質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二四号

原子力安全規制に関する組織の拙速な見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月二十八日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   原子力安全規制に関する組織の拙速な見直しに関する質問主意書

 民主党政権は八月十二日に「原子力安全規制に関する組織の見直しについて」という関係閣僚了解を唐突に行った。その後、八月十五日に「原子力安全規制に関する組織等の改革の基本方針」を閣議決定し、環境省にその外局として原子力安全庁(仮称)を設置することとして、そのための法案の立案等の準備を、「平成二十四年四月の設置を目指して作業を行う」とした。
 一方、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(以下「畑村委員会」という。)が設置されており、事故原因やこれまでの安全規制の問題点を踏まえた関係行政組織のあり方が検討されることとなっている。しかし、畑村委員会には、いまだに「法規制のあり方の検討チーム」自体が設置されておらず、かつ、その中間とりまとめは「平成二十三年内」、最終報告は「事故収束後一定期間後をめど」とされている。
 また、原子力委員会においても、本年七月から元原子力安全委員長や元原子力安全・保安院長などから原子力安全規制のあり方について延べ五回にわたるヒアリングが行われ、九月二十七日からおよそ一年をかけて、新たな原子力安全規制体系のあり方を含めた新原子力政策大綱をとりまとめることとしている。
 このように、いまだ、畑村委員会及び原子力委員会における事故原因究明、今後の我が国の原子力政策の方向性、更には必要となる原子力安全規制のあり方自体などの十分な検討及び国民への説明がなされていない状況において、その組織の議論だけが先行して進んでいることに多くの国民は疑念を抱いている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 「平成二十四年四月の設置を目指して作業を行」っている原子力安全庁(仮称)の設置のための法案は、 平成二十三年秋の臨時国会又は平成二十四年通常国会のどちらに提出するのか。それとも、あくまで「二十四年四月の設置を目指して」いるだけで、今後の検討により、法案提出が遅れることもあると考えているのか。野田内閣の見解を明らかにされたい。

二 畑村委員会における「法規制のあり方の検討チーム」を、いつ設置するのか、その見通しを明らかにされたい。また、畑村委員会の最終報告は具体的にいつ頃となるのか。同検討チームにおける検討及び畑村委員会の最終報告を踏まえずに、原子力安全庁(仮称)の設置のための法案の立案等を作業することは拙速であると、野田内閣は考えないのか。野田内閣の見解を理由とともに明らかにされたい。

三 原子力委員会において本年七月から延べ五回にわたり行われた原子力安全規制に関するヒアリングにおいても、環境省にその外局として原子力安全庁(仮称)を設置する案については、有識者から、独立性等の観点から妥当ではないとの意見表明がなされていることを、野田内閣はどのように評価しているのか。民主党政策集インデックス二〇〇九においては、「安全チェック機能の強化のため、国家行政組織法第三条による独立性の高い原子力安全規制委員会を創設する」としていたのを、何故変更したのか。今後の検討の段階において、同案を撤回する可能性はあると考えているのか。それぞれについて、野田内閣の見解を理由とともに明らかにされたい。

四 原子力委員会における新原子力政策大綱の検討の過程で、今後の原子力政策のあり方、安全規制の重点化のあり方などが今後議論される。このような議論が十分に進んでいない状況で準備される原子力安全庁(仮称)の設置のための法案は、今回の原子力発電所事故発生前の原子力政策及び安全規制を前提として策定されるのか。他方、これらを前提としないのであれば、どのような原子力政策及び安全規制を前提とするのか、原子力発電所の今後の新増設の有無や、定期点検後の再稼働のための要件を含め、具体的に明らかにされたい。

五 このように、畑村委員会及び原子力委員会における検討結果が十分に反映できない状況で、原子力安全 規制に関する組織の検討を急ぐ理由は何か。むしろ、国民は、事故原因究明、今後の我が国の原子力政策の方向性、更には必要となる原子力安全規制のあり方自体などの十分な検討及び国民への説明を求めていると考えるが、これらを犠牲にして組織の検討を急ぐ理由を明らかにされたい。

  右質問する。