質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三三号

安定ヨウ素剤をめぐる政府の混乱に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月二十九日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   安定ヨウ素剤をめぐる政府の混乱に関する質問主意書

 今般の東京電力福島第一原子力発電所事故に際し、子どもたちの内部被曝を予防するための安定ヨウ素剤についての政府の配布・服用指示に混乱があり、全く役に立たなかったとの指摘がなされており、多くの国民は疑念を抱いている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 九月十五日付け福島民友新聞によれば、地元市町村の安定ヨウ素剤の配布状況は次のとおり報道されている。

 イ 富岡町は、三月十二日、主に四十歳以下の町民に配布。
 ロ 双葉町は、三月十二日、町内避難所の子どもに配布。
 ハ 南相馬市は、三月十二日、十キロ圏内で管理していた安定ヨウ素剤の配布を決定。しかし、行政区単位で袋詰めしている最中に避難区域が二十キロ圏内に拡大し、配布を断念。
 ニ 楢葉町は、三月十五日、いわき市の避難所にいた四十歳以下に配布。
 ホ 三春町は、三月十五日、四十歳未満に配布、既に安定ヨウ素剤を所持していた浜通りからの避難者を含め、服用を呼びかけた。
 ヘ 大熊町は、避難所単位に安定ヨウ素剤を配備したが、国からの指示がなく配布しなかった。
 ト いわき市は、三月十八日に四十歳未満と妊婦に配布。しかし、市から指示があった時以外は絶対に服用しないように呼びかけ、服用指示は出さなかった。
 チ 浪江町は、「県から配布しなくてよい指示があった」として配布しなかった。
 リ 広野町は、「どこからも指示はなかった」として、配布しなかった。
 ヌ 川内町は、県から新品を取り寄せたが配布はしていない。
 このような報道に対し、政府として把握している事実関係如何。政府が把握している範囲で、福島県下全市町村別に配布時点・配布者数、服用時点・服用者数を含め、事実関係を明らかにされたい。

二 前記一の新聞に掲載された、原子力安全委員会助言メンバーの鈴木元氏(急性被曝医療)の証言によれば、原子力安全委員会は、三月十二日の一号機のベント開放・水素爆発と半径二十キロ圏の避難指示を受け、三月十三日午前〇時十四分、原子力安全・保安院に安定ヨウ素剤の投与を助言したが政府は何も対応しなかった。再度、同日午前十時三十分に同様の助言が行われたが、やはり、政府は何の指示も出さず、結果として、政府が投与を指示したのは三月十六日午前十時三十五分という、多量の放射性物質が広範囲に排出される二号機での圧力調整室爆発(同日午前六時十五分)以降であり、かつ、二十キロ圏内に残った人が対象であったため、避難所の県民への投与指示はなかったとのことであるが、事実関係如何。三月十三日の二度にわたる原子力安全委員会からの助言を政府は結果として無視をしたのであれば、それは何故か。県民の納得がいく形で、明確にその理由を明らかにされたい。

三 放射性物質の拡散状況が明確となった現時点において、本来、安定ヨウ素剤の配布・服用指示はどの時点で行うべきであったと考えているのか、野田内閣の見解を明らかにされたい。

四 今回の安定ヨウ素剤の配布・服用指示の混乱の背景として、各種の緊急被曝医療マニュアルに基づき、甲状腺被曝が百ミリシーベルトを超える予測がつけば投与することは広く知られているが、それが体表面汚染に換算すると一万cpmになるという情報が周知されていなかったという指摘は事実か。

五 八月二十八日付けの朝日新聞によれば、「三月十七日、十八日に福島県で実施された住民の外部被曝検査の数値から内部被曝による影響を計算すると少なくとも四割が安定ヨウ素剤を飲む基準を超えていた」とあるが、事実関係如何。また、福島県災害対策本部が実施した「緊急被曝スクリーニング」の記録によると、三月十四日時点で三千三十八人を検査したところ二人が十万cpmを超えていたと報道されていたが、体表面汚染が一万cpmを超えていた人は、今までに何人いたと政府は把握しているのか。

六 三月二十五日付け毎日新聞によれば、国の原子力災害対策本部は三月二十一日夜、安定ヨウ素剤を個人の判断で服用しないよう呼びかける指示文書を公表したとあるが、事実関係如何。事実とすれば、その理由を明らかにされたい。

七 政府が三月二十四日から三十日に、〇歳から十五歳の子ども千八十人を対象に実施した甲状腺の放射線ヨウ素測定では、毎時〇・二マイクロシーベルトを超えた子どもがいなかったため、「健康に問題はない」としているが、半減期が約八日のヨウ素131だけでなく、同約二時間と短いヨウ素132や、約三日でヨウ素132に変わるテルル132の影響は政府としてどのように評価しているのか。これらの影響を踏まえた場合、目安とされた毎時〇・二マイクロシーベルトは、子どもたちの累積甲状腺被曝量に換算してどの程度と推定しているのか。また、理化学研究所が三月十六日に三〇キロ圏外の大気を分析した結果、放射性物質の七割以上がこれら半減期の短い物質であったとの報道(前記五の新聞)があるが、その事実関係如何。事実であれば、三十キロ圏外のどの地点でのデータなのか、その他の測定データを含め明らかにされたい。

八 全国の原子力発電所立地自治体などに備蓄してある安定ヨウ素剤の量及びその年間経費を各発電所別に明らかにされたい。

九 今般の事故に際しての安定ヨウ素剤の配布・服用指示に関する混乱を踏まえ、政府として、どのような反省をし、どのような改善を行ったのか。また、原子力発電所立地自治体にどのような周知を行ったのか。いまだ行っていないのであれば、それは何故か。具体的に明らかにされたい。

  右質問する。