質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四五号

「歪められた日本版ストレステスト」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月三十日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   「歪められた日本版ストレステスト」に関する質問主意書

 本年七月十一日、枝野前内閣官房長官など三大臣名で、「我が国原子力発電所の安全性の確認について(ストレステストを参考にした安全評価の導入等)」が発表された。これによれば、「定期検査後の原子力発電所の再起動に関しては、(中略)疑問を呈する声も多く、国民・住民の方々に十分な理解が得られているとは言い難い状況にある」として、「国民・住民の方々の安心・信頼の確保のため、欧州諸国で導入されたストレステストを参考に、新たな手続き、ルールに基づく安全評価を実施する」としている。
 一方、欧州原子力安全規制グループ(ENSRG)が定めた欧州ストレステスト仕様書によれば、ストレステストは、「包括かつ透明性のあるリスクアセスメント」と同義とされ、仕様書全体の三分の一が、「ピアレビュープロセス」及び「透明性」の記述に割かれており、「十分な透明性だけではなく国民の参加の機会によって初めて欧州ストレステストが欧州市民に認知されうる(私訳)」と記述されている。
 しかしながら、「日本版ストレステスト」においては、七月十一日の三大臣公表資料及びこれを受けて七月二十二日に電気事業者宛てに指示された原子力安全・保安院長名の実施要綱には、一言も「ピアレビュー」及び「透明性」に関する記述がなく、「歪められた日本版ストレステスト」との批判の声が上がっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 「国民・住民の方々の安心・信頼の確保のため、欧州諸国で導入されたストレステストを参考に、(中略)安全評価を実施する」としておきながら、七月十一日の三大臣公表資料及びこれを受けて七月二十二日に電力事業者宛てに指示された原子力安全・保安院長名の実施要綱には、「ピアレビュー」及び「透明性」に関する記述が一言もないのは何故か。「日本版ストレステスト」においては、「透明性」及び「ピアレビュー」は重要ではないのか。「歪められた日本版ストレステスト」との批判があることを踏まえ、政府の見解を明らかにされたい。

二 欧州ストレステスト仕様書によれば、許可事業者及び各国から中間報告書がそれぞれ、八月十五日及び九月十五日までに提出され、各国法律及び国際的責任に基づき公表されることとなっているが、その提出及び公表状況について政府として把握しているか。把握しているのであれば、何か国及び何許可事業者から提出されているのか。各中間報告書のページ数と併せて明らかにされたい。また、セキュリティなどの理由により公表されていない部分があることを政府として把握しているのであれば、その状況を明らかにされたい。

三 欧州ストレステストにおいては、各国の最終報告書についてはピアレビューのプロセスを経ることが義務付けられている。欧州ストレステスト仕様書によれば、ピアレビューを行うチームは七名からなり、一名の議長、一名の進行役、二名の常任委員、欧州委員会からも参加し、また、第三国からの参加も可能となっている。ただし、各委員の出身国の評価は行えない、最終報告が本年十二月三十一日までに提出された後、ピアレビューは来年四月末までに終えなければならない、ピアレビュー結果は公表されるなど、その詳細な進め方が規定されている。「日本版ストレステスト」の信頼性を高めていくためにも、我が国からの「第三国参加」を申し出るべきと考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。

四 「日本版ストレステスト」における第一次評価及び第二次評価それぞれについて、電気事業者からの報告書提出、原子力安全・保安院の評価の期限、原子力安全委員会の確認の期限を具体的に明らかにされたい。欧州ストレステストのように具体的に明らかにできないのであれば、その理由を明らかにされたい。

五 「日本版ストレステスト」における第一次評価及び第二次評価それぞれの電気事業者からの報告書、原子力安全・保安院の評価書、原子力安全委員会の確認書はすべて公開されるのか。その全部又は一部が公開されないのであれば、その理由を明らかにされたい。また、「国民・住民の方々の安心・信頼の確保のため」というのであれば、そもそも、原子力安全・保安院の評価、原子力安全委員会の確認自体を各発電所の地元で公開の下で行うことを野田内閣として考えていないのか、その見解を明らかにされたい。

六 九月五日、鉢呂前経済産業大臣が、朝日新聞などのインタビューに応じ、IAEAに日本版ストレステストの再評価を仰ぐ旨の発言をし、九月十九日、IAEAの天野事務局長が「日本のストレステスト実施後の結果を審査してほしいという要請があれば、喜んで実施する」と発言したと報道されているが、日本としてIAEAに再評価又は審査を依頼するのか。依頼するとした場合、原子力安全委員会の行う確認との関係はどのように考えているのか。具体的スケジュールとともに、政府の見解を明らかにされたい。

七 IAEAに「日本版ストレステスト」の審査、再評価、確認などを依頼するのであれば、各電気事業者の報告書を翻訳することとなるため、むしろ、欧州委員会及び欧州原子力安全規制グループに対し、「日本版ストレステスト」の結果について、ピアレビューの要請を行うべきと考えるが、国連会合で「原発の安全性を世界最高水準に高める」と宣言した野田内閣の見解を明らかにされたい。

八 「本家」欧州のストレステストにおいて、「透明性」及び「ピアレビュー」は枢要な要素であり、最初の段階からその仕様書に、スケジュール、手順、構成などが明確にされているのに対し、「日本版ストレステスト」においては、実施を発表した段階では全く不明確で、「泥縄的」に検討されている感が否めない。このような進め方では、「国民・住民の方々に十分な理解が得られているとは言い難い状況」を到底改善できるとは考えられないが、国連会合で「原発の安全性を世界最高水準に高める」と宣言した野田内閣として、今後、どのように改善するのか、具体的に明らかにされたい。

  右質問する。