質問主意書

第178回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三三号

内閣参質一七八第三三号
  平成二十三年十月七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員浜田昌良君提出安定ヨウ素剤をめぐる政府の混乱に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田昌良君提出安定ヨウ素剤をめぐる政府の混乱に関する質問に対する答弁書

一について

 市町村における安定ヨウ素剤の住民への配布状況及び服用状況については、福島県を通じて各市町村から回答をいただいており、現時点で政府として把握しているものについて、①配布を行った市町村名、②配布を行った日時、③配布された者の数を示すと以下のとおりである。なお、服用者数及び服用された日時に関しては、いずれの市町村においても把握していない。
①いわき市 ②平成二十三年三月十八日以降 ③不明
①三春町 ②同月十五日 ③七千二百四十八名
①楢葉町 ②不明 ③不明
①富岡町 ②同月十二日及び十三日 ③不明
①川内村 ②不明 ③不明
①双葉町 ②不明 ③不明
 その他の市町村においては、配布を行っていないと聞いている。

二について

 御指摘の平成二十三年三月十三日午前零時十四分及び同日午前十時三十分の助言については、内閣府原子力安全委員会事務局及び経済産業省原子力安全・保安院に置かれている原子力災害対策本部事務局のいずれにおいても記録が確認されていない。また、原子力安全委員会事務局において、同日午前十時四十六分に、スクリーニングレベルを超えた方に対して安定ヨウ素剤を服用させるべきとのコメントを行い、原子力安全委員会において同月十四日付けで「安定ヨウ素剤の内服について」とする助言を行っているが、原子力災害対策本部事務局においてこれらを受けた記録が確認されていない。
 なお、原子力安全委員会緊急技術助言組織においては、同月十五日午前三時十分に「避難区域(半径二十キロメートル以内)からの入院患者の避難時における安定ヨウ素剤投与について」、同月十六日午前一時二十五分に「避難区域(半径二十キロメートル以内)の残留者の避難時における安定ヨウ素剤投与について」とする助言をそれぞれ行っており、原子力災害現地対策本部長においては、これらを踏まえ、同日午前十時三十五分に、避難時の住民に対して安定ヨウ素剤を投与するよう、福島県及び関係市町村に要請している。

三について

 お尋ねについては、「原子力施設等の防災対策について」(昭和五十五年六月三十日原子力安全委員会決定)において、「安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標として、性別・年齢に関係なく全ての対象者」に対し「一律に、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量百ミリシーベルトを提案する。」としており、また、「本防護対策の効果が限定的であり、屋内退避、避難等の他の防護対策を補完する対策であることを踏まえ、実施に当たっては、技術的観点、実効性、地域の実情を考慮し、他の防護対策とともに判断することが必要である。」としていること等を踏まえ、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所事故への対応においては、住民の避難を最優先としたものであり、また、安定ヨウ素剤の配布・指示に関する適切な方法やタイミングについては、今後検討してまいりたい。

四について

 文部科学省において作成し、同省のホームページにおいて掲載している「緊急被ばく医療の知識」において、小児の甲状腺等価線量百ミリシーベルトを体表面汚染密度に換算すると一平方センチメートル当たり四十ベクレルに相当することを示しており、体表面汚染密度を測定できる機器を用いることにより、甲状腺等価線量を把握することは可能であったが、適切な情報の周知については、政府において今後検討してまいりたい。

五について

 お尋ねの「安定ヨウ素剤を飲む基準」が何を指すのか必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、平成二十三年三月十七日及び十八日に福島県において実施された住民の外部被ばく検査の公表結果によれば、衣服等も含めた表面汚染の計数値が一分間当たり十万カウントを超えていた人数について、同月十七日の検査においては、一万四千百九十八人中四十三人であり、同月十八日の検査においては、一万四千三百三十六人中三十九人である。
 また、福島県からは、外部被ばく検査の結果、衣服等も含めた表面汚染の計数値が一分間当たり一万三千カウントを超えていた人数は同月十三日から同年九月二十八日までの測定で千三人と聞いているが、体表面汚染の計数値が一分間当たり一万カウントを超えていた人数については、把握していないと聞いている。

