質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三〇号

北富士演習場での日米共同訓練に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月二十九日

田村 智子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   北富士演習場での日米共同訓練に関する質問主意書

 防衛省は八月二十六日、山梨県に日米共同訓練を実施する旨の申入れを行った。それに基づき、九月十三日、北富士演習場、北富士駐屯地、梨ケ原廠舎を使い、十月十一日より十日間、米陸軍テキサス州兵、二百十五名と自衛隊第一師団歩兵連隊三百名で訓練すると山梨県に報告してきた。北富士での共同訓練は、一九八五年、一九九三年以来の三度目である。今回の訓練を行う米陸軍テキサス州兵は、二〇〇九年十二月から二〇一〇年八月までの九か月間、イラク侵略戦争に派遣され、二〇〇五年から二〇〇六年には、アフガンの戦闘作戦にも参加している部隊である。こうした戦闘に実際に関わった部隊と自衛隊との共同訓練は、文字どおりの日米軍事一体化の促進であり許されない。
 以上の立場から以下質問する。

一 今回の訓練は、六月に行われた日米安全保障協議会(2プラス2)での沖縄・米軍基地の強化、日米軍事同盟の強化・拡大などの合意の下で行われるものである。同協議会での共同発表では、二〇〇五年、二〇〇七年の日米の「共通戦略目標」が再確認され、その目標を達成するために日米の防衛協力計画を強化するとして、①自衛隊と米軍の共同訓練、②基地の共同使用、③情報の共有、④共同の情報収集・警戒監視・偵察活動の拡大等を打ち出すなど、日米の軍事一体化を一層進めるものとなっている。今回の日米共同訓練は「共通戦略目標」の実現のために具体化されるものではないのか。今回の日米共同訓練の目的及び演習のシナリオとともに、政府の見解を明らかにされたい。

二 二〇〇八年三月二十七日に山梨県知事等と防衛庁(当時)との間で締結された第八次北富士演習場使用協定(以下「北富士演習場使用協定」という。)では、その第二条で、北富士演習場で演習できる米軍は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条」の軍隊と規定している。すなわち「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和および安全の維持に寄与する」軍隊である。今回の共同訓練に参加する米陸軍州兵は、元々米国内における災害救助や治安維持を任務とし、今回の共同訓練に参加する米陸軍テキサス州兵第三-一四一歩兵大隊は二〇〇九年に米軍のイラク侵略に派遣されるなど、日本防衛とは関わりのない部隊であり、北富士演習場使用協定に定める軍隊ではないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 今回の日米共同訓練では、北富士演習場に加えて一九九八年に忍野村内の自衛隊北富士駐屯地に創設されたFTC(富士トレーニングセンター)を使用して行うこととなっているが、北富士演習場使用協定には北富士駐屯地を米軍が使用できる旨の規定はない。今回、北富士演習場以外の北富士駐屯地を使おうとしているのは、北富士演習場使用協定に違反するのではないか。違反ではないと言うならば、その根拠も明らかにされたい。

四 そもそも、日本の防衛と関係のない日米共同軍事訓練に財政支出をすることは許されない。まして現在の我が国は、東日本大震災からの復旧・復興、東京電力福島第一原子力発電所事故の一刻も早い収束が求められており、そのために、多額の財源確保のため増税が議論されている中で、このような支出はなおさら認められない。今回の日米共同軍事訓練の実施のために予定されている経費の額と併せて、政府の見解を明らかにされたい。

五 現在、山梨県は、富士山の世界遺産文化遺産への登録を進めている。国際自然保護連合文化的景観検討責任者が、富士演習場が世界遺産登録の障害になっていると指摘しており、登録事業にとっても日米共同訓練は大きな障害であると考える。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。