質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

漁業経営の安定化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月十五日

秋 野 公 造   


       参議院議長 西 岡 武 夫 殿



   漁業経営の安定化に関する質問主意書

 我が国の一人当たりの魚介類供給量は、人口百万人以上の国の中で世界一位であり、魚食の安定供給が我が国の健康長寿を支えてきたと言っても過言ではない。平成二十一年の漁業就業者数は前年比四・六パーセント減の二十一万二千人となり、漁業就業者の高齢化も進行している。一方、厳しい雇用情勢や職業・ライフスタイルに対する考え方が多様化する中で、これまでの政策効果もあいまって新規就業者数は増加傾向にある。今こそ、国民への水産物の安定供給の確保と、これを支える力強い水産業及び豊かで活力ある漁村の確立を図ることが重要である。
 そのような状況の中、漁業用A重油の価格は、近年、国際的な需給環境に加え、投機資金などの影響により乱高下を繰り返しており、活力ある漁村の確立を阻害する要因になっている。そのため、平成二十年八月に史上最高額を記録した時に、当時の自公政権が漁業経営セーフティーネット構築事業を創設した。その後、原油価格はいったん下落したものの、平成二十三年に再度上昇局面にあり、予断を許さない状況にある。
 一方で、平成二十一年度の漁船漁業(十トン以上の動力漁船)を営む会社経営体の経営は、油費の減少により漁労支出は減少したものの、漁労売上高も大きく減少した結果、漁労利益の赤字幅が拡大し、経常利益は赤字に転落している。
 漁業者は原油価格の高騰等を水産物価格に転嫁することができない状況にある。漁業は、国民の健全な食生活を支える水産物を供給するとともに、環境・生態系を保全してきた役割にかんがみ、漁業不振に対する対策を強化すべきである。とりわけ、漁労支出に占める油費が約二割を占めており、そのうち沿岸いか釣り漁業では約三十八パーセントを占めるため、その経営に深刻な影響を受けているが、そうした中で軽油引取税の課税免除が漁業経営を大きく支えてきた。そのことを踏まえ、以下質問する。

一 漁業に使用する軽油引取税の免税について

1 これまで、軽油引取税は船舶の動力源等一定の用途に限り、課税免除がなされてきたが、道路特定財源の見直しに伴い、平成二十四年三月までの措置とされている。参議院農林水産委員会(平成二十三年七月二十六日)において、農林水産大臣は、平成二十四年度以降は、農林水産省としても漁船用軽油に係る軽油引取税の課税の免除措置を求めてまいりたい旨、答弁しているものの、恒久的な漁業支援の必要性はないとの判断がなされたのか、政府の見解を示されたい。
2 道路特定財源の見直しにより、予算を確保できないならば、組替えを行ってでも財源を確保するべきである。例えば、漁業が環境・生態系を保全してきた役割に着目し、その役割を強化するための予算の組替えを行うことで、漁業支援を従前どおり存続させるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 公約していたガソリン税の見直しもできなかったように、漁船に対する軽油引取税の課税免除も行わないのは漁業従事者に対して不誠実である。今後の漁業支援対策について、政府の見解を示されたい。

二 漁業経営セーフティーネット構築事業の強化について

1 漁業者は原油価格の高騰等を水産物価格に転嫁することができない。平成二十年には重油価格が高騰した結果、漁業者は一斉休業を余儀なくされた。そのため、当時の自公政権は漁業経営セーフティーネット構築事業を創設し、平成二十三年において、原油価格の値上分を補填することができた。漁業者と国の拠出により、原油価格が高騰したときに補填金を交付する「漁業経営セーフティーネット構築事業」への加入率は、平成二十三年六月末で約五十七パーセント(燃油)となっている。漁業経営の安定を図るために、同事業への加入促進と同事業の継続・強化が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。
2 国際原油価格の動向を踏まえると、直近二年間の原油価格の平均値が上昇し補填額の減少が見込まれることから、原油価格が高止まりした場合における漁業経営の安定を図るための新たなセーフティーネット対策が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。