質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二八号

PCB廃棄物処理の促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月二十九日

秋野 公造   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   PCB廃棄物処理の促進に関する質問主意書

 PCB(Poly Chlorinated Biphenyl)は、ポリ塩化ビフェニル化合物の総称であり、絶縁性、不燃性などに優れた特性を有することから、トランス、コンデンサといった電気機器を始め幅広い用途に使用されてきた。しかしながら、昭和四十三年にカネミ油症事件(米ぬか油中に、製造工程で用いられたPCBが混入していたことが原因となった大規模な食中毒)が発生し、その毒性が明らかになり、社会問題化した。特にコプラナーPCBと呼ばれるものは毒性が極めて強く、ダイオキシン類として総称されるものの一つとされている。
 その後、PCBは昭和四十七年に製造が中止されたものの、PCB廃棄物の処理施設の整備は困難であったことから、三十年以上の長きにわたってPCB入りトランス等が事業者により保管され続ける結果となった。しかしながら、このままでは紛失等による環境汚染が懸念されること、国際的にもPCBの早期処理が求められていること、より安全な化学処理方法が確立したことなどから、平成十三年に自公政権の下でPCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法が制定され、PCB廃棄物を所有する事業者は、平成二十八年七月までにPCB廃棄物を処分することが義務付けられることになった。
 PCB廃棄物は三十年以上にも及ぶ長期保管のため紛失や漏洩が発生しており、環境汚染の進行が懸念され、現在、国の監督と地方公共団体の協力の下、日本環境安全事業株式会社法に基づいた特殊会社を活用した拠点的広域処理施設により、保管事業者から委託を受けて処理業務を実施している。
 PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法制定から十年が経過しているが、地域的に進捗にばらつきがあるものの全体として現状の処理体制では、平成二十八年七月までにPCB廃棄物の処分が終了しないと予想されることから、国は確実かつ適正な処理の体制整備に更に取り組むべきである。建設的な提案の視点から、以下質問する。

一 PCB廃棄物の処理で北九州事業所の処理進捗率が、平成二十三年三月時点でトランス類で四十九・一パーセント、コンデンサ類で三十六・五パーセント、国全体ではトランス類が三十六・一パーセント、コンデンサ類が二十九・三パーセントとなっている。このままのペースでは北九州事業所及び国全体の処理は終わらないと懸念するが、政府の見解を示されたい。また、その遅れている理由について、政府の見解を示されたい。

二 北九州市が必ずしも招致したわけではないこの事業の延長を前提とするのは適切でない状況の下、環境省(国)は岡山以西の県に対して、早急にPCB廃棄物を、北九州市の施設に送るよう働きかける必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法附則第二条において、同法の施行後十年が経過した場合において、施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされているが、今後の取組について、政府の見解を示されたい。

三 中小事業者の高圧トランス・コンデンサの処理費用は、PCB廃棄物処理基金から補助金の対象となっているが、現下の経済情勢を踏まえると、資金繰りに苦しんでいる中小・小企業はPCB廃棄物を処理できない可能性が高いと考えられる。現状においても、遅れている中小・小企業の処理を今後一層促進する必要があるが、その方策について政府の取組を示されたい。

四 PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法に基づいて、PCB廃棄物の保管者は都道府県知事への届出が義務付けられている。届出調査を行ったところでは、無届けの者が見受けられているとのことであるが、現状を示されたい。また、処理すべき量を的確に把握するために、無届けのPCB廃棄物の調査が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

五 東京、豊田、大阪事業所の事業区域にある安定器等については、PCB廃棄物処理基本計画で処理方法が定められていない。今後どのように処理する予定か、政府の見解を示されたい。

六 PCB廃棄物処理の実施に当たっては、地方公共団体の協力が不可欠である。今後、適切・確実な処理を推進するために、地域住民及び地方公共団体の円滑な連携を可能とする取組が必要と考えるが、地方公共団体に対してどのように働きかけていくのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。