質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

事業仕分けによる刑事施設における物品販売事業からの地元事業者の締め出しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月十四日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   事業仕分けによる刑事施設における物品販売事業からの地元事業者の締め出しに関する質問主意書

 平成二十二年五月二十五日に、内閣府の行政刷新会議において財団法人矯正協会に対するヒアリングが行われ、「物品取扱事業については、不正が生じるリスクがあるため、ディシプリンが働くメカニズムを導入すべき」との評価がなされた。
 法務省は、この結果を受けて、平成二十三年三月四日、三井物産と米国企業グループを主要株主とするエームサービス株式会社に、今後五年間にわたる物品販売事業を一括指定することを決定した。
 本決定に基づき、本年四月から全国八十二か所の刑事施設において、物品販売事業者が財団法人矯正協会からエームサービス株式会社への切替えが進む中、当該切替えにより、地元事業者の排除が進められている。
 従来、刑事施設は地元住民との良好な関係を形成するため、物品販売事業等において地元事業者を活用するなどの長年の工夫を行ってきたが、民主党政権による事業仕分けにより、このような良好な関係にも影響が及ぶこととなりつつある。
 特に、法務省の当該決定直後に起きた東日本大震災及び原子力発電所事故により苦難に直面している福島県においても、本年度中に、このような地元事業者の排除が進められることに、大きな困惑が広がっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 本年度から進められている刑事施設における物品取扱事業の一括指定に関し、財団法人矯正協会からエームサービス株式会社への切替えの進捗状況如何。八月までに何施設が切り替わったのか。その施設名をすべて明らかにされたい。また、当該切り替わった刑事施設のうち、地元物品販売・卸事業者等からの調達が打ち切られ、結果として地元事業者が排除されたのは何施設あるのか。

二 「物品取扱事業については、不正が生じるリスクがあるため、ディシプリンが働くメカニズムを導入すべき」という行政刷新会議の指摘は「地元事業者を排除すべき」という指摘なのか。どのような「不正」を回避しようとしたのか明確にされたい。

三 刑事施設が地元住民との良好な関係を形成するため、物品販売事業等において地元事業者を活用するなどの長年の工夫を行ってきたことは、「不正の温床」と考えているのか。野田政権の考え方を明らかにされたい。

四 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第五十一条には、「刑事施設の長は(中略)自弁物品等の購入について、刑事施設の管理運営上必要な制限をすることができる」とあるが、「刑事施設が地元住民との良好な関係を形成するため、物品販売事業等において地元事業者を活用するなどの長年の工夫」を行うことは、「刑事施設の管理運営上必要な制限」の範囲に全く含まれないと言えるのか。その法的根拠とともに明らかにされたい。

五 法務省とエームサービス株式会社との平成二十三年三月四日付け合意文書及び協定書には、「地元事業者の活用」についての条項は存在しないのか。存在しない場合、そのような規定を置かなかった法務省の判断の根拠は何か。「刑事施設が地元住民との良好な関係を形成するため、物品販売事業等において地元事業者を活用するなどの長年の工夫を行ってきたこと」について、法務省としてこれまで評価してこなかったのか、明らかにされたい。

六 前記五の合意文書及び協定書締結の後、東日本大震災及び原子力発電所事故が発生したことにかんがみ、少なくともこのような災害の影響を受ける地域の刑事施設においては地元事業者を当面引き続き活用するよう、政府はエームサービス株式会社と再協議を行うべきと考えるが、「福島の再生なくして日本の再生はない」と明言した野田政権の見解を明らかにされたい。

  右質問する。