質問主意書

第178回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一七号

内閣参質一七八第一七号
  平成二十三年九月二十七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員加藤修一君提出核エネルギーの機微核技術(SNT)等に対する基本的姿勢に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出核エネルギーの機微核技術(SNT)等に対する基本的姿勢に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 お尋ねの「機微核技術」について確立した定義はないと承知しているが、例えば、原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和六十三年条約第五号)においては、「機微な原子力技術」(Sensitive nuclear technology)について、公衆が入手することのできない資料であって濃縮施設、再処理施設又は重水生産施設の設計、建設、製作、運転又は保守に係る重要なもの等をいう旨規定している。また、こうした資料は我が国に存在する。
 なお、お尋ねの「機微核技術に関する情報と機微情報との違い」については、御指摘の「機微核技術に関する情報」及び「機微情報」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

一の3について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、一般に、濃縮施設、再処理施設又は重水生産施設の設計、建設、製作等の技術を基礎段階から確立することは困難であると承知している。

一の4から6までについて

 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十八条の三の規定により、原子力事業者等は、正当な理由がなく特定核燃料物質の防護に関する秘密を漏らしてはならないこととされている。特定核燃料物質の防護に関する秘密の具体的内容については、製錬施設に関しては核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則(昭和三十二年総理府・通商産業省令第一号)第六条の二第二項第十五号に、加工施設に関しては核燃料物質の加工の事業に関する規則(昭和四十一年総理府令第三十七号)第七条の九第二項第十五号に、原子炉施設に関しては試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則(昭和三十二年総理府令第八十三号)第十四条の三第二項第十二号、研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、運転等に関する規則(平成十二年総理府令第百二十二号)第三十五条第二項第十五号、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年通商産業省令第七十七号。以下「実用炉規則」という。)第十五条の二第二項第十五号及び実用舶用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年運輸省令第七十号)第二十七条の二第二項第十五号に、使用済燃料貯蔵施設に関しては使用済燃料の貯蔵の事業に関する規則(平成十二年通商産業省令第百十二号)第三十六条第二項第十五号に、再処理施設に関しては使用済燃料の再処理の事業に関する規則(昭和四十六年総理府令第十号)第十六条の三第二項第十五号に、廃棄物埋設施設に関しては核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の第一種廃棄物埋設の事業に関する規則(平成二十年経済産業省令第二十三号)第六十二条第二項第十五号及び核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則(昭和六十三年総理府令第一号)第十九条の三第二項第十五号に、廃棄物管理施設に関しては核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の廃棄物管理の事業に関する規則(昭和六十三年総理府令第四十七号)第三十三条の二第二項第十五号に、使用施設等に関しては核燃料物質の使用等に関する規則(昭和三十二年総理府令第八十四号)第三条の三第二項第十二号に、車両による運搬に関しては核燃料物質等車両運搬規則(昭和五十三年運輸省令第七十二号)第十七条の二第六項に、受託貯蔵に関しては核燃料物質の受託貯蔵に関する規則(平成十二年総理府令第百二十五号)第三条第二項第十五号に、それぞれ規定されている。
 また、これらの府省令において規定されている特定核燃料物質の防護に関する秘密の具体的内容のうち御指摘の「九項目」に相当するものを各項目ごとに示すと、次のとおりである。
 設計基礎脅威 主務大臣が別に定める妨害破壊行為等の脅威に関する事項及び特定核燃料物質の防護のために必要な措置の評価に関する詳細な事項
 防護されなければならない個々のターゲット(標的となる核物質の所在情報等) 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和三十二年政令第三百二十四号)第二条第一号イ、ロ及びホに掲げる特定核燃料物質(取扱いが容易な形態のものに限る。)の貯蔵施設又は核燃料輸送物等のうち同号イ、ロ及びホに掲げる特定核燃料物質(照射されたものを含む。)が収納されたものに関する詳細な事項
 原子力施設の核物質防護計画 特定核燃料物質の防護のために必要な体制に関する詳細な事項
 核物質防護システムの設計の特徴を示す施設固有の図面、図表、見取図又は配置図 特定核燃料物質の防護のために必要な設備及び装置に関する詳細な事項
 侵入検知システム、警報システムの配線、緊急時の電源及び緊急警報等の場所を示す警報システムのレイアウトの詳細 特定核燃料物質の防護のために必要な設備及び装置に関する詳細な事項
 施設内及び施設外の防護用通信システムの詳細 特定核燃料物質の防護のために必要な連絡に関する詳細な事項
 警備員の行動 見張人による巡視及び監視に関する詳細な事項
 輸送情報 特定核燃料物質の工場若しくは事業所内若しくは原子力船等内の運搬又は核燃料輸送物等のうち防護対象特定核燃料物質が収納されているものの運搬に関する詳細な事項
 緊急時対応計画 緊急時対応計画に関する詳細な事項

二の1について

 お尋ねの経緯については、次のとおりである。
 平成二十三年八月二十六日、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員長(以下「委員長」という。)から経済産業省に対し、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故時運転操作手順書、特に非常用復水器及び格納容器スプレーの取扱いに関する部分を含むものの提出を求められ、同月三十日、原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)は東京電力に対し、当該手順書の提出を要請した。
 同年九月二日、東京電力から保安院に対し回答があり、経済産業省は同日に開催された衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会理事会(以下「理事会」という。)に当該回答を提出した。当該回答は、知的財産の保護や核物質防護の観点から開示することが適当でないと判断した部分を不開示とするものであった。
 理事会における協議の結果、同日、委員長から経済産業省に対し、福島第一原子力発電所第一号機の事故時運転操作手順書やシビアアクシデント発生時における手順書等の資料の提出を求められ、同月六日、保安院は東京電力に対し、当該資料の提出を要請した。
 同日、東京電力から保安院に対し回答があり、経済産業省は同月七日に開催された理事会に当該回答を提出した。当該回答は、知的財産の保護や核物質防護の観点から開示することが適当でないとの判断から当該資料を不開示とするものであった。
 理事会における協議の結果、同日、委員長から経済産業省に対し、当該資料の提出を改めて求められるとともに、秘密会による委員会の開会など、当該資料の詳細な内容を開示することが可能となる条件を提示することも求められた。また、福島第一原子力発電所の第一号機と同型機である日本原子力発電株式会社敦賀発電所一号機についても、事故時運転操作手順書やシビアアクシデント発生時における手順書等の提出を求められた。

二の2及び3について

 二の1についてで述べた保安院の東京電力に対する要請は、東京電力に任意の協力を求めたものであり、要請に対応して開示する資料の範囲については、東京電力において実用炉規則第十五条の二第二項第十五号の規定等を考慮して判断すべきものと考えている。

三について

 お尋ねの「統一的な基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、核物質及び核施設等の防護に関する情報のうち、特に防護の必要性の高い特定核燃料物質の防護に関する秘密については、一の4から6までについてで述べたそれぞれの府省令において、具体的な内容を統一的に規定するとともに、原子炉等規制法第六十八条の三第三項において、国の行政機関又は地方公共団体の職員及びこれらの職員であった者に秘密保持義務を課しているところである。