質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四三号

心ない原子力発電所事故賠償請求手続きに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月三十日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   心ない原子力発電所事故賠償請求手続きに関する質問主意書

 東京電力は本年九月十二日から、福島第一原子力発電所事故の被害者約六万世帯に対し、個人向けの本賠償の受付を始めた。しかし、賠償金の請求書類はA4サイズで六十ページ、請求案内書は百五十六ページ、その他を含め十種類もの書類を作成する請求手続きに対し、書類を受け取った被災者からは、手続きが煩雑で分かりにくい、不親切などの不満の声があがっている。
 また、九月二十一日からは、法人及び個人の事業損害に係る賠償手続きも開始されたが、同様に分かりにくいというだけではなく、その賠償額の算定の仕方があまりにも東京電力による一方的なものとの不満の声があがっている。
 このような状況に対し、井戸川双葉町長は、東京電力が福島県内で行っている説明会について、「対応が不親切」として中断を要求した。
 一方、平野東日本大震災復興対策担当大臣は、「できるだけ改善するのも国の責務だ」と述べたとの報道もなされているが、このような東京電力による心ない原子力発電所事故賠償請求手続きに対し、多くの国民は、政府の指導性を含め疑問を抱いている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 枝野経済産業大臣が、本件に関し、「分厚い書類でひんしゅくを買っている。あ然としているので厳しく指導したい」と発言したとの報道があるが、そもそも、これらの「分厚い書類」の作成に関し、事前に経済産業省には何の相談もなかったのか、事実関係如何。このような発言には、混乱を極める原子力発電所事故を当初から担当し、現在では東京電力を指導すべき大臣であるという当事者としての責任と反省が全く感じられず、むしろ、その発言に国民は「あ然」としているが、このような心ない対応をとる東京電力に対する政府の指導について野田政権としてどのような反省をしているのか、明らかにされたい。

二 請求案内書百四十七ページ掲載の合意書にある「なお、上記金額の受領以降は、上記算定明細書記載の各金額及び本合意書記載の各金額について、一切の異議・追加の請求を申し立てることはありません」という表現は、事前に東京電力から政府に相談があったのか。相談があった場合には、政府側の誰がこのような表現で良いとしたのか、その職名を明らかにされたい。また、今後、政府として、どのような表現に改訂するよう指導するのか。既に手続きが進んでいることを踏まえ、その表現を具体的に明らかにされたい。

三 九月二十二日の公明党・東京電力福島第一原子力発電所災害対策本部の会合において、次のとおり改善意見が出されている。これらの事項について、野田政権としていつまでにどのように改善するのか、それぞれ、具体的に明らかにされたい。

1 東京電力による説明会や問い合わせ窓口では、被災者はもはや不信を募らせている。むしろ、政府自らが、行政書士、社会保険労務士、税理士、司法書士などの専門家を活用して、被災者に寄り添う形での賠償請求サポート体制を早急に構築すべきである。
2 三か月ごとの請求・支払いでは、毎月の生活に支障をきたす。毎月の請求・支払いあるいは前払いを行うべきである。
3 観光業の風評被害については、六か月後の時点でその二十パーセントが原子力発電所事故以外の要因による減収と推定していることに多くの事業者が困惑している。その数値の根拠につき、出典、定義、原データ及びそれらによる計算式を明らかにされたい。また、三か月後には当該推定値に対する実績値が明らかになることに鑑み、三か月後において原子力発電所以外の要因が二十パーセントを下回るとの実績値が判明した場合には、その差分について各事業者に追加賠償を行うことを政府として東京電力に指導すべきである。
4 サービス業については、原子力発電所以外の要因による減収が三パーセントとしているが、その数値の根拠につき、出典、定義、原データ及びそれらによる計算式を明らかにされたい。また、三か月後には当該推定値に対する実績値が明らかになることに鑑み、三か月後において原子力発電所以外の要因が三パーセントを下回るとの実績値が判明した場合には、その差分について各事業者に追加賠償をすることを政府として東京電力を指導すべきである。

四 原子力損害賠償支援機構法第五十一条において、「機構は原子力事業者に対する資金援助を行った場合には、当該原子力損害を受けた者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うものとする。この場合において、機構は、当該業務を第三者に委託することができる」とあるが、当該資金援助はいつ行われるのか。原子力損害賠償支援機構が東京電力に資金援助を行うのは明白であるから、当該資金援助決定の前に、相談・情報提供・助言体制を立ち上げるべきではないか、野田政権の見解を明らかにされたい。

五 政府は、九月十六日、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律(以下「仮払法」という。)施行令を公布した。当該施行令公布の前に実施したパブリックコメントとして何件の意見提出があったか。主な意見と政府の対応を明らかにされたい。
 また、当該施行令によれば観光業の風評被害が対象となっているが、九月二十二日の公明党・東京電力福島第一原子力発電所災害対策本部の会合において、次のとおり改善意見が出されている。これらの事項について、野田政権としていつまでにどのように改善するのか、それぞれ、具体的に明らかにされたい。
1 観光業の風評被害については、六か月後の時点でその二十パーセントが原子力発電所以外の要因による減収と推定していることに多くの事業者が困惑している。仮払比率二分の一を乗じるのであれば、当該二十パーセントの減額を行うべきではないと、本議員立法の発議者の一人として強く申し入れる。
2 今般の心ない東京電力の賠償請求手続きを背景として、多くの被災者が賠償額を含め本賠償について「合意」をすることを拒否することも想定され、そのような場合においては、政府による仮払いの対象を早急に広げて欲しいとの声がある。このような声を踏まえ、政府としては東京電力による本賠償の進捗を注視し、仮払法第四条第二項に規定されているよう、「早期の救済」に資するよう、追加の政令の制定を逐次行うべきである。
3 当該施行令の対象事業として、当該施行令第一条第六号に、「前各号に掲げるもののほか、平成二十三年原子力事故による取引の数量の減少等により当該事業を行う事業者に相当程度の収益の減少が生じていると認められる事業として主務省令で定める事業」が規定されており、かつ、地元被災地からは、理美容業、ゲームセンターなど多様な事業において「相当程度の収益の減少」が生じているとの声があることを踏まえ、早急に地元商工会、各種団体から当該主務省令の制定要望についての調査を行い、逐次制定を行うべきである。

  右質問する。