六について

 お尋ねについては、平成二十三年三月二十一日の時点で、福島第一原子力発電所から半径二十キロメートル圏外の地域においては、安定ヨウ素剤の服用が必要とされるほどの放射線は空気中から計測されておらず、また、安定ヨウ素剤については、服用すれば副作用が発生する場合があり、医療関係者の立会いの下で服用する必要があることから、原子力災害現地対策本部において、福島県及び関係市町村に対し、安定ヨウ素剤を個人の判断で服用させないよう要請したものである。

七について

 テルル132やヨウ素132といった半減期が短い放射性物質の被ばく初期における影響については、評価することが可能かどうかも含め今後検討が必要と考えている。なお、原子力災害現地対策本部において、平成二十三年三月二十六日から三十日にかけて、甲状腺に集まった放射性物質からの放射線量の測定を実施した際に、一歳児における甲状腺等価線量が百ミリシーベルトを超えるかどうかの指標については、独立行政法人放射線医学総合研究所の研究データ等を踏まえた原子力安全委員会の助言に基づき、甲状腺に集まった放射性物質からの放射線量が正味値毎時〇・二マイクロシーベルトとしている。
 また、独立行政法人理化学研究所等に所属する研究者において、平成二十三年三月十五日から十七日まで及び同年四月八日に、福島第一原子力発電所から半径三十キロメートル圏外における放射性物質の飛散状況の調査を行い、その中で、東北自動車道、磐越自動車道及び常磐自動車道において、テルル132、ヨウ素131、ヨウ素132等の放射能の相対的な量を試算していると承知しているが、「放射性物質の七割以上がこれら半減期の短い物質であった」かどうかは、当該調査結果からは判断できないと承知している。

八について

 お尋ねの「全国の原子力発電所立地自治体など」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、安定ヨウ素剤の量等に関して、政府として現時点で把握しているものについて、①都道府県地域防災計画の原子力災害対策編を作成している道府県、②これらの道府県が保有している安定ヨウ素剤の数量、③これらの道府県が平成二十二年度に安定ヨウ素剤の購入に充てた金額を示すと以下のとおりである。
①北海道 ②錠剤八万三千錠及び粉末千グラム ③約四十六万六千円
①青森県 ②錠剤三万五千錠及び粉末千五百グラム ③零円
①宮城県 ②錠剤十四万千錠 ③九十五万四千円
①福島県 ②錠剤約四十七万六千錠及び粉末三千七百五十グラム ③約三十八万八千円
①茨城県 ②錠剤五十五万二千錠及び粉末六千五百グラム ③約二百八十七万千円
①神奈川県 ②錠剤五万三千錠及び粉末百五十ミリグラム ③約十七万千円
①新潟県 ②錠剤十六万八千錠及び粉末千グラム ③約四十六万七千円
①石川県 ②錠剤八万八千錠及び粉末五千グラム ③約五十三万五千円
①福井県 ②錠剤十万八千錠及び粉末千五百グラム ③約五十二万千円
①静岡県 ②錠剤二十四万錠及び粉末五千五百グラム ③約百三十七万六千円
①京都府 ②錠剤二万六千錠及び粉末五百グラム ③約十九万九千円
①大阪府 ②錠剤三千錠 ③約一万八千円
①岡山県 ②錠剤千錠 ③約九千円
①島根県 ②錠剤五十四万錠及び粉末千百グラム ③約二百八十五万千円
①鳥取県 ②錠剤三千錠 ③約五千円
①愛媛県 ②錠剤十一万錠及び粉末二千グラム ③零円
①佐賀県 ②錠剤三十三万錠及び粉末五千五百グラム ③零円
①長崎県 ②錠剤三万三千六百錠及び粉末二十五グラム ③零円
①鹿児島県 ②錠剤八万千錠及び粉末三百グラム ③約四十三万六千円

九について

 お尋ねの安定ヨウ素剤の配布・服用指示に関する改善については、原子力防災体制の見直しの中で検討してまいりたい。