売上高の平成二十三年三月から同年六月までの各月において前年同期と比較した減少率(以下「東日本大震災後のサービス業の売上高減少率」という。)の平均が五・三パーセントであること及び近畿地方におけるサービス業に係る消費額の平成七年の前年と比較した減少率(以下「阪神・淡路大震災後のサービス消費額減少率」という。)が二・三パーセントであること等を参考に、三パーセントと設定したとのことである。東京電力によれば、その際、東日本大震災後のサービス業の売上高減少率については、平成二十三年八月に総務省統計局が取りまとめた「サービス産業動向調査 東日本大震災がサービス産業に与えた影響―東日本・西日本別サービス産業の月間売上高―」を、阪神・淡路大震災後のサービス消費額減少率については、平成八年五月に総務庁統計局が発行した「家計調査年報 平成七年」をそれぞれ用いたとのことである。
 また、お尋ねの「実績値」が意味するところが明らかではないが、政府としては今後とも東京電力に対して適切な賠償金の支払を促してまいりたい。

四について

 原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)に基づく原子力事業者への資金援助については、当該原子力事業者から機構に対して資金援助の申込みがなされた場合、必要に応じて当該原子力事業者と機構が共同で特別事業計画を作成して主務大臣の認定を受けた上で、機構が資金援助を決定し、実施するものであり、現時点では東京電力から資金援助の申込みがなされておらず、資金援助の実施時期は未定であると承知している。
 また、相談・情報提供・助言の業務については、政府としても機構を通じて、可及的速やかに体制を整備してまいりたい。

五について

 お尋ねについては、文部科学省のホームページにおいて、「平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律施行令案等に関する意見募集の結果について」として公表している。

五の1について

 御指摘の「観光業の風評被害」について、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律(平成二十三年法律第九十一号)による仮払金の額の算定方法を定めるに当たっては、その前提となる原子力事故と相当因果関係のある原子力損害の額の算定において、「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(平成二十三年八月五日原子力損害賠償紛争審査会決定)が「観光業における減収等については、東日本大震災による影響の蓋然性も相当程度認められるから、損害の有無の認定及び損害額の算定に当たってはその点についての検討も必要である」と明記していること等を踏まえ、原子力事故以外の事由により生じたものと認められる収益の減少率について、二十パーセントとしているものである。

五の2及び3について

 お尋ねについては、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律施行令(平成二十三年政令第二百九十四号)附則第二項の規定の趣旨を踏まえ、適切に対応してまいりたい。